筋トレについて、あまり書かれないこと
最近SNSを見ていると、唐突に筋トレの話題が流れてくることがあります。さらには「筋トレして体を変えたいが、どんなトレーニングをすればいいの?」というコメントを投稿している人もいたりします。
たいていの場合「十回くらい挙げられる重量を三セットくらいやる」「いやいや五回を五セットだ」「週に三回くらい通う」というようなコメントが返されたりしていますが……はっきり言うと、肝心なことについて誰も触れていないのですよね。
なので、今回はその「肝心なこと」を書こうと思います。
いきなり、何よりも大切なことを書かせていただきます。トレーニングは、続かないと意味がないのですよ。これが、何よりも大事です。
やれ「十回できる重量を三セット」だの「週三回、全身をやる」「いやいや分割法だ」などという細かい知識は、その後のことなんですよね。続かないのに、こんなことを学んでも何にもなりません。これは断言できます。
実際、筋トレを一年続けられるのは、三パーセントから四パーセントだとか。では、トレーニングを一年続けるためにどうすればいいか……これには、まず習慣化することが必要です。
ですので、トレーニングを始める前にまずすべきことがあります。それは、自身の生活を見直すことです。
自分が一週間、あるいは一ヶ月間、どのような生活をしているか……これを、まずは見直してください。
学業や仕事、食事の時間、遊ぶ時間、欠かせない予定、友人たちとの付き合い、趣味などなど……そうしたものを全て考慮した上で、自分の普段の生活の中でトレーニングに割ける曜日と時間を考えてみることです。それも、ここなら確実に行けるな、もしくはトレーニング出来るな……という日にちと時間ですね。
その上で「ここなら確実にトレーニングにあてられる」という時間帯を見つけたら……とにかく、週に一回でもいいから続けることです。続けていくうちに習慣化し、やがて週一回では物足りなくなってきます。その時、改めてメニューを見直してみるといいでしょう。
たいていの人は、トレーニングジムに通い出すと、自分の生活をジムに合わせようとしてしまうのですよね。これは、トレーニング好きな人でないと続かないと思われます。
なお「それまで運動をしていなかった人が、ちゃんと運動をしようとすると、初めのうちはそれだけで一日が終わってしまう日々が続く。それでも継続していると、ある日すべてをやり終えても一日が終わっていないことに気づく」という内容のポストも見ました。
私は、これを否定するつもりはありません。むしろ、これは正しいと思います。
まず「行きたくねえな」という気持ちとの戦いに始まり、準備に手間取り、帰って来てからは疲れてしまう……これで、一日が潰れてしまうことは、充分に考えられます。
ただし、ほとんどの人は「それだけで一日が終わってしまう日々が続く」と、その段階で嫌になってやめてしまうのですよね。休日がトレーニングしただけで終わってしまえば、それだけでものすごく損した気分にもなりますよね。
ですから、「それだけで一日が終わってしまう」ようなメニューにするのは、絶対にやめましょう。時間的にも体力的にも、まだ余裕が残っている……そのくらいのメニューで終わらせるべきなんですよね。
もし、トレーニングを始めてみて、それだけで一日が終わるようなら……次からは、内容をもっとコンパクトなものに変えてみてください。
もうひとつ大事なことがあります。
昨今は、情報に溢れています。が、上級者のいうことを鵜呑みにし、真似してはいけません。これは絶対です。
たまに私も見聞きするのですが、「ボディービルダーの横川がこんなトレーニングしてた」「ジュラシック木澤が、ユーチューブでこう言ってた」などなど……それを、初心者がそのまま真似するというのはあまりにも危険です。絶対に、してはいけません。
そもそも、彼らは我々のような一般人とは異なる人種です。まず、才能からして別次元なんですよ。食べている量からして違いますし、キャリアもまるで違います。そもそも、我々のように他の仕事をしているわけではありません。横川さんなどは「筋肉をつけたければ、仕事やめろ」などというトンデモ迷言を残しているような人です。
そんな化け物レベルの人たちのトレーニング理論を素人が真似したところで、百害あって一利……あるかないかです。まあ、真似して効果があった人もいるでしょうが、それはごく一部の選ばれし人です。初心者は、あくまで初心者向きのトレーニングをしてください。
そういえば、野球選手のイチローがウエイトトレーニングを否定していたそうですが……それを聞いて、ウエイトトレーニングをやめた野球選手はほとんどいなかったそうです。
イチローのウエイトトレーニング不要論をありがたがり、錦の御旗のごとく振りかざしていたのは……実は野球選手でも何でもない筋トレ嫌いのおっさんたちが大半だったとか。「イチローはこう言ってる、だから俺はウエイトトレーニングをしないんだ」という言い訳のセリフとして用いられていたという話も聞きます。しょせん、そんなものですね。
とにかく、イチローのような特殊な天才のやり方や理論をそのまま真似たところで、万人に全て効果があるわけではないという真実を、野球選手たちはみな理解していたのですよね。
ちなみに、超人的いや超神的と言っていいかもしれないレベルの天才である大谷翔平は、ちゃんとウエイトトレーニングをやっています。
蛇足ですが、創作界隈では漫画家の高橋留美子先生の「自分が体験していないことを描けないのは、才能がないだけだ」という言葉を錦の御旗のように振りかざす人が少なからずいますが……これも、初心者が鵜呑みにしていいものではないような気はしますね。あくまで個人の感想ですが……。
まあ、これも好き好きです。自分が高橋留美子先生と同レベルの才能があると確信している天才なら、鵜呑みにするのもいいでしょう。
ただ個人的には、イチローのウエイトトレーニング不要論と似た匂いを感じますね。体験するのが嫌いなタイプの人が……いや、これ以上はやめておきましょう。
もうひとつおまけですが、同じく漫画家のちばてつや先生は『あしたのジョー』の連載を始める時に、実在していたドヤ街(日本のスラム)にホームレスの格好をして潜入したそうです。
しかし、宿屋では一目で外部の人間だと見抜かれ、宿泊を拒絶されました。挙げ句に潜入してきた刑事かと疑われたのか、街を仕切るヤバい人たちに追い返されたそうです。
ちばてつや先生は、『クレイジージャーニー』のような表面的な取材ではなく、実際にドヤ街に入り込み本物の住人の生活を体験してみたかったのでしょうね。これもまた、凄いプロ意識だと思います。




