組み技系に有りがちかもしれない話
数年前のことですが、ちょっとしたトラブルがありました。
ちょうど年末で、仕事がものすごく忙しかった時期のことです。行った先で、他の業者とトラブルになりました。まあ些細なことなのですが、相手方のひとりが、やたらと好戦的な態度で引く気配がありません。こちらも仕事が出来ないので、引くわけにもいかなかったのです。
そのうち、親父ヤンキーみたいな感じの男(確実に四十を過ぎているオッサンです)が私の襟首を掴んで来ました。そして、力任せに壁に押し付けようとしました……少なくとも、そんな風に力を入れているのだろうなと感じました。
ところが、私は日頃からグラップリングでレスリング系のスパーリングをやっており、組んでの押し合いには慣れていました。また、バーベルを担いでのスクワットもやっています。そのため、親父ヤンキーの腕力では動かないのですよね。そのまま、普通に立っていました。実際、体に感じた圧力はさほどでもなかったですね。
すると、相手の顔つきが変わります。彼の目論みでは、襟首を掴んで壁に押し付け、でかい声で怒鳴り威嚇すれば、こちらがビビって引くと思っていたのでしょう。ところが、私は全く動く気配がありません。計算が狂い「どうしよう」という表情へと変化していたのですよね。はっきり言うと、怯えていました。掴んでいる手にも、力が入っていなかったですね。
私の方は、ほっといても何もされそうになかったので、普通に突っ立っていました。
その時、ようやく周囲にいる人が止めに入り何事もなく済みました。さらに、上の人も出てきたので一部始終を話すと「帰ってくれ。もう、あんただけはよこさないよう会社に言っておく」みたいなことを親父ヤンキーに言い渡していました。
親父ヤンキーはというと、顔を引き攣らせながらも、イキッた態度でひとり帰って行きました。昭和の時代なら「まあまあ、揉めないで仕事してよ」で終わりだったのかもしれませんが、昨今は事故や暴力沙汰にうるさくなっています。逆に、私も手を出していたら同じことになっていたでしょう。
この話、もっと早く書きたかったのですが……仕事が片付いたと思ったら、胃炎になりダウンしました。ようやく治り、なろうにログインしたと思ったら……全く交流のない名前も知らん人から「いきなりてすが無職なんですか?」「あなたは合格です。静岡で合気を習ってください」「質問です。ボクサーが素手で素人を殴ったらどうなりますか?」という、感想のふりをした怪文書が立て続けに来る(全部同じ人)というトラブルが起きたため、すっかり忘れていたのです。
余談ですが、こういう怪文書のごとき感想を送りつけて来るような人に目を付けられた場合、速やかにブロックすることをオススメします。半端に相手にすると、仲良くなったと勘違いされます。無視すると「俺の言うことが正しいから、何も言い返さないんだろ」などと言ってきたりします。なので、気づいたらブロックが賢明かと思います。
話を戻します。親父ヤンキーに絡まれた私の体験ですが、実は柔道やレスリング経験者なら似たような経験があるのではないでしょうか。
ヤンキーやチンピラの大半が、揉め事が起こるとまず襟首を掴んで来ます。パターンとしては、そこからブンブン揺さぶり、壁に押し付け大声で脅し相手をビビらせる……というのが彼らのセオリーです。襟首を掴まず、いきなり殴りかかって来るケースは少ないですね。
ところが、柔道やレスリング経験者は組んでの押し合いに慣れています。また、フィジカルトレーニングで体幹や下半身もきっちり鍛えています。
なので、ヤンキーに襟首を捕まれたくらいでは動かないのですよね{体格差かあれば別です}。むしろヤンキーの側が、相手が動かないことによってビビり、引いてくれるケースが少なからずあったりします。これも、一種の護身術かもしれないですね。
なお柔道やブラジリアン柔術の技の中には、相手の両襟を掴んで絞め落とすものがあります。立った状態でかけることも可能です。俳優の故・若山富三郎は柔道四段で、若いヤンチャな俳優の襟首を掴み絞め落としたことがあったとか。また、とある総合格闘家はチンピラに襟首を掴まれたため、ぱっとフロントチョークかけて絞め落としたことがあったそうです。
しかし、こういうことをしてしまうと後々面倒なことになります。なので、襟首を掴まれたら逆に密着しベアハッグしてしまうのもひとつの手です。相手に逆らわず、両手を相手の背中に巻き付け密着し、相手の左耳に自分の左耳をくっつける体勢になる……抱き合う恋人たちのような光景ですが、この体勢になってしまうと相手は何も出来ません。こっちも何も出来ないので、相手の怒りが収まるまで待つくらいしか出来ませんが。
ちなみにこの技、『少年アシベ』という漫画では「博愛固め」と名付けられていました。




