時おり目にする誤解
今回は、時おり目につく勘違いについて書きます。まあ、格闘技経験のない人が勘違いされているのが大半なのですが、たまに一般紙でも堂々と間違いが掲載されていることがありますので。
ボクシングやキックボクシングには、ミット打ちという練習があります。トレーナーが両手に構えたミットに、指示されたパンチを打ち込む練習です。これは、打撃系では重要な練習です。特に顔面パンチありの競技では、これ無しというのは考えられないですね。
ところが、たまにこのミット打ちを「スパーリング」と書いている人がいたりします。とあるラノベには、ミット打ちのイラストが描かれている横で「スパーリングを終えた後~」などと書かれていました。前後の文章などから判断するに、スパーリングは確実にしていないのですよ。調べれば、すぐにわかることなんですが……。
もっとも、単なる書き間違えかもしれません。作者さんはミット打ちと書くつもりで、スパーリングと書いてしまった可能性もあります。私も、似たような書き間違えをちょくちょくやらかします。そうなると、校正を担当した人間のミスということになりますね。私は出版業界の事情には疎いので、よくわかりませんが。
実は、一般誌にも同じミスがたまに見られるんですよね。たまにミット打ちをしている写真の横に「スパーリングをこなす〇〇選手」などと書かれていたりすることがあります。こういうのを見ると「おいおい」と思ってしまいますね。一般誌ならば、ちゃんとした知識のあるライターさんを起用してもらいたいものです。それとも、単なる書き間違えなのか……ただ、単なる書き間違えしては多い気はします。
あと、スパーリングに関して言うと……たまにスパーリングを「練習試合」などと言う人がいます。ガチで格闘技やってる人間の感覚からすると、これは明らかに別物なんですよ。スパーリングは、シャドーやサンドバッグやミット打ちといったものの延長線上に位置しているのに対し、練習試合はあくまで試合なんですよね。やっている人にしかわからない感覚かもしれませんが、このふたつは明らかに別物なんですよ。
学生時代に柔道をやっていた人なら、このふたつの違いをわかっていただけるでしょう。スパーリングは乱取り稽古です。乱取りイコール練習試合、とはならないですよね。まあ、やってる人にしかわからない感覚的なものかもしれないですが、たまにスパーリング(練習試合)などと書かれると、「おいおい、それは違うだろ」と言いたくなります。
これは勘違いというより偏見ですが、以前「プロテインを飲み続けた中国人、男性ホルモンの過剰摂取で胸が女性化」という記事を目にしました。さらに、便乗するかのように「プロテインは飲み方誤ると、男子でも胸に脂肪ついて女性化するとか聞いたことある」「プロテインを摂取すると、ドーピングに引っかかると聞く」というような間違った意見も目にしました。
念のため書きますが、プロテインとはタンパク質のことです。市販されているプロテインというサプリメントは、食物に含まれるタンパク質を抽出したものです。飲んだところで、胸が女性化することは有り得ないです。胸が女性化するのは、アナボリックステロイドの副作用に見られる現象です。アナボリックステロイドとプロテインは、全く別物なんですよ。
件の中国人は、恐らくアナボリックステロイドを服用していたのでしょう。あるいは、プロテインに何かおかしな薬物が混ざっていたか……それを「プロテインの飲みすぎで乳房が女性化した」と、ほとんど調べもせずに記事にしてしまぅたのでしょう。ひょっとしたら、二百五十億分の一くらいの確率でプロテイン飲んで胸が女性化する特異体質の人もいるかも知れませんが。
日本でも、筋トレをする人は増えました。しかし、プロテインとアナボリックステロイドを混同してしまうような低レベルな偏見は、未だに根強く残っていますね。困ったものですが、少しずつでも解消していきたいものです。




