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格闘技、始めませんか?  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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打撃と寝技・体格差の影響

 先日、このような内容のツイートを見かけました。


「プロレスごっこしたことある人ならわかると思うけど、実は寝技の方が体格差とパワー影響するんだよ」


 このツイートをした方は、熱心なプロレスファンのようでした。まず、プロレスごっこと格闘技を同列に語っている時点で……なのですが、ひょっとしたら同じ誤解をされている人がいるかもしれません。なので、今回はあえて言わせていただきます。寝技より、打撃の方が体格差やパワーが大きく影響します。これは断言できますね。というより、こんなのは打撃の経験(特にボクシングやキックボクシングの経験者)がある人にとっては常識なんですけどね。ただ、格闘技の経験がない方にはわからないのかもしれないので、出来る限りわかりやすく説明します。



 体格差があると、パンチやキックの威力が段違いです。五キロ違うだけで、まるで違ってくるんですよ。たとえば、ヘビー級が牽制のつもりで放った軽い左ジャブが、クルーザー級の選手にとっては重い一発となります。ましてや、ライトヘビー級(ヘビー級に比べ二階級下です)にとってはKOパンチになりうるんですよ。この体格差だと、ガードの上からでも効かせることが出来ます。つまり、ライトヘビー級とヘビー級とが試合をした場合、ヘビー級のパンチを全て躱しきった上でこちらのパンチを的確にヒットさせなくてはならないんですよ。

 キックも同様です。ヘビー級の選手が、ライトヘビー級の選手にミドルキックを放ったとしましょう。腕でガードしようものなら、下手すると一発で折れます。仮に折れなかったとしても、その一発が内臓まで届くダメージになることもあるんですよ。

 極端な話、軽い選手は重い選手のパンチやキックを一発も食らうことなく、こちらの攻撃だけを当て続けなくてはなりません。体格差があると、それくらいの覚悟が必要なんですよ。

 特にボクシングやキックボクシングのように顔面へのパンチがある場合、体格差のもたらす影響は本当に大きいです。軽い左ジャブが当たっただけでも効かされてしまいますからね。ボクシングやキックボクシングでは、細かく階級が分かれていますが、分けないと勝負にすらならないケースがほとんどですね。

 あと、これは何度も書いていますが……体格差があれば、打たれ強さもまるで違います。



 また、打撃において重要なのはリーチです。これは身長のみならず、腕の長さや肩幅なども関係してきます。まあ、一番重要なのは身長ですが。

 身長の高い選手が、軽い左ジャブを突いてくる……これだけで、身長の低い選手は近づきにくくなります。

 かつてK-1にて一時代を築いたセミー・シュルトは、二メートル十一センチの身長でした。並外れた巨漢が多いヘビー級戦線でも、ここまでの身長の選手はそういないですね。

 しかもシュルトは、己のリーチの長さを活かした闘い方が本当に上手かったです。遠い間合いから、前蹴りやミドルキックが容赦なく飛んでくる。さらに相手との間合いに応じて、ジャブやローキックや顔面への膝蹴り、さらには後ろ蹴りのような技まで飛び出す……これは、相手にしたら厄介でしょうね。たとえるなら、こっちは刀で戦おうとしているのに向こうは弓や槍や短刀を所持し、必要に応じて使い分けてくる……そんな状況です。身長差のある相手との打撃勝負は、本当にキツイんですよ。


 あと、これはアマチュアの話ですが……寝技の試合だと、多少の体格差があってもやらせることがあります。私も寝技の試合に出た時、直前になって「赤井さんの対戦相手、九十キロの外国人になったよ。どうする?」と聞かれました。どういうことかと言いますと、私の出場する八十四キロ以下のクラスと、外国人の出場する九十キロ以下のクラスでは対戦相手がいなかったんですよ。そこで、この両者を闘わせようと主催者は考えたわけです。寝技の場合、こういうことは珍しくありません。よほどの差がないかぎり、少々の体格差があっても試合を組んでくれます。ちなみに、この試合は直前になって外国人が風邪で欠場しました。

 これが打撃だと、階級の違う人同士では組んでもらえないケースが多いですね。特にアマチュアのボクシングやキックボクシングだと、階級が揃わなければ中止というパターンがほとんどです。やはり顔面を殴り合い、脳にダメージを与えるような試合をやるとなると、安全性には気を遣わねばなりません。体格差のある者と試合をするとなると、万が一のアクシデントが起こりかねないんですよね。私もアマチュアのキックボクシングの試合に出場したはいいが、対戦相手がいなかったことがありました。

 もうひとつ言っておきますと、かつて総合格闘技の試合で二十キロ以上の体格差があるカードが組まれたことが何度かありましたが……軽い選手が勝った試合のほとんどが、寝技の攻防に持ち込んでいます。




 念のために書いておきますが、私は寝技なら体格差は関係ない、などと主張するつもりはありません。どっかのなろう作品のように「寝技はチート」「体格差があっても下からの三角絞めで簡単に勝てる」などというリアリティを無視したことは言いません。寝技においても、体格差やパワーが影響するのは確かです。ただ、打撃の方が寝技よりも体格差の影響を受けやすい、と言っているだけです。まあ、こんなことは打撃系をやってる人間なら常識なんですが……その常識を、プロレスごっこの経験で否定して欲しくはないですね。











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