武術界隈の痛い人たち(表)
最近、このような感想をいただきました。
「古武術をよっぽど嫌いなのだとお見受けしました」
これまでに書いてきたことを見れば、そのように思われても仕方ないですね。もっとも、私は古武術そのものが嫌いなのではありません。実のところ、私が以前通っていたトレーニングルームには、古武術を習っているトレーナーがいまして、いろいろ教えていただきました。この方は謙虚で研究熱心であり、格闘技をバカにしたり「人を殺せる技を~」などと言ったりはしない人でした。古武術を習っている人のほとんどが、このトレーナーのような姿勢で古武術に取り組んでいるものと思われます。
が、一部には本当に痛い人がいるんですよ。
先日、ツイッターで「中国武術ってヤる事が目的なんで、ルールあるところでの勝ち負けって違う気がします。中国武術が本気で闘うなら、ヤられても罪に問われない状態を作らないと」という呟きを見ました。また、とある方の活動報告にて「古流の場合は基本、勝ち方ではなくて殺し方ですからねえ」というコメントも見ました。
いずれも、私とは直接関係ない人でしたので、あえて横から口を出すのはやめておきましたが……正直、これはかなり痛いと思いますね。。
人を殺せる技を知っている、だから俺たちは凄い……はっきり言って、完全に机上の空論なんですよ。以前、別のエッセイにも書きましたが……人を殺したことのない人間が、人を殺す技を指導するというのはおかしいんですよ。まずは人をひとり殺して、その罪に対する罰をきちんと受けてから言っていただきたいですね。まあ、この点に関しては、今までに何度も語っているのでここまでにします。
少し前の話ですが、合気道に関する動画を見ました。その中で、合気道家がこんなことを語っていました。
「力がなくても倒せる、というのは幻想です。合気道は、基本的に内輪の練り合いになりやすいですね。実際に、力の強い人とやり合ったことがない人がほとんどです。本当に力の強い人に押さえつけられた経験がないため、勘違いしてしまう人も多いです。あと、全般的に打撃が下手ですね。ガチでやっている人の打撃には対応できないと思います」
この言葉ですが、大半の武術系に当てはまる気がします。ほとんどが、型や約束組手のような練習に終始しています。実戦形式の練習とは言っても、内輪の練り合いとなるのが大半でしょう。百キロを超える体格でウエイトトレーニングをやりスクワットで二百キロ以上挙げるような人や、本格的に格闘技(特に打撃)をやっている人たちとのスパーリングなど、経験したことはないでしょうね。
そんな内輪のみで完結している世界で強いと勘違いし、井の中のかわず状態で「殺し方」などと言っているのでしょう。まあ、全てがそうとは思いませんが。
あと、これまた勘違いされている人が多いようですが、軍隊に採用されている武術だからといって、最強だとか殺人術だとかいうわけではありません。それは完全に間違いですね。まず軍人は、武器で戦うのが基本です。素手での格闘など重視してはいません。素手で殺す技もまた重視していません。どちらかというと、素手で相手を制圧するための技が多いと聞きました。相手を制圧し、捕虜にする……軍人としては、そちらの方が本来の目的に相応しいでしょう。
ちなみにアンディ・マクナブ著『SAS戦闘員』によれば、SASの徒手格闘教官は「私は何十年も武術を学んできた。だが、格闘技の心得があって百キロを超える大男が相手の場合、武術はたいして役に立たない」と語っていたそうです。これが現実なんでしょうね。
上記の「中国武術はヤる事が目的」「古流は勝ち方でなく殺し方を教える」と言っていた二人は、見たところ成人しているようです。恐らく三十歳を過ぎていると思われます。
そんな年齢でありながら、「ヤる」「殺し方」などという言葉を平然と吐ける……まあ私には理解できない感覚ですが、こういう人がいるのが武術界隈なんですよ。もちろん、少数派だとは思います。
しかし、私はこういう人が嫌いです。「人を殺す」という言葉は、軽々しく吐いていいものではありません。ましてや、それを他の格闘技へのマウント取りのために用いるなど、呆れるしかありません。
私が嫌いなのは、こういう人間です。武術系そのものが嫌いなのではありません。
最後になりますが、プロの格闘家は素手で簡単に人を殺せる技量を持っています。そんな彼らに凄惨な事故を起こさせないために、ルールがあるんですよ。そこをわかっていない人が、あまりにも多い気がしますね。




