最近のスポーツ漫画
かつてのスポーツ漫画といえば、無茶苦茶なものも少なくありませんでした。『巨人の星』『侍ジャイアンツ』の原作者だった故・梶原一騎先生が野球のルールを知らないまま書いていたのは有名な話ですが、それ以外にも荒唐無稽で「ありえない」展開の野球漫画は珍しくなかったそうです。
今のスポーツ漫画は、リアルなものがほとんどだとか。昭和のような訳わからない特訓をしたり、魔球などというものは出てこないとか。今の時代、スポーツとしてのリアリティと漫画の面白さを両立させなくてはならないようですね。
最近、『ダイヤのA』『あひるの空』といったアニメを観ました。どちらもスポーツ漫画をアニメ化したものですが、リアリティを保ちつつも面白い作品でしたね。特に『あひるの空』は、バスケットボールがテーマとなっていますが、バスケに全く興味がなくルールすらわかっていない私ですら、面白いと感じました。
それに比べると、格闘技漫画は未だに昭和の時代からあまり進んでいない気がします。
はっきり言うなら、『グラップラー刃牙』『修羅の門』『史上最強の弟子ケンイチ』といった有名な格闘技漫画のほとんどが、ファンタジーの世界です。最近の『TSUYOSHI 誰も勝てないアイツには』『ケンガンアシュラ』といった作品もまた、完全なファンタジーです。リアリティなど欠片もありません。
これらの作品は、サッカーで言うなら日本人の小学生のみで構成されたチームがワールドカップに出場し、海外のプロ選手たちを相手に勝ち進み世界一になってしまう……のと同じくらい、現実には有り得ない内容なんですよ。まあ、こんなことはいちいち書くまでもないのですが。
誤解されては困るのですが、私はそれが悪いとはいいません。むしろ、私はファンタジー系の格闘技漫画のほとんどは好きです。昨今のスポーツ漫画では出来ないことをやってくれているな、と思っています……嫌いな作品もありますが。
ただし、ファンタジーの方だけが有名になってしまっているのは悲しいです。個人的には、ごく普通の主人公の生活の中に格闘技が存在している、そんな漫画が増えて欲しいですね。
特に、総合格闘技のように世間的にマイナーなジャンルですと、底辺の拡大が急務ですからね。総合格闘技の試合を一般の人が観戦する場合、まずネックになるのが寝技の展開です。ある程度の知識がないと、何をやっているのかわからない。わからなければ、見ていて面白くない。結果、いつまで経っても新しいファンを獲得できない……ということになります。
サッカーやラグビーと違い、格闘技にはワールドカップのような世界的なイベントがありません。新しいファンを獲得するには、今のところ底辺を少しずつ大きくしていくしかないんですよね。そのためには、現実に即したリアリティある格闘技漫画も必要ではないか……そんな気がします。
あと、これは個人的な思いですが……「ケガ自慢」「シゴかれ自慢」を一般人の前でドヤ顔で語る人は本当に勘弁してもらいたいです。こういう人は、未だに昭和の価値観を引きずっているんでしょうね。はっきり言って、今はそういう時代ではない……という以前に、ケガ自慢やシゴかれ自慢などをする人がいるから、格闘技はますます近寄りがたいイメージを持たれてしまうのではないかと。
このケガ自慢やシゴかれ自慢も、スポコン漫画と同じく昭和の負の遺産でしょうね。
話がズレましたが、いい年齢のオッさんが草野球を楽しむように、いい年齢のオバさんがママさんバレーを楽しむように、いくつになっても格闘技をやることは出来ます。自分なりのペースで続けられるんですよ。そろそろ、自分のペースで格闘技をスポーツとしてゆるーく楽しんでいる女子高生が主人公の漫画でも書かれて欲しいな……などと願うのであります。
誤解されては困るので、念のため付け加えます。ここで書いている「格闘技をスポーツとしてゆるーく楽しんでいる女子高生」と「古武術をやっている女子高生がヘビー級ボクサーをKOする」とは、根本的に違うものです。前者にリアリティはありますが、後者はリアリティが欠片もない完全なファンタジーですので。




