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格闘技、始めませんか?  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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一発のキックがもたらした結果

 最近、過去の格闘技の試合の動画を観ることがあります。

 先日も、古いK-1の試合を観ました。一ラウンドKOで終わった試合なのですが、格闘技における打撃の怖さをまざまざと知らしめる内容でした。




 かつてK-1に、フランソワ・ボタという選手がいました。K-1に参戦する以前にはプロボクサーでして、マイナー団体ではありますが世界チャンピオンにもなったほどの強豪です。

 そのボタが、マイティ・モーという選手と闘うことになりました。モーは屈強な体つきのサモア系でして、強烈なパンチを誇っています。二メートルを超える巨漢のチェ・ホンマンを、フックでKOした実績もあります。

 この試合、ボタが有利ではないかといわれていました。モーのパンチは確かに強力です。しかしパンチの攻防ともなれば、ボクシングの世界で数々の猛者と闘ってきたボタが有利なのではないか、というのが戦前の予想だったようです。

 ところでが、勝ったのはモーでした。それも一ラウンドで、三回のノックダウンを奪ってのKO勝ちです。負けたボタは、散々な言われようだったとか。「ボタは雑魚」「もはやロートル」などといわれました。


 この試合ですが、開始早々にボタが左のローキックを放ちました。すると、その打ち終わりに合わせモーが右のオーバーハンドのパンチを放ちます。この一撃が、ボタの顔面をまともに捉えました。そこで、一回目のダウンです。

 結果論ではありますが、このローキックこそが最大の敗因でした。ボタはボクサーであり、ローキックは得意ではありません。そのボタが、パンチの得意なモーに不用意なローキックを放つ。これは危険です。

 わからない人のために説明します。キックボクシングにおいて、下手なローキックはパンチの餌食になります。ローキックのモーションに入った瞬間、間合いを詰めてのカウンターパンチ。あるいはローキックをあえて当てさせ、打ち終わりに出来る一瞬の隙にパンチを叩きこむ。これ、キックボクシングでは常識なんですよ。

 特にパンチの得意な選手は、相手の放つ蹴りにパンチを合わせるのが上手いです。ですから、不用意な蹴りを放つとパンチを顔面に喰らいます。以前ツイッターで「ローキック無双」などという言葉を見かけましたが、現実の闘いではパンチが怖くてローキック無双など出来ません。

 ついでに書きますと、蹴りの上手い選手とは、ただ強い蹴りを打てるというだけではありません。パンチに合わされない蹴りを打てるのも、重要な部分です。パンチのコンビネーションからのローキック、もしくはフェイントを交えてのローキック……そのあたりは、このエッセイの『蹴りの難しさ』の章で解説しておりますので、そちらも見てください。

 もっと詳しく知りたい方は、実際にキックボクシングのジムに入会してトレーナーに聞き、自らの体で体験した方が早いと思います。


 話を戻します。モーは、パンチが得意な選手です。そのモーに、蹴りの得意でないボタが不用意なローキックを放つ……ミス、といわざるを得ないですよね。

 そのミスは、強烈なオーバーハンドパンチという結果をもたらします。モーのパンチをまともに顔面にもらい、タフなボタもダウンさせられました。

 ボクシングやキックボクシングのパンチによるノックダウンは、脳が揺らされることにより起きます。脳震盪の経験がある方ならわかるでしょうが、これは数秒で治るものではありません。特に、強烈なパンチによる脳震盪のダメージは……かなり尾を引きますね。

 この試合は、開始早々のダウンで決まってしまいました。ボタは、そのダメージから立ち直ることが出来ないまま、モーの激しい攻撃を凌ぎきれず二度のダウンを喫しての敗北となりました。

 勝負事に「こうしていれば」「ああしていたら」は禁物ですが……この試合、ボタが開始直後にローキックを出さず、じっくりとパンチで攻めていたらどうなっていたでしょう。勝てていた……かどうかはわかりませんが、少なくとも一ラウンドKO負けだけは避けられたでしょう。モーは蹴りの得意な選手ではありません。必然的にパンチでの勝負になります。そうなった場合、ボタの方が有利でしょうね。




 この試合は、一般の人から見れば呆気なく終わってしまった面白くない凡戦かもしれません。ただ私は、格闘技の怖さを感じますね。実力的には上かもしれないはずの選手が、開始直後にたった一発、不用意なローキックを放ってしまった。それが原因で敗北を喫し、評価も下がってしまう……打撃系格闘技の怖さですね。

 ヘビー級のパンチは、一撃で意識を刈り取れる威力があります。ボクサーやキックボクサーは、そういう怖い世界で闘っている人たちなんですよ。その事実を、多くの人に知っていただきたいものです。






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― 新着の感想 ―
[良い点] 得意技一つで攻める、それがいいんじゃないかと思います。 [一言] 仮に私が赤井さんとスパーリングするとしたら~…… 戦力差は刃牙に出てくる不良とスペックぐらいです、マシンガンでも勝てません…
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