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格闘技、始めませんか?  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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どっちが強い?

 以前、とある寮付きの工場で契約社員として働いていたことがあります。そこでは、様々な年代や経歴の人がいました。中には刑務所を出た人や、六十近い出稼ぎのおじさんなどもいて、いろんな話を聞けましたね。

 その工場にある日、妙な人が入って来ました。年齢は五十歳を過ぎており、体も痩せていて冴えない風貌です。しかも、顔はジャイアント馬場に似ていました。さっそく「馬場」というあだ名が付きました。

 この馬場さんですが、実はかなり面倒な人だったのです。ある日、私は工場での作業を終え、数人の同僚とタバコを吸いながら(当時は喫煙していました)談笑していた時でした。そこに、いきなり馬場さんがつかつか近寄って来て、私にこう言ったのです。


「赤井さんは、空手をやってたんですか?」


 私は困惑しながらも、はいと答えました。すると、馬場さんはこんなことを言いました。


「私はボクシングやってたんですよ。空手より、ボクシングの方が強いです」


 私は困ってしまいました。周囲の同僚たちも、いきなり何言ってんだ……という表情です。しかし、馬場さんはお構いなしで語り続けました。


「ボクシングは早いから。空手なんか相手じゃないよ」


 そんなことを語り出したので、私は面倒くさくなりその場を離れました。正直、少しイラッとしましたが……それよりも、五十過ぎてこんなバカなことを言っている人もいるのだな、と呆れてしまいましたね。

 ちなみに、この馬場さんですが……後日、大道塾空手をやっていた人がその話を聞き付け「馬場さん、空手はボクシングより弱いとか言ってたんだって? だったら、俺とスパーリングしてくんない?」などと絡んでいったそうです。それに対し、馬場さんは泣きそうな顔でペコペコ謝っていたとか。

 今にして思えば、若者たちにナメられまいと大きなことを言ってしまっただけなのかも知れないですが……結果として、自身の株をさらに下げることになったようです。




 さて、時代は令和へと変わりましたが、格闘技や武術の世界では未だに「Aという格闘技は、Bより強い」などと主張する人がいるようですね。

 今さら言うまでもないことですが、違うジャンルや流派の格闘技や武術を比較して「あれは強い」「これは弱い」などというのは、全く無意味なことです。

 もちろん、意見はいくらでも出せるでしょう。しかし、それらはしょせん仮説です。検証する方法はありません。ルールも性質も異なるものを同一線上に上げて比較すること自体がおかしいんですね。

 そもそも、強いとは何でしょうか? ボクシングのルールならば、ボクシングのチャンピオンが最強……これは当然です。では、ボクシングと空手をどうやって比較すればいいのでしょうか。お互いのルールで試合をさせればいいのでしょうか。それとも、武術系の人がよく言う実戦でしょうか。では、そのルールはどうやって決めたらいいのでしょう。

 それとも、ルールのない殺し合いでしょうか。その場合、勝者は逮捕されますね。それは、強いと言えるのでしょうか。


 ボクシング、伝統派の空手、柔道、キックボクシング、フルコンタクト空手、レスリング、テコンドー、ブラジリアン柔術などなど……競技の世界で努力し上のランクにいる人たちは、はっきり言ってみんな強いです。彼らは「〇〇が強い」などと言う外野の意見は無視するでしょう。そんな議論に意味がないことを知っているからです。

 みんな違って、みんないい……どっかのセリフをパクったみたいになってますが、違いを知った上で、お互いを認め合う。これは、どこの世界でも大切です。




 と、ここで終わらせるべきなのでしょうが……どうしても納得いかない発言がありますので、こちらにて紹介します。


「私の武術における一番の盟友である光岡英稔という人は、たとえ相撲のルールに即して対戦したとしても、現横綱の白鵬が勝てるとは思えないくらいの人で……」


 これは、武術家として知られている甲野善紀さんが二〇一三年に、コラムニストの小田嶋隆さんとの対談の際にいっていた言葉です(その記事は、ネットに残っています)。私は、その光岡さんなる達人のことは知りません。ひょっとしたら、某格闘技マンガの渋川剛気のごとき本物の達人なのかもしれません。

 が、甲野さんの発言はあまりにも失礼なものですよね。仮にも大相撲の頂点に立つ横綱を、相撲のルールで倒せるとは……白鵬はもちろんですが、日本の国技である相撲に対する侮辱ではないでしょうか。まあ、それは言い過ぎとしても、分別のある大人の発言とは思えないですね。検証できないのをいいことに、白鵬の名前を出すとは、正直呆れます。「俺の先輩なら、那須川天心でも軽くボコれるよ」などと大口を叩くチンピラと同レベルの言葉に聞こえますね。凄い奴を知っている俺も凄いだろ、というチンピラの理論そのものです。

 ここまでではないにしろ、武術系には「机上の空論」のみで格闘技を語り、達人の怪しげな伝説をさも現実に起きたことであるかのように吹聴する人物が多いです。なので、私は彼らを好きになれないのですよ。まあ角界も白鵬も、甲野さんのことなど最初から相手にしていないでしょうがね。









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