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格闘技、始めませんか?  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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暴力への欲求

 だいぶ前のことですが、家に帰りテレビをつけたら、こんな声が聞こえてきました。


「一方的に殴って倒します」


 格闘技の煽りのVTRかと思い、私は画面を注視しました。ところが、そこには予想外の映像があったのです。

 画面に映っていたのは、ふっくらした感じの若者でした。格闘技とは、何の関係もなさそうな感じです。もちろん私は、この若者が何者であるかなど知りません。

 やがて、若者の正体がわかりました。格闘ゲームのプロ(?)だったのです。彼は格闘ゲームをプレイし、見事なテクニックを披露していた……ようです。正直、ゲーム業界に疎い私にはさっぱりわかりませんでしたが。




 言うまでもないことですが、世の中に溢れているゲームの半分以上が暴力的な要素を持っています。機関銃で敵を撃ち殺したり、巨大な剣を振るいモンスターの首をはねたり、強烈な魔法攻撃で大勢の敵を消滅させたり、打撃技のコンボを叩き込んで対戦相手をKOしたり……まあ、そういった部分がないゲームもありますが、ゲームといえばほとんどの人が、撃ったり切ったり殴ったりするものを連想することでしょう。

 全ての人間がそうだ、とは言いませんが……我々の中には、せめて虚構の世界くらいは思いきり暴力的でありたい……という思いが大なり小なり存在しています。もちろん、現実の暴力は否定されなくてはなりません。しかし、同時に暴力的なものに対する憧れのような感情が存在するのも否定できないでしょう。これは、動物の生存本能とも関係があるのでしょうね。

 格闘技には、そうした暴力的なものに対する欲求を満たすような効果がある……と思うんですよ。現実に、パンチやキックのような動きをする。あるいは、サンドバッグにパンチを叩き込み、キックミットに蹴りを叩き込む……こうした動作は、他のエクササイズにはない効果があるような気がします。また寝技のスパーリングでは、相手を押し倒して押さえ込み、関節技や絞め技を極めます。これまた、動物同士の取っ組み合いに近いものがありますね。

 社会生活を送る上で、我々はストレスを避けて通ることは出来ません。しかし、ストレスに耐えるだけではどこかに歪みが出るでしょう。ストレスを上手く逃がす手段としての格闘技……これ、本当にいいと思うんですよ。

 大勢の人間と接触すれば、確実に合わない人はいます。中には、言葉の暴力を投げかけて来る人もいるでしょう。そういった人に対し、物理的な暴力を振るってしまっては、こちらが悪者になってしまいます。そんな時、格闘技という暴力の擬似体験により(言葉は適切ではないかもしれないですが)、暴力への衝動をコントロールし怒りを鎮めることが出来る……まあ、確実にそうできるとは言いません。ただ、そうできる可能性は高くなるでしょう。

 そういえば、格闘技をやっている芸人がこんなことを言っていました。


「いざとなったら、こんな奴は簡単にぶっ飛ばせる……そう思うと、気が楽になる」


 客観的に見れば、決して褒められた考え方ではないでしょう。しかし、それで気が楽になり、余裕を持って相手に接することが出来るならば……それはそれで、有りかと思います。

 






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