壁を背にするということ
たまにテレビや本などの護身術には、こんなことが書かれているものがあります。
「複数の人間と闘う時は、背後から襲われないよう壁を背にすることをすすめる」
なるほど、と思う部分はあります。が、両手を挙げて賛成する……というわけにもいかないんですよね。なお、これから書くことは、あくまで私個人の意見です。さらに、この意見が絶対的に正しいと主張しているわけではありません。
まず、壁を背にするという状況は……背後から襲われない代わりに、こちらの逃げ道もないということなんですよ。これは、精神的なプレッシャーがかかりますね。
ヤンキーなんかは、相手を脅す際にまず襟首を掴みます。次に、相手を壁に押し付けるんですよ。そうすることで、相手を威圧して勝利する……前にも書きましたが、ヤンキーという人種は実際の殴り合いはさほど強くありません。が、相手を脅すことにより「戦わずして勝つ」という状況に持ち込むのは得意です。一度、この状況になってしまったら……そこから逆襲に転ずるのは、非常に難しいでしょうね。何の経験もない人には、まず無理ではないかと。
また、壁を背にしていると、使える技術も限られてきます。例えば、壁に背中を付けた状態で右ストレートを打つと、ほぼ手打ちになります。強いパンチを打つには、全身の力をうまく使うことが必要ですが、背中を壁に密着した状態では、強いパンチが打てません。蹴りもまた同じです。まあ、背中を密着させずに壁を背負えば済む話ですが、それでも追い込まれやすいのは確かですね。
さらに、壁を背負えば思わぬダメージを負う可能性もあります。相手に突き飛ばされ、壁に後頭部を打つ……これ、有りがちな話なんですよ。しかも、ダメージは小さくありません。下手すると、脳内出血の恐れがあります。死に繋がるダメージを負う恐れがあるんですよね。
ボクシングやキックボクシングなどの打撃系格闘技の試合を見ると、押している選手はほとんどの場合、相手を下がらせてロープ際やコーナー(リングの四隅)に追い詰めています。逆に、ロープ際やコーナーに追い詰められている選手は、かなり不利な状況です。ロープ際に詰められたら、セコンドから「回れ回れ!」という指示が出ます。これは、文字通り「回れ」というわけではありません。ロープを背負わないよう回り込め、という意味です。実際、追い詰められた状態から足を使い回り込む練習は、ボクシングやキックボクシングでは、ごく当たり前に行われています。
もし、ロープ際で棒立ちになっていたら、相手から容赦ないラッシュがきます。逃げ場がなく、精神的に追い詰められた状態でパンチを連打される……これは、かなりきついです。肉体的にも精神的にも、一気に消耗しますね。ここから、一発のカウンターで不利な状況をひっくり返せる人もいるでしょうが、普通の人には不可能でしょうね。
それ以前の問題として、複数を相手にすることになった場合……「壁を背に」などと考える暇があったら、さっさと囲みを破って逃げるべきでしょうね。複数のヤンキーがいた場合、ひとりくらいはポケットに手を突っ込んでいたり、やる気なさそうにスマホをいじっている者がいるはずです。そこを狙い、全速力で走って囲みを突破し、わーわー叫びながら逃げる……今まで何度も書いていますが、これこそが最高の護身術です。
最後になりますが、壁を背にして複数を相手にして問題ないような人は……相手の攻撃を完全に見切り躱すことが出来て、しかも襲い来る複数の相手を次々と一撃で倒せる人でしょうか。アクション映画にてスティーヴン・セガールが演じているキャラのような強さの持ち主でないと無理でしょうね。




