後ろ蹴りと、後ろ回し蹴り
先日、ネットを見ていて驚きました。「後ろ蹴りや後ろ回し蹴りは威力がない」という意見を目にしたのです。いや、中段後ろ蹴りは無茶苦茶効きますから……というわけで、今回は後ろ蹴りと後ろ回し蹴りについて語ります。実際、この二つについて混同している人も少なくないと思いますので。
以前にも書いていますが、私の通うジムには森さん(仮名です)という方がいます。森さんは極真空手の黒帯を持っており、かつてプロのキックボクサーとしても活動していたほどの人です。当然ながら、私などより遥かに強いですね。
この森さんと私は、これまで何十回もスパーリングをしましたが、私は百回以上ダウンさせられてます。逆に、私が森さんをダウンさせたことは一度もありません。
そんな森さんの技の中で、一番効いたのが中段後ろ蹴りですね。この中段後ろ蹴り、まともに食らうと吹っ飛びそうになります。いや、実際に吹っ飛ばされることもありました。
また、キックボクシングには「蹴りこみ」という練習方法があります。二人一組になって片方がキックミットを持ち、もう片方がミットめがけて蹴りを叩き込むトレーニングです。一ラウンド(三分)ずつ交代で行うのですが、私はこの森さんと蹴りこみをやっていました。ミドルキックやローキックも強烈でしたが、やはり一番強烈だったのは中段後ろ蹴りでしたね。一発食らうたび、吹っ飛びそうになりました。念のため書きますが、九十キロ近い私がキックミットを持ち構えているんですよ。にもかかわらず、後ろ蹴り一発で吹っ飛ばされそうになります……その衝撃力は、強引に例えるならバイクがぶつかって来るようでした。これを「威力がない」といえるのは……弱すぎる低レベルな相手としか練習していないのか、あるいは現実の蹴りを受けたことがないか、のどちらかでしょうね。
余談ですが、この森さんという人は本当に強いです。しかし、ただ強いだけではありません。同時に「相手にヤバいケガをさせないぎりぎりのライン」を見極めてスパーリングをすることが出来る人でもありました。打撃のスパーリングというのは、難しいところかありまして……当然ながら、ある程度は当てなくては話になりません。
ところが、プロでもないのに毎回ガンガン顔面を殴り合っていたら、脳に深刻なダメージを負う可能性があります。そのため、顔面には「当てるけど強くはない打撃」というのが求められます。まあ、プロ同士はガチでド突き合ったりしますが。
森さんは、その辺りの使い分けが上手かったですね。ローキックや後ろ蹴りやボディーアッパーなどはガチ、だけど顔面への打撃は二割くらいの力で打って来る……森さんのおかげで、私は打撃の技術が向上しましたね。
さて、後ろ回し蹴りについても語りましょう。ここで、後ろ蹴りと後ろ回し蹴りの違いについて簡単に説明します。体を回転させ、相手に背中を向ける……そこから、真っすぐ足を突き出し踵や足裏を相手に当てるのが後ろ蹴りです。それに対し、背中を向けた状態からさらに回転し、横から踵や足裏などで薙ぎ倒すように蹴るのが後ろ回し蹴りです。
この後ろ回し蹴りですが、見た目は派手で決まればカッコイイです。しかし、単純な衝撃力の数値から言えば、普通の回し蹴りと変わらないかもしれないです。あるいは、劣っているのかもしれません。
ただし、後ろ回し蹴りは……上手くいけば踵をヒットさせることが出来ます。踵というのは硬く、ダメージを一点に集中させることが出来ます。これ、本当に痛いんですよ。例えるなら、ハンマーで殴られるような感じでしょうか……今までハンマーで殴られたことはないですが、何となく理解していただけると思います。
もっとも、この後ろ回し蹴りという技は、基本的には自身のペースを掴むためのものと解釈した方がよいでしょう。オーソドックスな技の攻防から、いきなり後ろ回し蹴りを出し、相手にやりにくさを感じさせる……それが出来れば、当たらなくても充分に意味は有るでしょう。
最後に、後ろ蹴りと後ろ回し蹴りの使い手を……個人的には『変則の王者』の章でも紹介した、マンソン・ギブソンを挙げたいですね。この人については、私の拙い筆力による説明よりも動画を見てもらった方が早いです。この動きは、日本人には真似できないでしょうね。




