安静にしなければいけない人
先日、とある健康番組を何気なく観ていた時のことです。出演していた医師の先生が、こんなことを言っていました。
「ぎっくり腰のような急性の腰痛の場合、安静にしているのは二日間ほどでしょうね。その時期を過ぎたら、積極的に動かさないといけません。ところが、ほとんどの人が体を動かさなくなってしまう。運動により、また腰痛が起こるのでは……という恐怖心から、運動を避けてしまう傾向があるんですよ。腰痛の人ほど、意識して運動しなくてはなりません」
この言葉に、私は考える部分がありました。
以前にも書きましたが、腰痛に限らず怪我をした場合は動かした方が早く治る……という考え方が、今や常識なんですよ。
もちろん、怪我をした直後は安静にしていなくてはなりません。しばらくは安静にしておき、頃合いを見て体を少しずつ動かしていく……でないと、良くなっているのかがわからないんですよ。また、安静を意識し過ぎると血行や新陳代謝にもよくありません。なるべくなら、少しずつでも動かしていく方がよいでしょう。ただし、あくまでも医師との相談の上です。痛みを感じるようなら、やめるべきでしょう。
ただ、それでも動かせる部分は動かした方がいいでしょう。もともと運動の習慣のない人が、怪我をしたからといって家でずっと寝たきりになっていると、確実に筋力が落ちます。そうなると、怪我は治った後も生活に影響してきますから。
ところが、格闘家の場合は話が別なんですよね。格闘家という人種は皆、毎日ハードなトレーニングを積んでいます。「努力するのが当たり前」という世界で生きていますから。また、当然ですが痛みにも強いです。
そのため、安静の時期が終わると、自己判断でいきなりハードなトレーニングを再開してしまったりするんですよね。結果、怪我を悪化させてしまったりするんですよ。
なので、格闘家の場合は一般人とは逆に、意識して安静にしなくてはなりません。トレーニング再開の時も、出来る範囲で少しずつ強度を上げていく必要があるんですよね。
実際、私はプロ格闘家同士のこんな会話を聞いたことがあります。
「お前なあ、休む時はちゃんと休まなきゃダメだぞ。故障が治ってないのに無理して練習してたら、かえって弱くなるだけだ」
この二人は、先輩と後輩という間柄ですが……プロといえども、休むことの出来ない人がいるんですよね。というより、痛みに強い人ほど、我慢してしまうんですよ。結果、症状を悪化させてしまう……まさに、一般人とは逆の現象が起きてしまうわけです。
また、これは格闘家に限りません。先ほど一般人と書きましたが、その一般人の中でも、根性のある人や痛みに強い人ほど頑張ってしまう傾向があるんですよね。怪我や病気の時でも、安静にすべき時に無理をしてしまう……難しいところですね。
なので、周囲でこういう「無理してしまう」タイプの人を見つけたら、それとなく様子を見ておいてください。場合によっては「顔色悪いですね、大丈夫ですか?」みたいな言葉をかけてあげるのもいいかと思います。
蛇足になりますが、最近ふと思うことがあります。昭和という時代は、とにかく極端な根性論がまかり通っていました。練習中は水を飲むな、多少の怪我や病気は気合いで治せ、などなど。
これは運動系の部活動だけでなく、企業でも当たり前のように行われていたようです。場合によっては寝ないで仕事してノルマ達成する、それが当たり前……というような会社も当時はあったそうですね。かえって能率が悪いと思うのですが、それは置きましょう。
ところが平成に入ると、間違った根性論が見直され、科学的なトレーニングを重視するようになりました。医学面でも、怪我をしたら安静に……という考え方が当たり前になってきました。もっとも、今もとんでもない根性論で指導している監督もいるようですが……。
しかし今では「安静にしているだけでは治りが遅い」という考え方が常識となっています。常識というものは、時代の変化と共に変わっていくようですね。もしかしたら、この先また新しい理論が出て来るかも知れませんね。




