寝技の注意点
もうすぐ春ですね。春になれば、新生活を始める人も少なくないでしょう。新しい何かを始めるには、もってこいの時期ですね。そんなわけで、いささか強引ではありますが……寝技を始める時の注意について書いてみたいと思います。強引ですみません。
寝技には、関節技と絞め技があります。
絞め技は、基本的に首を腕もしくは足で絞め、気道や頚動脈を圧迫して意識を失わさせるものです。この技は、上手い人がカチッと極められれば、十秒もかからない間に意識を喪失させることが出来ます。さらに、がっちり極まれば抵抗のしようがありません。気合いや根性で耐えられるものではないのです。仮に根性を振り絞り耐えたとしても、消えてゆく意識を押し止めることは出来ません。例えるなら、どんな性能のいいマシーンでも、電源が切れれば動かなくなるのと同じです。
一方、関節技は相手の腕や足の関節に別方向からの力を加え、相手の関節を破壊する技です。これまた、がっちり極まれば関節が脱臼したり、靭帯が切れたりしてしまいます。
ただし、この関節技というのは難しい部分があります。格闘技というのは……練習の時には、相手に怪我をさせてはいけません。アクシデントによる怪我は避けられない部分がありますし、試合を目標としているならば、多少の覚悟はしなくてはなりません。ただし、それでも練習中の怪我は避けるべきです。
その点を踏まえると、寝技のスパーリングで関節技が入った場合、かけられた側は白旗を上げるつもりで早めにタップ(ギブアップの意思表示)しなくてはなりません。
ところが、関節技が入っているのにタップしない人もいるんですよね。負けず嫌いなのか、あるいは関節が柔らかいのかは分かりませんが、どちらにしてもタップしない人は困りますね。
スパーリング中は、体は興奮状態です。アドレナリンが出ているため、痛みを感じにくくなっています。関節技がかかっても痛みを感じにくいため、耐えられてしまうんですよ。かけている側は、基本的に寸止めなんですが……タップしないとなると、さらに深く技を入れざるを得ません。
ところが、関節技には「壊してしまうライン」が存在します。このラインを越えてしまった場合、どんなに丈夫な関節を持っていても、どんなに柔軟な関節を持っていても、ひとたまりもありません。
スパーリング中、相手がタップしないので、さらに一捻りを加えたらバキッという音がした。逆に、負けたくないので関節技を耐えていたら、相手が捻りを加えてしまい、バキッという音と共に凄まじい痛みが走り腕が動かなくなった。これは、あってはならないことですが……起こりうることなんですよね。
ですから、スパーリングで関節技をかけられたら早めにタップ……これだけは心掛けた方がいいでしょう。練習の段階で、つまらないプライドゆえに負けを認めず、怪我をるのはバカバカしいので。
プロ選手の場合、そのあたりはきちんとわきまえています。彼らは、練習だと早めにタップする人が多いです。つまらないプライドには左右されず、練習では負けを認めます。逆に言うと、練習で怪我をするのは技量の低さを表しているといっていいでしょう。もちろん、不運による怪我もありますが。
ところが、試合となると話は別です。試合になれば、彼らは怪我を覚悟でぎりぎりまで耐えます。いや、耐えるというよりは、脱出を試みると書いた方が正確ですね。巧みにポイントをずらしつつ、関節技からの脱出を狙う。逆にかけている側は、ずらされたポイントを修正しつつ次の展開にも備える……そのあたりの駆け引きは、本当に奥が深いですね。
余談ですが、プロレスでは関節技は極めない……という暗黙の了解が出来ています。実際、試合では寸止めの関節技しか使いません。プロレスの試合で、関節技をかけられたレスラーが苦しみもがきながら、ロープに逃げる……そんな場面を見た人も多いでしょう。格闘技では、そういう場面はありませんが。
しかし、プロレスラーはちゃんと関節技を極められるだけの技術を持っています。実際に関節技を極めて、相手の関節を壊せる……そういう技術を持っているからこそ、試合で寸止めの関節技を使うことが出来るんですよ。
逆に、しっかりした技術を持っていなければどうなるか……試合中に関節技が極まり、相手が本当に怪我をしてしまうかもしれません。まして、ヒールホールドなんかかけたら……下手すると、レスラー引退ということにもなりかねません。
極めるポイントを知っていればこそ、そこをずらして怪我をさせないように技をかけ、試合を成り立たせることが出来るのです。




