際の攻防
今回は、際の攻防について語ります。この言葉、一般の人には聞き慣れないでしょう。しかし、総合格闘技を語る上では重要なんですよね。
際の攻防について説明する前に、まずはテイクダウンについて説明します。これを理解しないと始まらないので。
テイクダウンというのは、要するに立っている人間を倒し、グラウンドの展開に持ち込むことです。総合格闘技において、非常に重要な技術ですね。ただし今回は、あくまでその触りの部分だけです。私は、レスリングや柔道の細かい技術を知っている人間ではないので……あくまで、基礎中の基礎の部分だけを語ります。これから格闘技を始めようと考えている方はもちろん、そうでない方も総合格闘技の試合を観る際の参考になってくれれば幸いですね。
総合格闘技の試合は、まず打撃の攻防から始まります。パンチ、キックといった技の打ち合いですね。
組み技に持ち込みたい人は、この打撃の攻防からタックルを仕掛けたり強引に掴みにいくわけです。ちなみに、タックルにも片足タックルと両足タックルとがあります。厳密に細かく分けると、バリエーションは複雑なものになるのですが……ここでは、その二つについてのみ語ります。
非常にざっくりした説明になりますが……片足タックルとは、体を相手の腰近辺にぶつけていくと同時に片足を取り、相手のバランスを崩し倒します。両足タックルは、ぶつかると同時に両手で相手の両足を取り倒します。ただ、この説明だけでは不十分ですので、動画など観ていただいた方がいいでしょうね。
一方、タックルされた側は、そのタックルを避けようとします。が、避け切れずもらってしまうこともあります。綺麗なタックルが入れば、一瞬で倒されてしまいますね。しかし綺麗なタックルが入らず、中途半端に組み合った状態で壁際に付いてしまうことがあります。これが、いわゆる「際の攻防」です。総合格闘技では、珍しくない状況ですね。
この攻防ですが、はっきり言ってきついです。
総合格闘技、特に金網の中で行われる試合は、タックルを仕掛けると相手は壁を背にする……そんな状況があるのですが、壁を背にした相手を倒すというのは、非常に大変なんですよ。壁が背後にあれば、当然ながら後ろに倒すことは出来ません。そのため、様々な技を用いて倒そうとします。相手の上半身を壁にぐいぐい押し付けていきながら、パッと切り替え両足を取って引き倒す。脇を差して(相手の両脇に自分の両腕を差し入れた状態)投げを狙う。深くしゃがみ込み、相手の体に両手を巻き付け持ち上げる。足払いでこかす……などなど、色んな攻め方があるんですよ。
逆にタックルを仕掛けられた側は、壁にもたれかかりながら倒されまいと動きます。この場合、基本的には壁を背にした状態からの脱出を狙います。が、一瞬のタイミングにより攻防が入れ替わることもありますね。この攻防は、肉体的にも非常にきついですね。練習の時も、これが一番疲れます。
しかも、総合格闘技には打撃もあります。組み合っている時に、ボディをこつこつ殴る。壁にぐいぐい押し付けていくと思わせ、いきなりパッと間合いを離して顔面にパンチを叩き込む。さらに、顔面に肩をぶつけていくというテクニックもあります。
膝蹴りという手もありますが、この状況では使うのが少々難しいですね。膝蹴りを放つと、当然ながら片足で立っている状態になります。つまりは不安定な体勢になるわけですね。タイミングを間違えると、膝蹴りを放つ瞬間にスコーンと倒されてしまいます。ちなみに、総合格闘技の試合では、この攻防から膝蹴りを見舞うシーンが見られますが、あれは何も考えずに出しているわけではありません。組み合った状態から、タイミングを計って膝蹴りを出しているんですよね。
上にて書いた部分は、ほんの一部に過ぎません。この「際の攻防」は奥が深いですし、また疲れます。さらに、見た目も地味で伝わりにくいですが……闘っている選手の立場としては、ものすごく大変なんですよ。そのあたりが、ほんの僅かでも伝えることが出来れば幸いです。
さらに付け加えますと、幼い頃からレスリングをやっていたような人は、この攻防が非常に強いです。将来、総合格闘家になろうと思っている若者は、レスリングを経験しておいた方がいいでしょうね。




