『時と場合によります』という解答
以前、ある方の活動報告に書かせていただいたことなのですが、かつてジャッキー・チェンがアメリカの情報系テレビ番組にゲスト出演した時のことです。
「あなたとジャン・クロード・ヴァン・ダムが闘ったら、どっちが勝つ?」
番組の司会者にこんな質問をされたジャッキーは、笑いながらこう答えたそうです。
「リングの上だったらわからないけど、街の中なら負けない」
実はこのエピソード、十年以上前に知り合いから聞いた話なのです。なので、真偽のほどはわかりませんが。ただ、言われてみるとなるほどと思う部分はあります。ちなみに……実際にどちらが強いか、なんてことは、正直大した問題ではないですね。彼らは俳優であって格闘家ではありません。実際に強いか強くないか、という事より、強く見えるかどうかの方が重要なわけですから。私がここで言いたいのは、二人の格闘スタイルの差です。ところで……私はこの二人について、それほど詳しいわけではありません。なので二人の熱烈なファンから見れば「それは違う」という意見もあるかもしれませんが、あくまで個人的意見なので……。
ジャン・クロード・ヴァン・ダムの格闘スタイルはと言うと……やはり空手技を用いたアクションでしょうか。柔軟な体を活かしての高い蹴りが得意なようです。飛び後ろ回し蹴りなどは実に綺麗なフォームですね。また、自らの筋肉を誇示するようなポーズもよく見られます。ちなみに、彼はかつてプロ空手のミドル級チャンピオンだったらしいです……プロ空手とは何なのかよくわかりませんが、少なくとも格闘家としても実績を残しているということですね。
一方のジャッキー・チェンはというと……中国拳法の技を用いたアクションが多いですが、もう一つ目立つのは場の状況を活かした闘い方です。例えば、部屋にあるテーブルや椅子などを使う。それもただ武器として用いるのではなく、テーブルの下をくぐって攻撃をかわし形勢を逆転させたり……といった、その場に用意されている物を利用する闘い方が多いように思います。
さて、以前にも書きましたが、素手での格闘において、体格差はいかんともしがたいものがあります。体重が二十キロ違うと、こめかみや顎(一応は急所です)に渾身の力を込めたパンチを喰らわしても、ケロッとして反撃してきたりします。ましてや、男女の差があると……これはもう、お話になりません。
大抵のラノベやアニメでは、そのへんの事は綺麗に無視されています。華奢で美形、格闘技などしたこともないような体つきの少年少女がわけのわからない技(しかも聞いたこともないマイナーな格闘技の技)で百キロを超す大男を一撃KOしたりします。
それが悪いとは言いませんし、非難するつもりもありません。ただ……華奢で美形な少年少女には、もっといい闘い方があるのではないだろうか、と私は思うのです。わざわざマイナーな格闘技を習わせ、説明の面倒な技を使わせるくらいなら、ジャッキー・チェンのスタイルで闘わせればいいのではないか、と私は思うのですが……少なくとも、相手を素手で殴るよりは、足を引っかけてコケさせた方がダメージは大きいです。さらに言うなら、階段から突き落とせば、それだけで勝負は決まります。
身の周りにある物を上手く活かし、不利な状況をひっくり返す……そういった描写の方がリアリティーもあるし、マイナーな格闘技や武術を調べる手間も省けるし、良いと思うのですが……ただ、これはあくまで私の個人的な意見です。マイナーな格闘技の使い手の主人公を否定するつもりはありません。
さらに付け加えれば……これは異能バトルにおいても言えるのではないかと。極端な話、チート能力者と無能力者の主人公が闘い、その場の状況を活かし、そして針の穴ほどのチャンスをものにして勝つ……そういう展開は燃えますね。今後、そんな展開の小説が増えて欲しいです。
最後に、私は性格判断のようなクイズをして、全問「時と場合によります」と答えたことがあります。時と場合に応じて動く……これは格闘技に限らず、人生においても大切ですね。しかし、性格判断のクイズでこのような答えを返すというのは……時と場合を考えていない動きだったかな、と思わざるを得ません。




