認識の隔たり
これまで私は、リアルな闘いならばどうなるか……という点について何度か書いてきました。もっとも、小説のようなフィクションにおいて、あまりにもリアルな描写は必要ないでしょう。
また、私は現実の格闘技についてもいろいろ語っていますが、自分の意見が絶対に正しいとは思っていません。そもそも、格闘技に対する考え方は人それぞれです。打撃が得意な人がいれば、寝技が得意な人もいます。身長や体重、さらには身体能力によっても違いが出てきます。百人いれば、百通りの格闘技観がある……これは少し大袈裟かも知れませんが、それに近いものはありますね。
ですから、このエッセイに書かれていることもまた、ひとつの意見であり万人に当てはまるわけではない……というスタンスで読んでいただけると幸いです。
ただし、実際に格闘技をやっている人間と、やっていない人間とでは、認識にかなりの隔たりがあるのも確かなんですよ。
たとえば、以前に「先日、古武術の演武を見たが、ボクシングやキックボクシングのようなスポーツ格闘技とは種類の違う迫力を感じた」という意見を目にしました。この意見を述べた人は、恐らく格闘技経験のない人でしょうね。
演武というのは、格闘技の試合とは根本から異なるものです。「こういう技を出すから、お前はそれを喰らって綺麗に倒れろ」という筋書のある闘いなんですよ。ですから、真剣勝負では使えないような派手な技を受けて倒れる……ということもあります。
それに対しボクシングの試合は、お互いに目の前にいる相手をガチで倒そうとしている真剣勝負です。当然ながら、相手はこちらの攻撃を躱しますし、また反撃もしてきます。さらには、こちらの攻撃に合わせたカウンターもしてくるかもしれません。とにかく、試合と演武はまったく違うでして、同列には語れないものなんですよ。
道場に見学に行ったら、老齢の師範が飛び掛かって来る若い弟子を投げ飛ばすのを見せられた……合気道や古武術の道場にありがちな展開ですが、これまた筋書のある演武です。未経験者は、演武と実戦とを混同してしまうんですよね。
こんなことは、格闘技をやっている人間にとっては、ごく当たり前の常識です。しかし、格闘技の経験がない人は、それらを混同してしまうんですよね。この認識の隔たりというのは、なろうに来て始めて知りました。
また、以前からしつこいくらいに書き続けていますが……体格差というのは、格闘において非常に重要な要素なんですよ。にもかかわらず、その事実を分かっていない人が予想以上に多いですね。これまた、なろうに来て始めて知りました。いや、本当に驚きましたよ。「体術習えば、倍以上の体格の人間が相手でもぶっ飛ばせますよ」という意見をいただいた時は……ネットや、怪しげな本から得た浅い知識のみで語っているのでしょうね。
こういう、格闘技経験者とそうでない人たちとの認識のズレというのは、予想以上に大きいですね。なろうで書き始めなかったら、永遠にわからないことでした。
ですから、私は経験者と未経験者との認識の隔たりを少しでも埋めるために、このエッセイで続けていきたいと思っています。まあ、出来ることなど限られているとは思いますが。
あと、もうひとつ続ける理由があります。たまに見かけるのですが、格闘技の経験者だと称していながら、書いている内容があまりにもお粗末なユーザーさんがいるんですよね。見る人間が見ればバレバレなのですが、「こいつ、確実にやってないな」と分かるような技の描写や、主人公に意味不明なトレーニングをさせたりする作品があるんですよ。さらには、語っている知識がとても薄っぺらな人もいます。
こういうユーザーもいるので、私はしつこく連載を続けていくつもりです。明らかに間違った知識を、未経験者に事実としてインプットされては格闘技を広めたい者としては迷惑ですので。
念のため書いておきますが、格闘技に関して私よりも高いレベルの人はいくらでもいます。アマチュアでも、私より上の人はごろごろいるんですよ。なろうでも、私より上のレベルの人はいます。
そんな程度の私から「とても薄っぺらな知識」と評されるということは……はっきり言って、経験者とは呼べないレベルでしょうね。
誤解されると困るので、 一応付け加えます。私は、格闘技未経験者に格闘シーンを書くな、と言っているわけではありません。リアリティなど気にせず、好きならどんどん書いていくべきです。ただ、私はこのエッセイではリアルとフィクションの違いについては、きちんと書いていきますので。




