ファンタジーに登場する武道家
先日、夜中にとあるアニメが放送されていました。原作はライトノベルでして、ダークでシビアな世界観が評判だそうです。私は読んだことは有りませんが、噂くらいは耳にしていました。
そんなわけで、私はそのアニメを観ていましたが、ちょっとひっかかる部分があったんですよね。ヒロインの女の子がギルドに依頼され、若い冒険者のパーティーとゴブリン退治に行きます。が、そのパーティーのひとりが素手で闘っているんですよ。パンチやキックでゴブリンを蹴散らす……いわゆる武道家なんでしょうね。いかにも深夜のファンタジーアニメらしいキャラたな、と感じました。
打撃系の格闘技の中には、トーナメントという形式の大会が有ります。いちおう説明しますと、複数の選手が試合を行い、勝った選手同士が次に試合し、最後まで勝ち残った選手が優勝となるルールです。当然ながら、優勝するには一日で何度も試合をしなくてはならないわけです。
そのため、トーナメントで勝った選手は控室に戻ると同時にマッサージなどを行い、さらに氷で足を冷やします。次の試合に備え、肉体のダメージを少しでも取り去るためです。
この肉体のダメージというのは、相手から受けた攻撃によるものだけではありません。自分の攻撃によるダメージもあります。パンチにしろキックにしろ、自分の手足を相手にぶつけていく技ですから、当然ながら無傷というわけにはいきません。脛を鍛えていない素人が人体の固い部分に回し蹴りを当てた場合、一発で足を痛めます。脛をガンガン鍛えているプロ選手ですら、自らの放った蹴りで足を痛めることがあります。
また、拳も痛めることがあります。ボクシングやKー1の場合、バンテージで拳を保護しグローブをはめますが、それでも痛めることがありますね。
ましてや総合格闘技の場合、薄いオープンフィンガーグローブなので痛める可能性が高くなります。以前、アマチュアの総合格闘技のトーナメントに出場し一日で三試合を闘った選手と話をしたのですが……決勝では、拳がボロボロで思い切り殴ることが出来なかったと言っていました。
別の問題もあります。狭い路地裏や室内での闘い……というより喧嘩の場合、有りがちなのが技の自爆です。相手を殴るつもりが、壁を殴ってしまった。相手を蹴るつもりが、電柱を蹴ってしまった。これは、路上での闘いでは起こりうる事態です。間違えて壁など殴ろうものなら、一発で拳は駄目になります。パンチ力が強ければ、骨折は確実でしょうね。
私が何を言いたいのか、お分かりでしょうか。手足を武器にして闘うという行為は、ただでさえリスクが大きいんですよ。まして前述のアニメの場合、戦う場所はダンジョンのような視界の効きづらい暗く狭い場所です。若くスタイルのいい女の子が、ダンジョンで武装したゴブリン相手に手足を武器にして闘う……これは、もはや自殺行為としか思えませんでした。
ちなみに、その女の子は作中でものすごく酷い目に遭っていましたが、自業自得としかいいようがないですね。
言うまでもないことですが、闘いにおいて武器を持っている方が強いのは当たり前の話です。落ちている棒、転がっている石ころを手にするだけでも、殺傷力は違ってきます。
さらに、武器ならアクシデントでぶつけて壊してしまったとしても、代わりのものを使えばいいだけです。最悪の場合、相手の武器を奪うという手段もあります。しかし、手足はそうはいきません。特に、ダンジョンで足を痛めたら終わりでしょうね。視界の効きづらい場所で、足に怪我して動けなくなったとしたら……その時、物語はファンタジーからホラーへと変貌するでしょうね。それはそれで、見てみたい気もしますが。
最後になりますが、ファンタジーで武道家のように素手で闘うクラスなどは、リアリティを考えたら有り得ないものです。しかし、それでも最低限のリアリティを残しつつ素手で闘うキャラを登場させるとしたら……『ベルセルク』のターパサのような、人間をやめてしまっているような外見の持ち主になるでしょうね。
念のため説明しますと、ターパサとは仁王像のような外見であり、拳や足には巨大なタコがあります。ラノベの表紙には、間違っても登場しないようなキャラですね。




