体で覚えた知識
先日のことですが、私は寝技のスパーリングで師匠から初めて一本を取りました。
その時の状況を書きますと、アナコンダチョークを極めにいったが崩れたのでフロントチョークに切り替え絞め上げたところ、師匠がタップした……などと書かれても、寝技を知らない人には何のことか分からないでしょう。ものすごく簡単に書くと、首を絞めて降参させたというわけです。
これまで六年以上もの間挑み続け、ことごとく敗れてきた私でしたが……スパーリングとはいえ初めての勝利です。はっきり言って嬉しいですが……そんな気持ちを書かれても困るでしょうから、そのスパーリングを通じて思ったことなど書かせていただきます。
フロントチョークという技は、実は極まりにくいんですよ。画像や動画などで見てもらえると分かるのですが、もし仕留めそこなった場合、相手は自分の上に乗ることとなります。これは言うまでもなく不利な状態です。
なので、フロントチョークを仕掛けるのはリスクが伴います。また、フロントチョークをかけ続けていれば、当然ながら腕は疲れます。腕が疲れれば、あとあと不利になります。
そのため、フロントチョークを仕掛けた場合の見極めというのは難しいです。しかし今回、私は極められると判断して絞め続けました。結果、一本が取れたわけです。
寝技を初めて学んだ時、最初は誰もが力任せに技をかけます。力を込めてぐいぐい絞め上げますが、それだけではかかりません。
そこから経験を積んでいくと、技が極まらない場合もあることを覚えていきます。そのため、技を外して次の展開へと備えることもあります。
しかし、さらに経験を積んでいくと、絞めながらポイントをずらして極めていく……場合によっては、そのまま力任せに絞め続けて一本が取れる時もあります。
この時の判断というのは、非常に難しいですね。頭で考えて分かるものではありません。まして「Aの場合は絞め続ける、Bの場合は他の技に移行する」という公式があるわけでもありません。全ては、体で学んだ知識と経験から判断するしかないんですよ。
経験を積んでいけば、判断のミスは少なくなります。さすがに、どんな場合でも百パーセント間違いのない判断を下すのは不可能ですが、百に近づけることが出来ます。
これは寝技に限りません。打撃に関しても同じことが言えます。例えば、自分の放ったローキックが命中した……ところが、相手には効いている気配がありません。
この場合、さらにローキックで攻めるか、あるいは攻撃を散らしていくか……実のところ、相手は効いているのを隠している可能性もあります。さらにローを当てれば、相手の動きが悪くなる可能性もあるわけですよ。
ところが、本当に効いていない可能性もあります。それどころか、ローに対するカウンターパンチを狙っている可能性もあるんですよ。
こうなると、最終的には自身の経験から判断するしかないです。豊富な経験があれば、判断ミスは少なくなりますね。
さらに言うと、これは格闘技に限りません。続けていった結果、初めて見えてくるものや理解できること……これは、どんな分野であろうと存在します。実際に体で学んだ知識というものは、ネットの発達した昨今では随分と軽んじられているような気がしますが、実際に体験して理解できることは多いですから。
ここまで経験の大切さについて語ってきましたが、そんな経験の差など、ものともしないような人種がいます。
冒頭に絞め技について書きましたが、本来なら極まらないはずなのに、並外れた腕力で極めてしまうような人はいます。また、誰に教わったわけでもないのに、極めるコツを理解している人もいたりします。こういう人たちを見ていると、改めて才能の差というものを感じます。
というわけで、経験は大事であるということを今回は言いたかったのですが、凡人の経験などものともしない奴もいる……それもまた現実なんですよね。




