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格闘技、始めませんか?  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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寝技はチートではありません

 今回は、あるなろう作品をけなす……というか明らかに間違っている点を指摘してます。結果、不快に思う方もいるかもしれません。そういった内容が嫌いな方は、読まない方がいいです。


 先日、とある書籍化する予定の作品を読みました。いや、正確には途中まで読みました。その作品は、リアリティーある異世界ものという触れ込みだ……という噂を聞いたからです。

 しかし、途中で私は苦笑して、読むのをやめました。正直、格闘シーンがかなりひどい……というより、分かっていなかったからです。

 一番ひどかったのは、百五十センチの主人公が百八十センチを超える相手と闘った時です。まず前書きに「寝技は格闘技のチート」などと書かれており、さらに百五十センチの主人公(昔、柔道部にいたようです)は体格差のある相手(百八十センチを超える樽のような体つきの男)と闘い、一旦は押し倒されます。が、下からの三角絞めで簡単に絞め落としてしまうのです。

 すると観客が「足で首を絞めたぞ!」「見たことない技だ!」「天才レスラーが現れた!」と騒ぐ……まあ、異世界ものではよくある展開ですね。

 経験のない人たちには分からないのでしょうが、残念ながらこんなに上手くはいきません。作者さんは柔道二段だそうですが、描写が穴だらけですね。ついでに、と言っては何ですが、寝技の難しさも語らせていただきます。




 まず、一つ知っておいていただきたいのは……寝技は簡単ではない、ということですね。

 バックチョークは、絞め技の中では簡単な部類です。ただし、これですら経験のない人がかけた場合、簡単には極りません。

 ましてや、三角絞めの場合は……形だけ分かったとしても、いざ本番となると簡単にはかかりません。

 一応、説明しますと……三角絞めとは、おおざっぱに言うなら自分の両足を相手の首に巻き付け、頸動脈や気道を絞める技です。寝技の中でも、比較的早いうちに教わるかと思います。

 この三角絞めですが、はっきり言って難しいですね。見よう見まねで出来るものではありません。まず、足という部位は力は強いですが、器用さには欠けています。足で絞めるには、それなりの練習が必要です。

 ここで、寝技の練習についても説明します。新しい技を教わる時は、まずトレーナーが皆の前でやって見せます。次に一般の会員が、似たような体格の人同士で二人一組となって技をかけ合います。この過程を打ち込みと呼びますが、打ち込みをやらなくては技のコツは理解できません。

 三角絞めを使えるようになるには、この打ち込みが必要不可欠です。しかし、打ち込みだけでは実戦では使えません。

 打ち込みで体に覚え込ませた技を実戦で使えるようにするためには、スパーリングが欠かせません。

 当然ながらスパーリングの時は、相手も動きます。こちらが技をかけようとすれば、相手は防いできます。ですので、防ごうとする相手にどうやって技をかけるか……これまた、スパーリングを繰り返して体に覚え込ませるしかないですね自分なりの得意なパターンを、時間をかけて見つけていくしかないのです。

 こうして、人は寝技を覚えていくわけですが……それが通じない場合もあります。

 それは、相手と自分とが体格差のある場合です。先ほど、技の打ち込みは似たような体格の人と行うと書きましたが、体格差があると寝技がかかりづらいからなんですよ。

 特に三角絞めは……体格差があると、本当にかかりづらいですね。まず、相手が大きいと足が回りにくいんですよ。次に、絞めようにも体のパーツがデカ過ぎて、上手く絞まりません。さらに、僧帽筋(首の横に付いている筋肉です)が発達している相手は特に極めにくいです。

 しかも、実戦となると相手は動いています。体が大きく力の強い相手が、上に乗っている……これだけで、異様にやりづらいんですよ。その上、相手は技をかけられるのを待っていてはくれません。向こうも何かしら技をかけようとしてきますし、押さえ込もうともしてきます。

 そして、体格差のある相手とやっていて一番怖いのがバスターです。このバスターというのは、相手を持ち上げ地面に叩きつける技でして、パワーボムに似ています。

 例えば、私が大きな相手に三角絞めをかけたとしましょう。しかし、相手は凄まじいパワーで立ち上がり、私を持ち上げバスターを仕掛ける……私は後頭部と首を地面に叩きつけられ、両足のロックは外れます。下手をすると、その一撃で脳震盪を起こすかもしれません。

 実際、総合格闘技の試合でもバスターで勝敗が決したことがあります。また、アマチュアの試合ではバスターは禁止になっているケースが多いですね。それだけ危険だからです。

 ちなみに、このバスターは難しい動きではありません。いわば、本能的なものです。ネズミに指を噛みつかれたら、反射的に手をブンと振りますよね。それと同じで首に何かが巻き付いてきたら、反射的に外そうとする……相手が小さければ、暴れて振りほどこうとする。その過程でバスターになる。これ、寝技やっていれば当たり前の知識なんですよ。

 なお、私の説明でも理解できないと感じた人は、ボブ・サップVSアントニオ・ホドリコ・ノゲイラの動画を見てください。ブラジリアン柔術の達人であるノゲイラの三角絞めを、サップは力任せのバスター……というよりもパワーボムで外しています。




 念のためですが、私は「体格差があれば、下からの三角絞めは絶対に極められない!」と主張しているわけではありません。プロの総合格闘家や、ブラジリアン柔術の黒帯クラスの人間ならば極められます。そこまでいかなくても、大きな相手を三角絞めで仕留められる人はいるでしょう。

 ただし、それを可能にする技術を得るには……きちんとした練習が必要なんですよ。地味な技の打ち込みや、きついスパーリングを何年も繰り返し痛い思いをして、初めて「小よく大を制する」ことが可能になるのです。

 多少の知識だけで勝てるほど、体格差は甘いものではありません。ましてや「寝技はチート」などと、軽々しく語らないで欲しいですね。現実の格闘技には、チートなど存在しないのですから。

 ただ、一つ分かったことがあります。なろうの読者は、リアルな格闘技の知識など求めていないのですね。「寝技は格闘技のチート」などと書き、さらに観客が「なろう主すげえ」という展開さえあればいいようですね……いい勉強になりました。




 蛇足かもしれませんが、私が同じ状況になったら……まず押し倒された瞬間に両足を相手の胴に絡みつかせ、クロスガードの体勢を取ります。一部では「だいしゅきホールド」などと呼ばれているそうですが、これは寝技の基本中の基本です。このクロスガードにより、相手の有利なポジション取りを防ぎます。

 次に、下からのアームロック……をかけるふりをして相手の動きを誘い、隙を突いて相手の背後に回ってのバックチョークを狙います。三角絞めは、あまりにもリスクが大きいので狙いません。私は三角絞めが上手くないから、という理由もありますが。

 ちなみに件の作品は、押し倒された後のポジションやガードについて何も触れられていませんでした。これ、寝技にとって非常に重要な部分なんですが……まさか、相手がマウントポジションなのに脱出せず三角絞めに成功したのでしょうか。だとしたら、主人公はダルシムもしくはルフィだったのかもしれませんね。







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