タックルは強力な技です
最近(二〇一八年)、某大学のアメフト部による事件がニュースを賑わせています。とはいっても、私はアメフトのルールすら知りませんし、また観たこともありません。
はっきり言えば、日本ではアメフトのルールすら知らない人が大半ですよね。そんな視聴者に、アメフトの負の部分のみを連日報道しているのはどうなんでしょうね……本音をいえば、私はあの事件には一ミリも興味がありません。当事者でもないのに、あいつが正しいとか、こいつが悪いとか言いたくないので。当事者が解決してくれれば、それで何の問題もないかと。
アメフト問題はともかく、タックルというのは非常に強力な技なんですよ。
なろう作品の格闘シーンにおいて、タックルが登場するような場面は見たことがないですね。タックルの有効性について、分かっていない方がほとんどなのでしょう。
確かに何とか流拳法奥義とかいう技や、発勁だの寸勁だのという神秘的なものに比べると、タックルという技は格好いいものではないかもしれません。また、ラグビーやアメフトといった球技で使用されていることもあり、さほど危険ではないと思われているのかもしれません。
しかし、これは間違いです。はっきり言いますが、タックルはレスリングや総合格闘技はもちろん、逮捕術や軍隊格闘技などにも採用されている技です。古武術や拳法などでよくいわれる「人を殺せる技」よりも広く採用されているのは間違いありません。
事実、私はかつてレスリング選手だったプロの総合格闘家のタックルを何度か食らいましたが……その威力は、皆さんがイメージされているものとはまるで違うでしょうね。
まず、タックルをまともに食らうと……みぞおちに強い衝撃が走ります。相手の肩が、みぞおちにぶち当たるからなんですよ。上手い人のタックルは、打撃技にも似た衝撃が走ります。
さらに次の瞬間には、一気に引き倒されています。たとえて言うなら、両足が見えない何かに引っ張られて倒れる……といった感じです。事実、上手い人のタックルは力ずくという感じがありません。気がつくと倒れている、そんな感じですね。
ちょっとタックルからはズレるかもしれませんが、レスリング選手はタックルに入るタイミングが非常に上手いです。組んだ状態から相手の力の方向をズラしたり、首を取る動作などのフェイントを交えつつ、いきなりパッと飛び込んできます。
この速さもさることながら、触れ合った状態から相手の力の入り具合などを見抜く能力は素晴らしいものがあります。相手の押し引きや、力の微妙な方向を見切る……私の筆力では上手く説明できませんが、武術の達人のような動きを実際に出来てしまえるのが、レスリング選手だということは知っておいていただきたいですね。
私はかつて学生の時、喧嘩の強い先輩と話したことがあります。その時に言っていたのは――
「喧嘩に勝つのなんか簡単だよ。タックル食らわしてブッ倒して、ヘッドバット叩き込めば大概の奴は終わりだから」
実際、タックルで倒せば終わりだった時代がありました。ボクシングや空手のような打撃系は、レスリングのタックルを食らえば何も対処できず倒されていたのです。
しかし今は、タックルを防ぐための技術も研究されてきました。また組み技の攻防も研究されてくると……今度は、また打撃技がクローズアップされるようになってきたのです。
タックルの防ぎ方としては、まず思い切り両足を後方に引きます。次いで、自分の全体重をかけて相手の上から覆い被さります。見た感じは、タックルを仕掛けた側が上から潰されたような形になりますね。
その体勢なら、上からコツコツとパンチを打ったり寝技を仕掛けたり出来ます。つまり、タックルを仕掛けた側が不利になるわけですね。
そのため、タックルを放つ側は潰されないような工夫が必要です。総合格闘技なら、牽制の速いジャブで目眩ましをして、そこからタックル……のように、打撃での牽制が必要です。時には大振りのパンチを放ち、ガードさせてからのタックルのようなコンビネーションもあります。
また左ジャブを放ち、相手が反応して打撃を打った瞬間にタックル……ここまでで理解していただけたと思いますが、タックルを敢行するにあたっては、打撃による牽制が欠かせません。どんなに強力なタックルが打てようとも、そのタックル単体では使えない……そんな時代になってるんですよね。
とはいえ、タックルが強力な技であることに代わりはありません。タックルという技を、もう少し評価して欲しいものです。
蛇足かもしれませんが、五月二十五日にアメリカの中学校で銃の乱射事件が起きました。その時、アメフトの選手だった先生が犯人にタックルを食らわして取り押さえております。アメフトという競技やタックルという技には、こんな一面もあるのですが……日本のマスコミは、なぜ大きく報道しないのでしょうか。まあ、格闘技というテーマからはズレるので、これ以上は書きませんが。




