古武術系が好きになれない理由(表)
今回は、タイトルからして挑発的ではありますが……実のところ、トレーニングジムのインストラクターで古武術を習っている人がいまして、古武術について何度か話したことがあります。その人は、とても謙虚ないい人でした。古武術をやっている人にありがちな態度(後で説明します)はなく、私の質問にもきちんと答えてくれましたし。
ですので、最終的には古武術だろうが格闘技だろうが関係なく、個人の人格ということになるのでしょうか。ただ、古武術や護身術のような武術をやっている人には、ちょっと変わった人が多い気がするんですよね。それも、変な方向にプライドを持ち、また意識高い系の面倒くさい人が。
昔、とあるお笑い芸人がこんなことを言っていたそうです。
「俺は、ミルコ・クロコップに勝てる」
私は最初、この発言は単純にウケを狙ったものかと思っていました。偉そうに言っておいて、実際にミルコと対面したらローキック一発でKOされて笑われる……そんな展開へのフリではないかと。
しかし、件の芸人はこんなことも言ったのです。
「リングの上で、ルールのある闘いはしない。ミルコの普段の生活の中での隙を突いて倒す。ルールのない闘いなら勝てる」
正直、この発言もまた真剣なものではないと信じたいですが……万が一、本気だとしたら救いようがないですね。
もっとも、古武術や合気道のような護身術系の武道をやっている人間の中には、こうした発言をする者がいるのも確かなんですが。
昔、合気道を習っていた知人から聞いたのですが……「俺は路上なら、アンディ・フグにも勝てる」などと豪語している人が道場にいたそうです。当時はKー1の全盛期でして、まだマイク・ベルナルドなどが現役の時代でした。
よくよく聞いてみると、その人は普通のサラリーマンでして、しかも三十歳を過ぎているそうです。体格も普通で、少し腹の出始めた体型だとか。
私は唖然となりました。
「それ、ウケ狙いの発言なんじゃないですか?」
と聞いたら、
「いや、本気でそう思ってるみたいなんだよ」
という答えが返ってきました。
何をバカなことを……と思われるかもしれませんが、これは珍しい話ではありません。
古武術をやっている人というのは、基本的にガチの闘いを経験していません。柔道や剣道などの武道を経験しておらず、路上の喧嘩もしたことがないような人がほとんどですね。
そんな人が古武術の道場に行ったら「これは人を殺せる技だ」という技を指導される……そうなると、中には自分は強いと勘違いしてしまう人もいるらしいのです。その技が生きた人間に実際に通じるか、そんなことは考えもしません。
やがて彼らは、こんなことを言い出すようになります。
「実戦なら、俺は格闘家より強い」
この人たちは結局、以前にも触れた脳内達人と同レベルなんですよね。実際の闘いを全く経験していないため、自身の技が本当に人を殺せると信じているんですよ。
まあ、信じているだけなら何も言う気はありません。ただ、彼らは格闘技をバカにするような発言をするんですよね。
「格闘技で禁止されている危険な技を、我々の流派は練習している」
「古武術と格闘技はまるで違う。古武術は殺し合いのためのものだ」
これって、はっきり言うと厨二の発想だと思うんですよ。しかも、殺し合いとか勇ましいことを言っているわりには、やっていることと言えば……道場の中で、約束組手のような練習をするだけ。大して汗もかかないような練習をして「俺は格闘家に勝てる」などと広言している人がいるんですよ。
しかも、彼らは実際に闘おうとはしません。「ルールのある闘いは実戦ではない」「武術の本質とは違う」などと言いながら、彼らは試合を避けます。
格闘技にしろ武術にしろ、実際に闘えてこそ意味があるはずですし、闘えもしないのに「俺は人を殺せる」などと口先だけで言ったところで何の意味もありません。口で言ったりネットに書き込むだけなら、誰でも出来ますし。
もちろん、古武術を習っている人の全てがこんなタイプだとは言いません。ただし、妙な方向に意識高い人がいるのも確かなんですよね。試合に出た経験もないのに「武術の本質」などという口先だけの言葉を用いる人は、本当に嫌いですね。
いろいろ書いてきましたが……こういう人たちが、いざとなった時に一線を超える覚悟があるかどうかは疑問ですね。殺人という罪を背負って、前科者として生きていく覚悟があるかどうか……まあ、そんなことすら考えたことがなく、脳内で敵を倒して悦に入っている人が大半でしょう。
日本の武術家の中には、アフガニスタンのゲリラに武術を指導し、共に銃を手にして戦った人物がいるそうです。もちろん、真偽は私には分かりません。ただ、人殺しの技について語るのであるなら……この武術家のような経験をしてから、ではないでしょうか。経験もないのに人殺しの技を語るのは「俺なら大谷翔平の球を打てる」と飲み屋で言っているおっさんと同レベルだと思うのは、私だけでしょうか。
最後になりますが、格闘家は日々つらいトレーニングをしています。さらに試合が決まれば、食べたいものも食べず飲みたいものも飲めず、厳しい節制と鍛練の日々を過ごし、時には塩分と水分をほとんどカットするような日もあります。
さらに試合が近づくにつれ、逃げ出したいような恐怖心と戦いながら試合に臨みます。端で見ていると、俺には絶対に無理だ……と思いますね。
そんな格闘家たちを「あれはしょせんスポーツだから」「武術の本質から外れてる」などと、大した経験もないのに口先だけの言葉で貶めるのは、本当にやめていただきたいですね。




