面倒な上下関係
古い話で恐縮ですが、二〇一七年の十一月二十九日に、元横綱の日馬富士が引退しました。後輩にあたる貴ノ岩に対する暴行が原因のようです。
もっとも私は、この問題について語るつもりはありません。マスコミが連日のように騒いでいましたし、もとより大した興味もありません。
ただ思うのですが、相撲に限らず日本の体育会には、上下関係を絶対視している部分はありますね。
私の通っていた中学校には柔道部がありました。また高校には、柔道部と空手部がありました。しかし、そのいずれにも入る気は無かったです。理由は、やはり上下関係ですね。端で見ていると、まあ酷いもんでした。
当時の体育会系の部では、上の人間の言うことは絶対です。「おめえ、いい加減にしろ! 殺すぞ!」などという罵声は当たり前、殴る蹴るなどといった暴行も日常茶飯事でしたね。
言うまでもなく、私は当時から格闘技には好きでした。ただし、この特殊な上下関係には付いて行けないものを感じていましたね。そのため、中学や高校の部活動には関わらないまま卒業しました。
こうした伝統は、本当に何とかすべきだと思いますね。実際、私の通うジムに来ていたプロ選手は、中学から大学卒業までレスリング部にいましたが……話を聞くととんでもなかったですね。南北戦争時の黒人奴隷のごとき待遇に、私は心底から震えてしまいました。まあ、大げさに言っている部分はあるのかもしれませんが。
例を挙げると「気合いが入っていない」と上級生から評価された一年生は、「気合いを入れるため」という大義名分の下、唐辛子を一瓶まるごと入れたラーメンを食わされたり、町内を全裸でダッシュさせられたりしたそうです。
こうした体育会のノリが好きな人もいるかもしれませんが、私は嫌でしたね。そもそも「気合い」などという曖昧なものを基準にして、罰ゲーム的なものをやらせる……果たして、それで気合いが入るのでしょうか。もっとも、こういうことを言うと「ノリが悪い奴」と言われるのですが。
いずれにしても、当時の格闘技の部活動は独特の上下関係が支配していたようですね。今はどうだか知りませんが。
ただ一つ言わせていただくなら、格闘技は球技とは違います。殴り合ったり取っ組み合う競技なんですよ。いわば、相手を破壊するための技を学ぶわけです。したがって、ヘラヘラ笑いながら取り組むものではないんですよ。
特に試合に出るような人の場合、厳しくなるのは仕方ありません。ましてやプロの練習ともなると、ニコニコ笑いながらは出来ないですね。
プロボクサーのパンチは、たとえ軽量級であっても相手の鼻や前歯をへし折ることが出来ます。下手をすれば、パンチによる脳挫傷により死ぬ危険性もあるのです。
また、プロの総合格闘家は腕ひしぎ十字固めで相手の腕を折ることが出来ます。ヒールホールドで足を折ることも出来ます。
そこまでいかなくとも、スパーリングは集中して行わなくてはなりません。打撃にしろ寝技にしろ、スパーリングは真剣にやれば危険が伴います。気を抜いてやれば、怪我をするかもしれません。
ですから、多少の緊張感は必要なんですよね。少なくとも、本格的にやろうとすれば……厳しい言葉を浴びせられるのを避けては通れません。
前述のような体育会のふざけたノリはともかく、上の人間がきっちりと練習をさせる環境を作るというのは大切です。ある程度の緊張感を持ち、締める部分はきっちり締めていく……これは大事ですね。
確かに昔は、締めつけが強すぎた感があります。暴力的な制裁もありましたし、上の人の極端すぎる横暴な振る舞いもありました。
しかし、今ではだいぶ緩和されております。少なくとも、一般の人が通う道場やジムには、極端な上下関係や厳しい練習を強いるような場所はまずありません。さらに言うと、厳しい練習を強いられる環境でなければ強くなれないというのは嘘であると思います。
もっとも例外はありますので、前にも書いた通り事前のチェックはしておいた方がいいでしょうね。




