キックボクシングの盛衰
今回は、キックボクシングの盛衰について語ります。厳密に言うと、キックボクシングとKー1は違うのですが……一般の人から見れば同じであろうと思い、あえてキックボクシングの枠に入れております。
若い人には想像も出来ないでしょうが、かつてキックボクシングが社会現象となるほどのブームになった時代がありました。
しかしブームを語る前に、まずはキックボクシングの誕生について、ごく簡単に語らせていただきます。もともとはムエタイを見た日本人が発案した競技、それがキックボクシングなのです。完全な和製英語ですね……もっとも今では、海外でもキックボクシングで通じるようですが。
そんなキックボクシングは、一人の選手の登場により人気が爆発します。キックの鬼・沢村忠が中心となって生まれたキックボクシングブームは、本当に凄かったようですね。
例えば全盛期には、ほぼ毎日どこかのチャンネルでキックボクシングが中継されていたそうです。もっとも昭和の時代は、様々な格闘技がブームになっていましたが。
しかしキックボクシングの場合、沢村の引退後みるみるうちに衰退してしまいました。ブームの時に作り上げた貯金を上手く活かすことが出来ず、あっという間にマイナー競技になってしまったようです。
その上、団体がいくつにも分裂し……チャンピオンが乱立しました。競技という視点から見た場合、ボクシングとは比べものになりませんね。
結局、キックボクシングは超マイナー競技となってしまいました。一般の人にとって……名前は知ってるけど見たことないしルールも知らない、キックボクシングはそんな感じだったのです。
ところが、時代が平成に変わると、新たな風が吹いてきました。まずは、前田日明さんの率いていたUWFというプロレス団体の台頭です。格闘技色の強い試合を行い、多くの人たちを魅了しました。キックボクシングの選手もUWFのリングに上がり、プロレスラーと試合をしたのです。
さらに、空手の正道会館は特殊な方法で名を上げていました。他流派の空手の大会に選手を送り込むというやり方です。もともと指導が上手く、理論面においても優れていた石井館長(当時)率いる正道会館は、あっという間に有名になりました。
この正道会館は空手の枠にとどまらず、やがてプロ格闘技の世界へと進出していきます。さらに極真空手が分裂したため、正道会館は当時のフルコンタクト空手の最大勢力となったのです。
さらに正道会館は、Kー1という興行を始めました。説明の必要もないでしょうが、Kー1は結局のところ既存のキックボクシングから肘打ちを除き、首相撲からの膝蹴りに制限を加えたものです。
しかし当時の石井館長のマネージャーとしての手腕は素晴らしく、興行として見事に成功しました。Kー1はブームになり、「立ち技といえばKー1」というイメージが出来たのです。結果、他団体のキックボクサーにもスポットライトが浴びることとなりました。
そんな初期のKー1を支えていたのは、やはり佐竹雅昭でしょうね。日本人ヘビー級の第一人者であり、第家二回のKー1グランプリではピーター・アーツと優勝を争っています。判定で敗れはしましたが、全盛期のアーツと判定までもつれ込む闘いをしてのけた実力は本物でしたね。
もっとも、その後のヘビー級は外国人たちが牽引していきます。ピーター・アーツや故アンディ・フグ、故マイク・ベルナルドといった一流のヘビー級選手たちの闘いが地上波にて放送され、ブームを巻き起こしました。沢村忠の時ほどではないかもしれませんが、キックボクシングは人気を取り戻したのです。
さらに、一人の日本人キックボクサーの登場により、Kー1は空前のブームとなりました。反逆のカリスマこと魔裟斗です。魔裟斗は中量級でありながらも、世界の強豪たちを相手に闘う姿が人気を呼びました。実力的にも、ずば抜けたものがあったのは確かです。
ところが、その魔裟斗が引退すると……キックボクシングはみるみるうちに廃れていきました。エース候補は何人かいたのですが、皆カリスマと呼べるレベルにはなれませんでした。またしても、冬の時代が訪れたのです。
しかも、その冬の時代の最中にも各団体は分裂したり潰れたり、また新たな団体が生まれたり……を繰り返していたようです。
結果、かつてのような勢いを取り戻すことは出来ないまま、現在に至っています。
今(二〇一七年)、キックボクシングには新たなヒーローが登場しています。那須川天心や武尊といった若きエースが、今のキック界を引っ張っていっております。深夜枠の三十分番組とはいえ、地上波でも放送されるようになりました。
また、エクササイズ的なキックボクシングは女性にも人気です。底辺の部分から、少しずつ広がっているのは確かでしょう。
ただ、やはり上の組織運営がしっかりしてくれないことには、どうしようもないですからね。かつての石井(元)館長のような手腕を持った人が出てくれば、さらに盛り上がるのかもしれませんが……これも良し悪しです。
各団体が統一され、しっかりした下部組織が出来ない限りは、キックボクシングはマイナーから脱却出来ないでしょうね。まあ、個人的にはそれでもいいと思いますが。




