格闘技スキルとは
なろう作品の中には、「ステータス・オープン!」なるセリフが出てくる作品があります。
このステータスなる言葉の不自然さに関しては、以前にも触れました。しかし今回は、別の角度から疑問点を挙げていきたいと思っております。
ステータスの中には、必ずスキルという言葉が出てきますよね。このスキルというもの、果たして数字で表せるのだろうか……と私は思うわけですよ。特にVR作品では、何の運動経験もないひ弱な主人公がいきなり格闘スキルLV1000! になってしまったりするわけです。
それが、いかにあり得ないものであるか……格闘技の経験のない人にも、出来るだけ分かりやすく書くつもりです。経験者にも、ウンウンと頷いていただける内容かと思いますので。
闘いの際には、当然ながら相手と向き合います。状況にもよりますが、まずは打撃が届くか届かないかの間合いの攻防から始まるわけですね。
ここで、どんな動きをするか……この時点で、格闘技スキルが問われてきます。相手の身長や体格、さらには構え方などを見て、どう攻めるかを一瞬で考えます。そして、一秒にも満たない時間の間に作戦をたてます。
この際、まずは牽制のジャブを打ちながら相手の周りを回る人もいます。あるいは足を止め、じっくりと出方を窺う人もいます。中には、いきなりフルパワーで殴りかかっていく人もいますね。
さらに状況が変わり、打撃と組み技の中間の間合いに入ったとしましょう。分かりやすく言いますと、手を伸ばせば相手の襟首を掴めるくらいの間合いです。
この局面では、数えきれないくらいの選択肢があります。打撃を放つ、掴んで投げる、タックルで組み付く、フットワークで間合いを離す、などなど。
仮に打撃を選択した場合でも、パンチ、キック、肘、膝、などという選択があります。さらには首相撲からの膝蹴り、頭突き(ほとんどのルールでは反則ですが)、飛び膝蹴りなどの選択肢もあります。また、両手で相手を突き飛ばしてバランスを崩させてからのハイキック……という技もあります。
要するに、無数の選択肢があるのです。では、何を選べば正解なのか……残念ながら、正解はありません。その状況に応じて、自分で判断し動くしかないですね。
ところが、格闘技の経験がない人には……どの状況でどんな技を出すか、その選択の時点で戸惑ってしまうでしょうね。実際の闘いは、ゲームとはまるで違います。頭の中での空想通りに実戦で体が動くようなら、苦労はしません。
また、仮に空想通りに自分の体が動いたとしましょう。ところが、相手は空想通りに動いてくれません。頭の中では上手くいっていたことも、現実では上手くいかない……これは、どんな分野でもあることですよね。
その頭で考えたことが、実際に通じるかどうか……それは対人練習で試してみなくては分かりません。
また、個人の資質によっても違ってきます。身長や体重、パワーやスピードやスタミナ、打撃技と組み技どちらが得意か、などなど……A選手が得意とするパターンがB選手は苦手、ということは珍しくありません。
ここまで書いてきましたが、結局のところ格闘技スキルとは、個人の鍛練によって磨き上げていくしかないのですよ。
先ほど書いた、様々な局面における選択……そこで何を選ぶかは、本人の経験則から導き出されるものです。自身の得意とするパターンは、トレーニングの積み重ねからしか生まれません。試行錯誤し、時には失敗しながら個人に合ったものを見つけていくしかないのです。
その過程を経て、技は初めて実戦で使えるようになります。考えるより先に体が反応し、状況に合った技を出す……これは、対人練習をも含めたトータル的なトレーニングなくしては生まれません。
この過程を一切無視し、普通の人なのに格闘技スキルがレベル1000……これは、どういう状態なのでしょうか。
恐らく、自分の意思とは無関係に体が勝手に動き、敵を自動的に倒している状態なのでしょうか。となると、VRゲームとしては面白くもなんともない気がするのですが……。




