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格闘技、始めませんか?  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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プロレスラーとの死闘(?)

 これは、数年前に体験した出来事です。


 その日、私はいつものようにジムに来ていました。更衣室にて着替え、ストレッチをしていました。その時、仲のいいジムの仲間が、こんなことを言ってきたのです。

「赤井さん知ってます? 今日の寝技の時間は、プロレスラーが出稽古に来るらしいですよ」

「えっ?」

 私は驚きました。プロレスラーが出稽古とは……いったい、どんな奴が来るのだろうか。

「今日、来てる人の中で一番でかいのは赤井さんですから……頑張って相手してくださいよ」

 ジム仲間は、ニコニコしながら物騒なことを言っています。私は内心でビビりまくりながらも、

「分かりました。任せてください」

 などと答えたのです。とはいえ、プロレスラーが出稽古に来るとなると……いろんな意味で緊張しましたね。私よりもデカくてパワフルな相手とのスパーリングは初めてです。一体どうなることか、とドキドキしておりました。


 しかし、いざ現れたプロレスラーを見た時……私は「えっ?」と思いました。確かに筋肉は凄いですが、背はさほど高くありません。はっきり言って、百七十三センチの私よりも背は低かったです。顔にも見覚えが無く、ちょっとガタイのいいお兄さん……といった感じでしかありません。これなら勝てるんじゃねえか、などと私は考えておりました。

 ところが、格闘技はそんなに甘いものではありません。 いざ、スパーリングの時間に組み合ってみますと……まず、パワーに圧倒されました。相手の体格からして力負けはしないだろう、と踏んでいましたが、実際のところ私とはレベルが違いましたね。

 さらにスピードもあり、テクニックもしっかりしたものを持っていたのです。これは全く予想外でしたね……。

 その上、闘い方が激しいんですよ。やや専門的な話で申し訳ないですが、寝技が強い選手には、大きく分けて二種類のタイプがあるように思います。柔術家のようにねちっこくジワジワ来るタイプと、レスリング選手のようにパワフルな動きでガンガン来るタイプの二通りです。

 件のプロレスラーは、ガンガン来るタイプでした。この動きに圧倒され、私は防戦一方です。

 こうなったら仕方ない、とにかく一本負け(関節技や絞め技を極められギブアップすること)だけは避けよう……私はそう思い、防御に徹しました。ひたすら守り切り、時間切れによる引き分け(?)を狙ったのです。

 しかし、そうはいきませんでした。プロレスラーは、その強烈なパワーとテクニックで私の防御を崩し、強引に腕ひしぎ十字固めを掛けてきました。私は防ぎきれずギブアップしたのです。

 文字で書くと簡単ですが、これは大変なことなんですよ。寝技の攻防で、防御に徹している相手を関節技で極める……これは、非常に難しいことです。余程の体格差とテクニックの差がないと無理ですね。例えるなら、ボクシングでフットワークを使いひたすら逃げまくる相手をノックアウトするのと同じくらい難しいんですよ。

 それを、件のプロレスラーはやってのけたのです。まあ、お前が弱すぎるだけだろ……と言われたら、返す言葉もありませんが。




 さて、時は流れて数年後のことです。夜中、私がテレビを点けると……プロレスが放送されておりました。画面に映っているのは、かつて私を関節技で極めたプロレスラーでした。しかも、腰にチャンピオンベルトを巻いております。

 そう、かつて私をボコボコにしたプロレスラーとは……後にIWGPのジュニアヘビー級チャンピオンとなった、KUSHIDA選手だったのです。

 調べてみると、KUSHIDA選手は総合格闘技の経験もあり、強豪として知られていたようです。総合格闘家としてのオファーもあったようですが、彼はプロレスを選びました。

 そして……今や一流レスラーとなっています。KUSHIDAさんの選択に、間違いはなかったようですね。


 そんなわけで、格闘技好きな皆さん……格闘技をやっていると、こんなこともあるのです。仮に通っているジムに有名な選手がいなくても、様々な理由から一流選手が出稽古に来る……ということもあります。

 実際、自分の触れ合った選手が活躍している姿をテレビで観るのは、なかなかいいものですよ。「うわ、俺こんな人と練習したのか……」と、ちょっといい気分に浸れますので。







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