続・おかしなトレーニング
前回に引き続き、今回もおかしなトレーニング及び有りがちな展開について突っ込んでいきます。ただ、これはあくまでリアルとフィクションの違いを説明しているだけです。決して、特定の作品を貶めようという意図はありません。
前回にも書きましたが、大事な試合を控えた主人公が特訓のため、山奥や滝の中でわけの分からないトレーニングをするシーンがあります。これは正直、本当に意味がないと思うんですよ。
山奥や滝の中で出来るトレーニングは、極めて限られたものとなってきます。
また、万が一の事態に備えることは難しいです。例えば、ケガなどしてしまったとしましょう。すぐに病院に駆け込むことは出来ません。
試合を控えた身でありながら、そんな状況に身を置くことに何の意味があるのでしょうか。
特に試合直前の時期は、まず自身のコンディションを整えることに集中すべきです。山奥に入れば、遭難したり獣に襲われたりする可能性もあります。そういった点を考えれば、山ごもりの特訓などは絶対にしてはならないですね。
余談ですが、昭和の格闘技マンガでは、山ごもりの最中に動物と出会い素手で倒す……という展開があります。
しかし、この展開は一気にリアリティーが無くなりますね。グラップラー某のようなリアルを無視した格闘ファンタジーならば有りだと思いますが、ちゃんとした格闘漫画でありながら素手で熊を倒すという場面は、ちょっとやり過ぎではないかと。
以前から何度か書いていますが、人間は野生動物と素手で闘った場合、まず勝ち目はありません。中型の野犬と山の中で出会ってしまったら、死を覚悟した方がいいでしょう。少なくとも、素手で立ち向かうのはオススメできる行動ではないですね。
また、昭和の格闘技マンガでは「耐えることこそが美徳」という考え方が当たり前ですが……個人的には、これは非常に危険だと思いますね。
例えばの話ですが、体のどこかに痛みを感じたとしましょう。これは、体からの危険信号です。「これ以上、動いたらヤバいよー」と、体が脳に伝えているわけですね。その状態の時に無理して動かしたりすると、取り返しのつかない状態に陥ってしまうことがあります。
もしケガをした時には、必ず休みましょう。痛みに耐えて行動するというのは、何の意味もありません。
ただし、何でもかんでも安静にしていればいいというものでもないんですよ。これまた勘違いしている人が多いのですが、ケガをしたら何がなんでも安静に……というのも正しいとは言えません。
ある程度の段階に来たら、動かせる部分を動かさないと治癒は長引きます。仮に治っても、全身の筋肉が落ちてしまう可能性もあります。
昔に聞いた話ですが、腰を痛め入院した人がいました(仮にAさんとしましょう)。医者いわく「絶対安静、治った後も運動はしないように」とのことでした。Aさんは医者の指示を守り、退院後もスポーツから遠ざかっていましたが……その後も腰痛に悩まされていたそうです。
さらに数年後、一向に良くならなかったAさんは別の医者に診てもらったのですが……こう言われたそうです。
「腹筋や背筋を強くし、筋肉で腰回りを覆うコルセットを作りましょう」
はい? とAさんは思いました。「運動はするな」と別の医者から指示されていたことを話すと、こう言われたそうです。
「ケースバイケースではありますが、基本的に今は筋肉を強くして腰を守る、という考え方が一般的です。安静にして何もするな、というのは昔の考え方でしょうね」
要するに、昔のケガの治療というのは……痛くても我慢しろ、もしくは絶対安静で運動厳禁という極端なものだったようです。
ケガの際は、動いていた方が血行が良くなり新陳代謝も促されるため、少しずつでも動かした方がよい、というのは今では常識なんですが……知らない人も少なくないようです。
これは、前回とも重なる部分ですが……昔の格闘技マンガでは、とにかくキツい長時間の練習をさせていました。根性論もしくは精神論などと言われているものですが、これは何とかした方がいいですね。
基本的に、私は根性論には反対です。また、量をこなすだけのトレーニングをすべきではないとも思っています。
実際、とある格闘技の有名選手が精神を鍛えるために、その筋では有名な道場に行きました。
で、その選手はどうなったかと言いますと……試合には勝てませんでした。まあ当然かと思います。重りを背負って歩かせたり、サンドバッグを長時間蹴り続けたり……確かに根性はついたのかもしれませんが、試合に勝てるような能力は付かなかったようです。
そして、この根性論に満ちた格闘技マンガというのは……結局のところ、昭和の悪しき遺産であるような気がしますね。平気で暴力を振るう鬼コーチ(上司)の理不尽な命令に、黙って従えるようなロボットのごとき人格の選手(部下)が、最後には勝利の栄冠を手にするストーリー……今も、体育会にはその名残がありますよね。さらにはブラック企業にも。




