おかしなトレーニング
今回は、ここが変だよそのトレーニング! の巻です。格闘技の映画やマンガなどに見られるおかしなトレーニング方法について語り、それがどのように間違っているのかについて私の意見を述べさせていただきます。
なお、私はプロの格闘家でもトレーナーでもありません。なので、あくまでも一人の格闘技好きの意見として読んでいただけると幸いですね。この意見が絶対に正しい! というつもりはありませんので。また以前に書いたことと重複する部分もありますが、その点はご容赦ください。
あと、勘違いされている人もいるようですので一応書いておきますが、「あの作品は格闘技をバカにしている! けしからん!」などと言ったことはありませんし、言うつもりもありませんので。
格闘技マンガでは、試合の直前に訳の分からない特訓をして(たいがい滝とか山とかで修行します)新しい技を編み出し、強敵との闘いに勝つ……という展開があります。
確かに、特訓の末に新しい技を身に付けるというストーリーは、読んでいて面白いものなのでしょう。努力・友情・勝利という少年ジャンプの法則にも当てはまるものですし。
ただし、これはあくまでもフィクションの世界でのみ通じるものです。
実際に、新しい動きや技を身に付けることがあるとしたら……それは、試合に向けた準備の段階ですね。まだ試合まで時間の余裕がある時には、新しい技術の習得を試みるケースもあるかもしれません。
しかし、試合の直前の時間まで新しい技術の習得に当てるというのは……これは戦略的に間違っている、と言わざるを得ません。
試合の直前になったら、普通はトレーニングの量を落として疲労の回復に務めます。もちろん、本番の日をベストの体調で迎えるためです。
この時期のトレーニングはというと、もっぱら軽いシャドーやサンドバッグ打ちなどでしょうか。あとはイメージトレーニングですね。自身がどのように動くかをイメージする、これは大事です。
そんな時に、新しい技術の導入はオススメ出来ません。慣れない動きをすると、これまで出来上がっていたものもブチ壊しにしてしまう恐れがあるからです。新しい技術は、余裕がある時に行うべきでしょうね。
アニメの何とかボールなどで見られる、特訓のため重い服を常に身に付けている……これまた、現実ではあり得ないものです。
重い負荷をかけた日常生活は、確実に体にとってマイナスとなります。本来、トレーニング後は体を休ませる必要がありますが……重い服を着ていると、体を休ませることが出来ません。体から疲れが抜けず、結果的にオーバーワークと同じ状態になります。
しかも、重い服を着るというのは急激に体重が増えた状態と同じです。急に太り出した人は膝や足首などを痛めやすくなりますが、重い服を着た人も同様です。ただでさえ格闘技のトレーニングで体を痛めつけているのに、トレーニング後も重い服を着て体に負荷を掛け続ける……これはマイナス以外の何者でもないでしょうね。
もっとも、格闘家はトレーニングの際に重い鉛入りチョッキを着ることはあります。しかし、それはあくまでトレーニングの負荷を高め、体を限界まで追い込むためのものです。トレーニング終了時は、ちゃんと脱ぎます。
これは本当に何とかした方がいいな、と思うものもあります。それは「トレーニングは長時間やるのがいい」という素人の思い込みですね。迷信といってもいいでしょう。
だいぶ前の話ですが、とある番組に山本KID徳郁さんが出演されていました。その時「練習はどのくらいやってるの?」と聞かれ「一日四時間くらいやってますね」と答えました。
すると司会者は「四時間? 亀田兄弟なんか八時間くらいやってるらしいよ」などと言ったのです。KIDさんは苦笑しながら「俺は集中してやってますんで……」と答えましたが、これは観ていて呆れてしまいましたね。
今のアスリートにとっては常識ですが、トレーニングは長くすればいいというものではありません。むしろ、ガチのトレーニングを八時間もやっていたら……恐らく、体は壊れるでしょうね。少なくとも、私の体は確実に壊れます。
トレーニングは長くやらなくては駄目だ、という考え方は完全に間違いです。時間の長さでトレーニングの強度を判断するのは、やはりスポ根マンガの悪影響でしょうね。
むしろ格闘家にとって重要なのは、トレーニングを終えた後もしくはトレーニングをする前の日常です。体にいいものを食べ、よく眠り、疲れた体のケアに時間と金を費やす……これは実に大切ですね。
そういった部分を無視し、トレーニングに費やした時間の長さのみ(しかも自己申告のため本当かどうかはわからない)を評価の基準にする……一般の人も、こうした考え方からはそろそろ卒業すべきだと思いますね。時間の長さではなく、質を重視する……これは色んな業界で当てはまるのではないでしょうか。
先ほども書きましたが、私はフィクションの存在を否定するつもりはありません。ただ、リアルとフィクションの違いだけは、きっちり認識しておいてもらいたいだけですので。




