あなたは何を信じますか?
私事ではありますが、このところ非常に忙しく、なろうの作品の更新が全てストップしていました。最近になって、ようやく執筆を再開させましたが……なかなか思うようにいきませんね。
そんな訳で今回は初心に返りまして、私が一番最初に格闘技の道場に入門した時のことをお話しします。まあ、これはかなり特殊な例ですので……恐らく参考にはなりにくいかと。ただ、これを読んでいる皆さんが、当時の私のような体験をすることがないように願いたいですね。
私が格闘技を始めたのは中学二年の時です。流派の名前は敢えて書きません。分かる人には分かるものと思いますので。
その格闘技ですが、当時は派手に活動をしていたようです。創始者いわく「我々は路上などのルール無き場での強さを追求している。ボクシングや空手のようなスポーツ格闘技とは根本的に違う、本物の武術だ」とのことです。
さらに「我々の流派は、極めれば触れるだけで人体を内部から破壊できる奥義を使えるようになる」とも言っていました。いかにも、なろう読者の好きそうな宣伝文句ですよね。
今の私なら、こんなものには関わらなかったでしょう。しかし、当時の私は中学二年生でした。完璧なる中二です。さして考えることも出来ぬまま、ホイホイと引っ掛かってしまいました。
さて、いざ入門しようとした時……私は、とんでもないことを聞かされます。
「入会金と、月謝三ヶ月分は前払いね。あと、どんな理由があろうと、いったん納めたお金は返せないからね」
はい? と私は思いました。三ヶ月分て何それ? 何でそんなに前払いしなきゃならないの? しかも、返せないってどゆこと?
しかし、当時の私は無知でした。まあ、そんなものなのだろう……と勝手に納得し、両親に頼み込んで、どうにかお金を出してもらったのです。
余談ですが、まともなジムや道場であるなら、このようなシステムは絶対にありません。入会金と一ヶ月分の月謝、あとはスポーツ保険でしょうか。それ以外に何かと理由を付けて金を出させようとする道場には、近づかない方が無難でしょうね。
さて、めでたく格闘技を始めた赤井少年ですが……早速つまづいてしまいました。
習っていることといえば、よく分からない掌底打ちのような技ばかり。しかも鏡の前でひたすら繰り返すだけです。はっきり言って、何の意味があるのか分かりません。しかも道場にはサンドバッグが無かったし、ミット打ちのような対人練習もありません。したがって、自分の技が威力があるのか……それすら分からない状態でした。
他にも理解できなかった点があります。道場に入る時、大きな声で「押忍!」と言わなくてはなりません。空手の道場でもないのに、なぜ「押忍」と言わなくてはならないのか……従来の武道を否定していたはずなのに、どうして「押忍」と言わなくてはならないのか。私には理解不能でした。
さらに、私にとって厄介なことがありました。当時はバッタ物の織田裕二みたいな風貌の指導員がいたのですが、この人がとにかくうるさかったのです。
「赤井! もっと大きな声出せ!」
「てめえ、人が話してるのにヘラヘラ笑ってんじゃねえよ!」
「ガキのくせに、駅でタバコなんか吸いやがって! いい加減にしろ!」
まあ、言われている内容を見ればお分かりかとは思いますが……怒鳴られるようなことをしでかしていた私が悪いのです。しかし当時の私は、説教に耐えることが出来ませんでした。
やがて、私はこの格闘技を辞めました。
今になって、この時のことを振り返ると……私に根性が無かったのは間違いありません。また、私がどうしようもない礼儀知らずのバカガキであったことも確かです。怒られて当然の人間でした。
ただ当時の私に根性があり、歯を食いしばってこの某格闘技を続けていたとしたなら……はっきり言って、ものすごく無駄な時間を費やしていたと思うんですよね。
私はその後、空手を始めました。顔面パンチ無しのフルコンタクト空手です。しかし、空手の練習は本当に合理的でした。基本の動きや型などには、首を傾げてしまう部分もありましたが……サンドバッグを叩いたり、キックミットを蹴ったりという練習は新鮮でしたね。さらに対人の受け返しやスパーリングといった実戦的な練習は、キツいし痛い思いもしました。ですが、その分だけ確実に強くなっている実感は得られましたね。某格闘技を習っている時には得られなかったものです。初めから、空手をやっておけば良かったと思いましたね……もっとも、空手も長続きはしませんでしたが。
皆さんにも知っておいていただきたいのですが、格闘技を始める前にはしつこいくらいの情報収集が必要です。特に「触れただけで相手を倒せる」というようなオカルティックな技を売り物にしたり、既存の格闘技を否定するような発言が多いような流派には気を付けてください。個人的には、そういった流派には近づかないで下さいと言いたいところですが……興味があるのでしたら、あえて止めはしません。
ただ、世の中には嘘を吐く人間が多いという事実は覚えておいて下さい。さらに、本気で「私は触れただけで相手を倒せる達人である」と思っている脳内達人も存在しています。まあ結局のところ、何を信じて何を信じないかはあなた次第……としか言い様がありませんが。
蛇足になりますが、バカガキだった私をさんざん叱り飛ばしたバッタもんの織田裕二さん似の指導員は、その後逮捕され新聞に名前がデカデカと載りました。正直、切ないものを感じましたね……。




