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格闘技、始めませんか?  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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街に潜む強者だって!

 格闘技の道場やジムに行くと、必ず一人は世間には知られていない強者がいたりします。

 仕事は普通のサラリーマン、あるいはコックさんだったり職人さんだったり……とにかく、昼間は普通のおじさん、見た感じも普通のおじさん。しかしその実力はプロ顔負け! 下手なプロ選手など秒殺! という人がいるのですよ、皆さん。

 私の知る限りでも、そういう方は数人います。今回は、その内の一人をピックアップし、その方の武勇伝および奇行を語っていこうかな、と思います。


 本名は書けないので(本人に許可をとっていないため)、ここでは仮に早田さんとしておきます。

 早田さんは、よそのジムの方ですが、たまに出稽古に来られます。普段は営業マンをしている四十四歳のお父さんですが、格闘技のキャリアは三十年を超えています。体重は六十キロそこそこですが、打撃、寝技ともに高いレベルの方であり、私も何度か教えていただいたことがありました。四十四歳の今も、若いプロ選手の人たちと共に激しい練習をしています。

 仕事をきちんとこなし、趣味(?)の格闘技は非常に高いレベルでの攻防を楽しみわ、家庭では良き夫であり父であり(もしかしたら違うかもしれませんが)と、人生順風満帆な方ですが……実は恐ろしく天然な部分をお持ちの方です。

 まず、早田さんは恐ろしいくらいテンションが高いのです。

 練習している最中、早田さんは良く喋ります。ひどい時など、ラッパーのように喋り続けます。しかも早口です。さらに、練習中はマウスピースをはめています。そのため、何と言っているのかわからないこともしばしばです。

 で、よく聞き取れないので聞き返すと……早田さんは若干、いやかなり機嫌が悪くなります。この前、私が聞き返したら、腕を掴まれ、関節技をかけられそうになりました……。

 なので、基本的に早田さんとの会話は……聞き流しています。

 しかし、聞き流したら聞き流したで「お前、人の話聞いてんのかー!」となるわけで……非常に難しいですね。最近、やっと付き合い方を学びましたが。



 早田さんは、たまにワケわからんことを言い出します。

「やはり、走り込みは必要だな……刃物を持った相手や多人数が相手の時、一旦は走って逃げ、そして相手のスタミナを奪うのも手だ……」

 もう一度言います。この人は四十四歳です。天才バカボンのパパより年上なのです(天才バカボンを知らない方は調べてみてください)。職業はサラリーマンです。家族がいます。

 それでも、普段から殺し合いを想定しているのです……。

 しかも、どういった会話でその発言が飛び出したかと言うと……格闘家は走るべきか否か? 格闘技に必要なスタミナとは? という話を、私と別の人がしていた時に、いきなり入って来て語り出したのです。それはちょっと違うだろ……とは、さすがに言えませんでしたが。


 一度、若い女の子(佐○木希に似た感じの娘だったように記憶しております)が見学に来たことがあります。その時の早田さんは、異常な張り切りようでしたね……トレーナーでもないのに練習を仕切り出し、オレは強いぞ、的なアピールをし始めて大変でした。しかも、何を思ったか、体格差が二十キロ以上ある私を寝技の実験台に……皆の前で私に技をかけて、「体格差があっても、関節技でギブアップを奪えるんだ」と技の説明をしてました。つーか、あんた出稽古に来た人だろうが! トレーナーでも何でもないだろ! とツッコミたくて仕方なかったですね、本当に。

 しかも、練習が終わった後、早田さんは凄まじいテンションの高さで女の子に話しかけ、ラッパーのような勢いで喋り続けました……しかも、マウスピースを付けたまま。女の子はドン引きです。この時ばかりは、奥さんにチクるぞ! と怒鳴りつけたい気持ちを押さえるのに精一杯でした……。

 言うまでもないことですが、女の子は入会しませんでした。それは早田さんのせいだ、と私は今も信じています。


 まあ、未だに若い女の子が見に来ると張り切る、そんな肉食な部分があるからこそ、早田さんはプロ顔負けの強さを維持していられるのかもしれませんね。なんやかんや言って、私はそんな早田さんが出稽古に来ると、顔がほころんでしまいます。






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