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格闘技、始めませんか?  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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演武と実戦の違い

 たまにテレビなどで、古武術などの演武を見ることがあります。また、護身術も演武を公開することがありますね。基本的に、ああいった流派は試合を禁止している所が多いので、演武にて自分たちのやっていることをアピールするのでしょう。また、発表の場があるというのは、一般会員や道場生たちにとっても励みとなるでしょうし。

 ただ、この演武というものはなかなか厄介な部分があります。見る側の知識や格闘技経験によって、印象ががらりと変わってしまうんですよね。

 たとえば以前「○○の演武を見たが、他の格闘技とは違った迫力を感じた」というコメントを見ました。もちろん、何かを見てどのような感想を抱くか、それは人それぞれです。

 しかし、一般の人は演武というものを、根本的に勘違いされている部分があるんですよね。それは、演武はあくまでも筋書きが決まっているということです。

 こんなことはいちいち言うまでもないでしょうが、リアルの闘いでは、相手が何を仕掛けてくるか分かりません。その時、果たして演武と同じ動きが出来るかどうか……個人的な意見を言わせていただくなら、まず無理でしょうといわざるを得ませんね。

 極端な話ですが、人間は本気の闘いになったら何をして来るか分かりません。演武のように綺麗な動きで向かって来るわけではありませんし、場所も畳の上ではありません。何を仕掛けて来るか分からない相手に対し、演武で披露したような技で撃退するのは不可能でしょうね。

 もし、それが出来る人がいたとしたら、グラップラー刃○の渋川剛毅のような本物の達人でしょう。ただ、それを確かめるのもまた不可能に近いですが。実際に、暴漢に襲わせるわけにもいきませんし。


 格闘技について語る時に言われるのが、「スポーツ化することにより、実戦性が失われる。だから、我々はスポーツ化をしないのだ」などという意見を聞くことがあります。さらには「スポーツ格闘技は、しょせんテクニックの見せ合いだ」などという暴言を吐いた武術家もいたそうです。

 まあ人それぞれ、色んな意見はあるでしょう。ただ一つ言えるのは、スポーツというものを舐めない方がいいですよ……ということです。

 例えばサッカー選手にしろ野球選手にしろ、スポーツ選手は普段から体を鍛え抜いています。ことフィジカル面に関する限り、一般人など比較になりません。パワー、スピード、スタミナ……そういった、闘いに必要な要素が常人とは比較にならないレベルです。

 これがラグビーやアメフトのような激しいコンタクトスポーツになると、もはや格闘技をかじった程度の人間では絶対に勝てません。彼らの基礎体力は、常人など比較になりません。さらに、日本人でも百キロを超えるような選手がごろごろいます。体格からして、常人では相手にならないでしょう。

 また柔道やレスリングなどといった競技は、格闘技というよりスポーツという見方をされることが多いかもしれません。しかし、以前から何度も書いていますが、柔道やレスリングはまぎれもない格闘技です。

 特に全国大会に出るような選手たちの鍛え方は、半端なものではありません。私は某大学レスリング部の軽めの練習メニューを体験したことがありますが、ウォーミングアップの時点でキツいと感じましたね。ましてや試合前の練習など……想像するだけで恐ろしいですね。そんな厳しい練習で養われた体力や精神力は、それだけで凶器といえるでしょう。


 柔道やレスリング、ボクシングや空手といったスポーツ化された格闘技に付き物の練習が、いわゆるスパーリングです。演武や約束組手(決まった攻防を繰り返す練習法)が中心となる古武術や護身術では、まず行われない練習のようですが……このスパーリングは非常に大事です。

 スパーリングは、生きた人間を相手にした練習です。当然、相手は動きます。こちらの技を防ぎますし、反撃もしてきます。時には、こちらの予想も付かない攻撃をしてくることもあります。

 こうした練習を経て、「闘いとは、思い通りにいかないものである」という重要な事実を学ぶことが出来ます。特に体の大きく力の強い人と闘うと、どれだけやりづらいか……それは、実際にスパーリングをしてみないと分からないことですね。

 格闘技をやっている人間の間では常識ですが、十の練習をするより一のスパーリングをする方が、より多くを学べます。相手の攻撃に対する反応。動き回る相手に対し、いかにして技を当てるか。相手の技の痛みに耐え、きっちり反撃する。相手の前進に合わせ、きっちりカウンターの攻撃を食らわす……などなど。こうした動きは、スパーリングのような実戦形式の練習なくして学ぶことは出来ません。

 もっとも、このスパーリングだけは実際に体験してみないと分からない部分があります。特にマス・スパーリング(攻撃を寸止めするスパーリング)ではない、ガチのスパーリングのキツさは体験しないと分からないですね。皆さんにも、ぜひ体験していただきたいものです。


 スパーリングはともかくとして、実際の闘いは演武とはまるで違います。本気で向かって来る相手に対し、約束された攻防しか知らない人間の技が通用するとは思えません。

 スポーツ化することで実戦性が失われ、本来の武術とはかけ離れたものになる……という意見はよく耳にします。私は、そうした意見を全て否定するつもりはありません。しかし、演武や約束組手に練習時間の大半を割いている流派が特別に強い、とも思いません。少なくとも皆さんには、演武の派手さだけで格闘技を判断して欲しくはないですね。







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