わかりにくい寝技
二〇一七年になりました。私は去年の年末から今年にかけて、様々なトラブルが重なり……約二週間ほど、全く顔を出せませんでした。なろうで三年以上活動してきましたが、こんなことは初めてですね。
それはともかく、去年の大晦日には総合格闘技のイベントが放送されました。私は忙しく、観ることが出来なかったのですが……さすがに五時間超は長すぎではないかと思いましたね。いくら格闘技好きの人たちでも、五時間ぶっ続けの殴り合いには付いて行けない気がします。
まあ、その辺りのことはきちんと計算し、視聴者を逃がさない編成になっていたのでしょう。少なくとも、地上波ではほとんど観る機会のない総合格闘技の放送ですので、個人的には今後の展開には期待しています。
さて、その総合格闘技において用いられる技で、もっとも分かりにくいのは寝技でしょう。打撃の攻防ならば素人目にも分かりやすいですが、寝技の攻防となると……一般人には何のことやら分からないのではないでしょうか。というわけで今回は、寝技のちょっとした豆知識について語ります。まあ、こんなのは基本中の基本ですが、寝技を知らない人には観戦の役に立つかもしれません。
まず勘違いされている人が多いのが、関節技についてです。
プロレスを見ていると、関節技を掛けられたプロレスラーが苦悶の表情を浮かべながら、ロープまで逃げる。どうにか這っていき、ロープを掴む……するとレフェリーが二人を分けて仕切り直し、という展開がありますね。
あるいは、テレビの「女性でも使える護身術」のようなコーナーで、先生に関節技を掛けられた芸人が「いててて!」と叫ぶシーンを思い浮かべる人もいるかもしれません。
しかし、どちらも関節技の真の姿ではありません。関節技は本来、打撃技と同じく瞬間で人体を破壊する技です。ガッチリ関節技が極まれば、腕なり足なりを折るのに一秒もかかりません。本当に一瞬で、関節を壊すことが可能です。
総合格闘技の試合では、タップ(関節技や絞め技を掛けられた時、降参の意思を現すため相手の体を軽く叩く行為)が間に合わず腕を折られてしまうケースも珍しくありません。
なお、総合格闘技でも一見すると関節技が極まっているようなのに、タップしないで動き回るケースもありますが、あれは極めるポイントをギリギリでずらしているからです。
プロの試合ともなると、お互いに極めるポイントを知っています。関節技を掛けられた側は、そのポイントを動ける範囲で僅かにずらしつつ、どうにかして技を外そうと、必死で動いているのです。
また、関節技や絞め技は実際の喧嘩では使えない、という意見を聞いたことがあります。組み付いた瞬間に、隠し持った武器の攻撃を受ける可能性があるから……というのが、その理由らしいです。
この意見、もっともな部分はあります。ただ、関節技が瞬間破壊技であることを理解した上で言っているのかな、という疑問はありますね。一瞬で人体を破壊できる関節技は、ガッチリ極まれば隠し武器を出す前に腕や足をへし折ることが出来ます。
また、複数の人間と相対した時、手近な者の腕を立ち関節技で極めつつ振り回す……という戦法もあるそうです。敵の体を楯の代わりにする、という戦い方のようですね。ただ私は使えませんし、実戦において使えるのかは不明ですが。
いろいろ書いてきましたが、基本的に闘いは立ち技で仕留めるのが理想である、とは思います。しかし、絞め技や関節技を知っておいて損はないでしょう。
蛇足かもしれませんが、ロシアの軍隊格闘技の練習中の映像を観たところ、絞め技や関節技なども使っていました。
以前、寝技のスパーリングをしていた時のことです。私は、プロもしくはプロレベルの人とばかりスパーリングをしていました。
その後、六十キロ前後の一般の人とスパーリングをしたのですが……驚いたことに、軽く掛けたはずのフロントチョークで相手が降参してしまったのです。いや、軽くというと語弊がありますが、少なくとも私は極まるとは思っていなかったのです。なので、アレ? と面食らいました。
誤解されては困るのですが、私は別に「俺って凄いでしょ」と言いたいわけではありません。むしろ、凄いのはプロの人たちです。私のフロントチョークは、プロの人たちには全く効かなかったのですから。普通の人にかけると、あっさり極まるはずの絞め技が、上手い人には通用しない……これ、実は有りがちな展開なんですよね。
寝技の上手い人は、同時に絞め技を防ぐテクニックもちゃんと知っています。一見すると、絞め技が掛かっているように見える状態……しかし、プロの選手は技のポイントをずらし、極まらないように出来ます。
そうなってくると、寝技の攻防は一味違うものになりますね。「こいつの技は効かないから、あえて絞めさせたままにしておこう」という展開もあります。事実、絞め続けていると腕が疲れるんですよね。効かない絞め技をわざと掛けさせておいて相手のスタミナを消耗させる……という作戦もあります。
いろいろ書きましたが、総合格闘技の寝技の攻防において、基本的には上になっている方が有利である……しかし、下の体勢から仕掛ける技もあるよ、ということを覚えておけば、観戦において特に問題はないかと。この下の体勢からの技というのは、なかなか難しいですが、極まれば気分はいいですね。また別の機会にでも、詳しく説明したいと思います。




