若干、面倒くさいかもしれない話
今回は、格闘家に特有の意識について語ります。一般人が格闘技をやっている人に対し、軽い気持ちで投げかける言葉……それは時として、余計なトラブルを招くことにもなりかねません。
かつて私の知り合いに、金山さん(仮名です)という人がいました。その人は極真空手の茶帯であり、百キロを超える体格(もちろん筋肉質です)の持ち主です。茶帯ではありますが、単純な強さならば黒帯の人たちをも上回っていたのではないか、と思われます。ひょっとしたら、今は黒帯を取得しているかもしれませんが。
この金山さんですが、勤めている会社に、少林寺拳法を五年ほど習っているという人が来たそうです。すると、社内の誰かがこんなことを言いました。
「なあ、彼と金山とどっちが強いんだ?」
さらに、他の人間もそれを囃し立てたそうです。結果、二人は軽く立ち会うことになりました。
しかし、その勝負(?)は一瞬にして終わったそうです。金山さんの百キロを超す体格から放たれた下段回し蹴り一発で、少林寺拳法をやっていた人は戦意を喪失したとか。
私は、空手の方が少林寺拳法より強いなどと言うつもりはありません。また、この金山さんの態度には明らかに問題があると思います。
私には、その「対戦相手」の人がどの程度のレベルなのかは分かりませんが、恐らく「一般人よりは強い」というレベルではないかと。
一方の金山さんは百キロを超す体格であり、空手の茶帯クラスの実力がある人です。ならば、その少林寺拳法をやっていたという相手がどの程度の実力なのかは分かったはずです。そんな人を、下段回し蹴り一発でのしてしまうというのは……感心できる行動ではないですね。
ただ、格闘技をやっている人間に対し、軽い気持ちで「○○とどっちが強いんだ?」などという言葉を投げかけるのも、誉められた行為ではありません。大人な人なら、笑って流せるでしょうが……血の気の多い若い人ですと「だったら、○○とこの場でやりましょうか」などと言い出すような展開になることもあります。くれぐれも、発言には気をつけてください。
余談ですが、空手家の下段回し蹴りの威力は凄まじいものがあります。キックボクサーのローキックとは、似て非なる部分がありますね。特に空手家の、奥足(構えた時に奥の方にくる足です。右利きの人が構えた場合、右足が奥足となります)を狙う下段回し蹴りは強烈ですね。いいのが一発入っただけで、普通の人なら崩れ落ちること間違いなしです。
皆さんにも知っておいていただきたいのですが、格闘技に打ち込んでいる人は皆、プライドを持って日々トレーニングに励んでいます。
そういう人たちに対し、失礼なことは言わない方がいいでしょうね。たとえ軽い気持ちで放った言葉だとしても、言われた当人が思わぬ反応をすることもあります。
前述の金山さんにしても、普段から肩で風切って歩くようなタイプではありませんでした。ただ、周りから囃し立てられ煽られ、スイッチが入ってしまったのでしょう。自身の学んでいる格闘技に対するプライドを傷つけられた……そう感じた部分があったのかもしれません(周囲にそんな意図はなくても)。
前にも書きましたが、たまに酔っぱらうと無茶苦茶なことを言い出す人がいます。私は以前に「おい赤井、俺は昔、剣道をやってたんだ。棒があれば、お前には負けないぞ」などと言われたりしたことがあります。私の周囲が特別なのかもしれませんが。
まあ、それくらいならいいのですが……中にはプロボクサーに向かい「ボクシングは楽だよな。素手で殴り合うわけじゃないし、蹴っ飛ばされたりもしないんだから」などと言った人がいたとか。あまりにも失礼な話ですよね。相手によっては「楽かどうか、お前やってみるか?」ということにもなりかねません。
こういう上っ面の知識だけで格闘技を語る人、意外といるんですよ……もちろん数は少ないですが。まあ、仲間内で飲み屋で語り合う分には問題ないですが、こういうことを格闘家に面と向かって言うというのは、あまりにも失礼ですね。
一つ言えるのは、格闘技に関して中途半端な知識もしくはオカルティックな知識しかないようなら、下手に語らない方がいいです。
もちろん、色んなことを質問する分には構わないですが……したり顔で中途半端な知識を語ると、思わぬ事態を招く可能性があります。まあ、常識的な会話をしていれば問題ないでしょうが。
念のため言っておきますが、ほとんどの格闘家は少々失礼なことを言われたからといって、いきなり暴力を振るったりはしません(例外はありますが)。だからといって、軽い気持ちで下手な発言はしないでください。
もう一度書きますが、格闘家たちは皆、自身の格闘技術に誇りを持ち、日々鍛練しています。その誇りを傷つけるような発言は慎んでいただきたい……と、思う次第であります。




