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格闘技、始めませんか?  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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決して真似しないでください、というテロップは大事です

 前回に続き、今回もまた練習法について語らせていただきます。

 最近、特に思うことなのですが……世の中には、トレーニングに関する知識がまるで無い人がいるかと思うと、一方では偏見に凝り固まっている人もいたりします。偏見の最たるものはウエイト・トレーニングに対するものかと思いますが……。

 たとえば、格闘技のチャンピオンになったA選手がいたとします。このA選手は、ウエイトトレーニングを一切やりません。すると「A選手はウエイトトレーニングをやらない。だからウエイトトレーニングは格闘技に必要ない」と言い出す人が必ず現れます。

 この意見は完全な間違いである……とは言い切れませんが、正しい意見でないのも確かです。

 まず、このA選手がウエイトトレーニングをやらないからといって、ウエイトトレーニングそのものの効果を否定する……というのは短絡的に過ぎますね。例えるなら、エビアレルギーの人がエビを食べて気分が悪くなった、だからエビは毒であると決めつけるようなものです。

 トレーニングの効果は、人によって個人差があります。また一流の選手ともなると、自分に合った独自のトレーニング方法の一つや二つは知っています。その独自のトレーニング方法がウエイトトレーニングよりも効果が高い(あくまでもA選手にとって)というだけの話です。

 A選手がウエイトトレーニングをしない理由、そこには本人にしか分からない様々な試行錯誤があり、過程があって結論がある訳です。A選手の場合、ウエイトトレーニングより独自のトレーニング法の方が効果がある(あくまでA選手にとっては)ことを試行錯誤を経て発見した訳です。決して、ウエイトトレーニングを否定している訳ではありません。そのあたりが、ごっちゃになっている人も多いようですが。

 それはともかく、過程の部分を無視して結論のみに注目する……これは、明らかに間違った考え方でしょうね。


 ちなみに、こうした名選手の独自のトレーニング法がテレビや雑誌などで紹介されることがあります。しかし、これは真似しない方がいいでしょう。少なくとも、一般人が形だけを真似したところで……得られるものはほとんど無いと思います。

 何故かと言いますと、こうした独自のトレーニング法は……最大の効果を得るためには、トレーニングのコツを知らねばなりません。どの部分にどのように力を入れるか、逆に力を抜くか。速い動作か、遅い動作か。どのくらいの時間をかければいいのか、などなど……。

 しかし、一般の人の中にはベンチプレスのような簡単な動作ですら、間違ったやり方をしている人がいます。ろくに体を動かした事のない人が、独自のトレーニング法を真似したとしても、効果を引き出せるとは思えません。

 そもそも名人や達人と呼ばれるような人たちは、我々とは根本的に違う人間です。そんな人たちのトレーニング法をそのまま真似たところで、一般人には全く実にならないでしょう。


 ついでに言いますと、私は武術の名人や達人と呼ばれているような人たちの逸話を、ほとんど信じておりません。一人で数十人を倒した、素手で鎧ごと打ち抜いた、銃弾を躱した、などといった信じがたい武勇伝……正直、全てを信用しろというのは無理があるように思います。

 まあ、百歩譲ってそれらが真実であったとしましょう……そんな怪物のような人たちのやっているトレーニング法が、果たして我々のような一般人に真似できるものなのでしょうか。私は無理だと思います。

 古の名人や達人の武勇伝を信じ、その教えを絶対視し、他の格闘技や科学的トレーニングを「あれはスポーツ競技レベルだから」などと言う人もいます。まあ、他の競技や他流派を馬鹿にしている時点で武術家としてどうなのか、という気もしますが……この際、その点については何も言いません。

 そういう人たちの意見は正しいのかもしれませんが、我々のような一般人にとってどちらが有益なのか。また、ご自身の目指すものは何なのか……何十年も費やして銃弾を躱せるようになりたいのか(私は不可能だと思いますが)、それとも生活のスパイスとして格闘技に取り組むのか、そのあたりは一度よく考えてみるべきでしょうね。


 最後に、柔道やレスリングのトップレベルの人たちはまさしく超人です。実際にスパーリングをすると、何をされているのか分からないうちに投げられ、地面に倒されている事もしばしばです。

 また、ボクシングや空手のトップレベルの選手も同様です。こちらの攻撃を完璧に見切り、最小限の動きで躱す。または、こちらの攻撃動作と同時にカウンターの攻撃を入れる……本当に、魔法でもかけられているかのような動きですね。

 彼らは我々のような凡人から見れば、充分に達人と呼べる存在かと思います。皆さんにも是非、そのあたりを体験していただきたいですね。






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