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ドラマの『トリック』は好きです

　四月に入り、暖かくなってまいりました。これからは、薄着になる機会も多いことでしょう。という訳で、この時期はトレーニングジムが混んでいます。ウエイト・トレーニングをやるのも一苦労ですね。正直、人が多くて若干のうっとおしさすら感じております……もっとも、この増えた分はすぐに減ってしまいますが。

　さて、先日のことです。某国営放送局にて、筋肉を付けるための新常識……のようなタイトルの番組が放送されておりました。私は、どのような内容なのかと思いチェックしてみたのですが……内容のあまりの凄さに衝撃を受けました。

　その衝撃的な内容はというと――

●筋肉を大きくしたければ、回数は十回前後。

●筋トレが終わった三十分以内に、たんぱく質と糖質を摂取する。

●やり過ぎないのも大事。

　などなど、ですが……私は本当に驚きました。二〇一六年という時代に、こんな知識がさも新しい発見であるかのように言われている事実には、本当に唖然とさせられましたね。

　ちなみに、ここで言われている事は間違いではありません。月刊『アイアンマン』や月刊『マッスル＆フィットネス』（両方ともウエイトトレーニングの専門誌です）などの雑誌には、二十年以上前から書かれていた事です。恐らく、アーノルド・シュワルツェネッガーが現役のボディービルダーだった時代には、既に常識となっていたものと思います。

　テレビの健康番組や通販番組などを観ればわかりますが、巷には様々な健康情報が溢れています。痩せるため、運動機能を高めるためなどいった情報が次から次へと出てきます。しかし、眉唾な物も少なくありません。

　また、テレビで紹介されるものの中には……明らかなトリックを使ったものがあります。例えば、某ライザ○プの痩せる前と痩せた後の比較映像ですが……まず、あのＣＭに出ている人の多くが日焼けをしていますよね。同じ体格でも、日焼けをしていると僅かに細く見えます。これは私などが語るまでもないでしょうが……さらに、光の当て方や撮影する角度によって筋肉が浮き出て見えたりもしますし、そもそも彼らは撮影前にパンプアップをしています。ちなみにパンプアップとは何かと言いますと……軽い筋トレをする事により、一時的に筋肉を浮き出させて見える現象の事です。まあ、これは以前にも書きましたが……。

　さらに、ウエストの数値などに至ってはいくらでも誤魔化しが出来ます。お分かりでしょうが、腹を膨らませたり引っ込めたりする……それだけで、数値そのものは簡単に変化します。

　通販番組などを見ていると、「付けるだけで腹筋何百回に相当する運動量のベルト！」という謳い文句を聞くことがあります。しかし、これもまた怪しいと言わざるを得ません。

　腹筋はやり方によって鍛える部分が違ってきますし、そもそも何百回もやる意味があるのでしょうか？　さらに言うなら、普通に腹筋をして二十回ほどしか出来ない人に、何百回もの腹筋運動に相当する刺激を筋肉に与えてしまったらどうなるのでしょうか……確実によくない影響があるでしょうね。

　仮に、私がここに書いた事が全て間違いであり、ベルトは腹筋に効果があるのだとすると……今度は別の問題が生じます。筋肉というものは、一部分だけを極端に発達させるとバランスが悪くなり、歪みが生じます。その結果、腰痛や肩こり、果てはヘルニアなどの原因になることもあるそうです。全身の筋肉をバランスよく発達させる、これまたウエイト・トレーニングをやる者には常識なのですが。

　また、健康情報番組などでストレッチが行われる事もありますね。まずは、出演者に前屈をさせます。次いで、何やら奇妙な体操なりマッサージなりを施した後にまた前屈をさせます。結果、「うわあ、柔らかくなってる！」というパターン……一度は見たことがあるでしょう。

　しかし、これはもう語るのも馬鹿馬鹿しいようなトリックです。皆さんもやっていただければ分かりますが……前屈は二度やれば、二度目に行った方が確実に柔らかくなります。これは、日頃からストレッチをやっている人間からすれば常識なのですが……。

　私が何のために、こんな事を書き連ねたのかと言いますと……世の中には、健康に関する情報が溢れています。しかし、いい加減なものも少なくありません。嘘や誤魔化しの情報もあります。そういった情報に惑わされた挙げ句、訳のわからない情報や商品にお金や時間を浪費してほしくないのですよ。

　人間には「楽をしたい」という願望があります。それ自体は否定しませんが、そこにつけこもうとする輩は大勢いる事を忘れてはなりません。私はトレーニングの専門家ではありませんが……そんな私から見ても、つまらない嘘や誤魔化しの情報が溢れているのです。くれぐれも、つまらないものに引っ掛からないようにして下さい。

　蛇足ですが、なろうにも意味不明のトンデモ理論を発表している人はいます。ただ、それにより作者の方が得するのはブクマや評価ポイント程度のものですので、私はあえて何も言いませんが……。