ストリートファイター
かつて……ゲームセンターにひとつのゲームが登場しました。『ストリート・ファイター2』(以下スト2と略します)というタイトルのそのゲームは、瞬く間に世界に広まり……今の対戦格闘ゲームの礎となったと言われています。もっとも、そのあたりの事情はあまり詳しくは知りませんが。
空前の大ブームとなった『スト2』ですが……残念ながら、このゲームがきっかけとなって格闘技を始めたという人の話は聞いたことがありません。やはり、ゲームとリアルとの間には越すに越されぬ境界線があるようですね。たまに凶悪な事件があった時「犯人は暴力的なゲームを好んでおり、それが引き金となったのでは……」なるコメントを聞く事がありますが、その割には格闘ゲームから実際の格闘技に入った話というのは聞かないですね。まあ、これ以上はあえて語りませんが……。
さて今回は、その『ストリート・ファイター』というタイトルの映画について語らせていただきます。一応は格闘技の映画と言っていいのではないかと思いますので……。
前述のゲームが元になって作られた映画は数本あるようですが、まずはジャン・クロード・ヴァンダム主演の『ストリート・ファイター』について語らせていただきます。
いきなりですが、この映画の主題歌を担当しているのが……片割れがかつて覚醒剤で逮捕された某デュオです。もっとも覚醒剤についてここで語るのは、テーマ的に違うので止めておきます。ただ、某デュオの人たちにとって……この映画に関わっていたという事実はどのような位置付けなのだろうか、という疑問はありますが。
それはともかく、この作品は……世界征服を企む悪の独裁者バイソン将軍とガイル大佐の闘いを描いたアクション映画です。ラウル・ジュリアと言えば、既に故人ですが……アダムス・ファミリーのお父さん役が印象的でした。
そして肝心の映画の出来ですが……私は好きです。しかし、皆さんに手放しでオススメする事は出来ないですね。こうしたデタラメ映画に対し、耐性のある人以外は観るのが苦痛になるかもしれません。ビール片手に、気軽な気分で観るにはちょうどいいかと思います。
強いて見所を挙げるのならば……俳優たちのコスプレ、ザンギエフを演じた人の筋肉、最後にちょっとだけ披露されるヴァンダムの見事な足技、くらいでしょうか。ただ、リュウ役の人とチュンリー役の人はかなり動けます。さらに、チョイ役で「怪鳥」ベニー・ユキーデ(マーシャルアーツのチャンピオンだった人です)も出てますが……この人は油断してると見逃します。
さらに、歌手のカイリー・ミノーグがキャミイ役で出演しています……正直、何故この人を起用したのか、そこが一番の謎です。
しかし世の中には、スト2が出るより前に『ストリート・ファイター』という邦題の映画が存在していました。チャールズ・ブロンソン主演のこの映画、1975年に公開されています。こちらもまた、分かる人には……というタイプの作品ですね。
この映画のストーリーはといいますと……やたら喧嘩の強い流れ者とそのマネージャー、さらには彼らを取り巻く人々との交流や賭けのファイトを描いています。主演は、今は故人となってしまったチャールズ・ブロンソンですが……この映画の撮影時、ブロンソンは五十四歳です。しかし、映画内で披露される肉体は見事なまでに鍛え抜かれており、とても五十四歳には見えません。今でこそトレーニング方法も進化し、五十代で筋肉隆々の俳優も少なくありませんが……この当時としては異例でしょうね。
聞くところによれば……ブロンソンは、元プロのボクサーだったとか。また役者として売れていなかった時には、裏の世界の人たちの仕事を手伝っていたような時期もあったそうです。
そういった人生経験が、俳優チャールズ・ブロンソンに唯一無二の個性を授けたのかもしれません。事実、元プロレスラーでありボディービルの大会にも出場経験のあるアニマル浜口さんが「ブロンソンの体は凄い」と言っていたのを聞いた覚えがあります。もちろん、この「凄い」という言葉には色んな意味が込められていますが……。
また、ブロンソンのアクションも見所の一つです。元ボクサーだけあって、やはりパンチの打ち方が凄いですね。上手く説明できないですが、ブロンソンのパンチの打ち方は「痛そう」なのが伝わってくるんですよ。昨今のアクション映画の格闘シーンだと、とりあえず派手な蹴り技を出しときゃいいだろう……という意図が感じられるシーンを見ることがあります。しかし、地味なパンチの打ち合いでも迫力のあるシーンは作れるんですよね。
むしろ、派手な大技をあまりにも簡単にバシバシ出していると……格闘シーン全体が、かえって軽く見えてしまうような気がするのは私だけでしょうか。
そして、これは創作にも当てはまる部分はあるかもしれません。バランス感覚と言いましょうか、地味な部分があってこそ、派手な部分が活きる……そのあたりの感覚もまた、才能なのかもしれませんが。




