ちょっと痛い話
今回はいつもと趣向を変えまして、痛みについて語らせていただきます。格闘技の技による痛み……それがどういったものなのか、私の拙い筆力で皆さんにお伝えできれば幸いです。
痛みなくして成長なし、という言葉があります。確かに、背が急激に伸びる際には成長痛という痛みがありますね。某格闘技マンガには、強くなるために骨延長手術(背を伸ばす手術です)を受けたキャラがいましたが……そのマンガによると、手術には耐え難い痛みが伴うそうです。自然な成長によるものとは違い、手術で無理やり身長を伸ばしている訳ですからね……痛むのも当然かもしれません。
また、ウエイトトレーニングをすると翌日は筋肉痛になります。これは成長痛とはちょっと違いますが……筋肉の成長に伴う痛みであることは確かです。本格的なウエイトトレーニングを初めて体験した人は例外なく、翌日には全身を走る筋肉痛に悩まされることでしょう。
しかし、その痛みにも慣れていきます。習慣というのは恐ろしいものでして……ウエイトトレーニングを続けていくにつれ、逆に筋肉痛がないと不安になります。「あれ、もしかして昨日のトレーニングは甘かったのか?」という思いが、頭を掠めてしまいますね。
以前、蹴りは蹴った方の足にも痛みが走る……ということについて書きましたが、この痛みだけは本当にシャレになりません。蹴りの威力が強ければ強いほど、脛や足首を痛める可能性も高くなります。昔Kー1で、ニコラス・ペタスがローキックを放った際、相手にガードされました。その直後、ペタスの足がポッキリ折れるという衝撃的な映像がお茶の間に流れる……という事件がありました。
しかし蹴りという技は、ガードされると蹴った側の人間の方が痛いですね。この痛みを例えるなら……脛の骨を鈍器で抉られる、といった感じでしょうか。上手い例えにはなっていないですが。
それはともかく、格闘家は日頃からサンドバッグなどを蹴りまくり、脛や足首を鍛えています。皮膚や骨を強くし、どれだけ強く蹴っても壊れないような足を造り上げているのです。そうやって鍛えられた足から繰り出される蹴りは……もはや凶器ですね。
ボクシングの解説などで時々、ボディーブローは後からじわじわ効いてくる……というような言葉を耳にすることがあります。ボクシングの試合は最大で十二ラウンドですので、そういった現象があるのかもしれませんが……後からじわじわ効いてくるという経験、私はないですね。
ただ、ボディーブローを食らって悶絶したことは何度もあります。これは痛いというより苦しいといった方が的確ですね。特にグローブを付けた拳で腹を殴られると……息が詰まるような衝撃がありますね。素手のパンチは痛いですが、グローブのパンチは苦しいという違いを感じます。
もっとも、腹へのパンチのダメージはタイミングにもよります。同じパンチでも、最高のタイミングで腹に入ると……意思とは無関係に倒れます。これは根性で耐えられるものではないでしょうね。
ちなみに、言うまでもないことですが腹には重要な器官が入っています。腹を殴られたり蹴られたりすると、内臓が傷つく可能性もあります。くれぐれも気をつけてください。
腹へのパンチと同様、顔へのパンチもグローブ着用か否かで変わってきます。素手のパンチは、とにかく痛いですね。ただ、基本的に素手で顔を殴り合うのは、路上での喧嘩だと思いますが……そういった場合、人間の体は興奮状態にあります。そんな時、人間は驚くほど痛みに強くなりますね。恐らく、弱肉強食の世界で生き延びるために備わった機能なのでしょうが……素手のパンチは、本当に効きにくいです。痛みは感じますが、耐えられてしまうんですよね。むしろ翌日の方が痛かったりします。
一方、グローブによるパンチは、いいのが入ると一発で意識が飛びます。私も以前、右フック一発で意識を飛ばされたことがありますが、気がついてみると倒れていましたね。ちなみに倒れた瞬間の記憶はありません。あれは、抵抗できないダメージですね……これまた、根性でどうこうなるものではありません。素手では、こうした「一発で意識を飛ばす」ようなパンチを打つのは難しいでしょうね。それ以前に、素手とグローブではパンチの打ち方も異なりますが……。
痛みについて、いろいろと語りましたが……殴られたり蹴られたりすれば、痛いのは当然です(当たり前の話ですが)。しかし、その痛さを知るのも人生においてプラスになるでしょう。痛みを口で説明するのは難しいものです。こればかりは、実際に体験するしかないですし。
自分の体で直に体験する……今までに何度も書いていますが、これは本当に大切です。殴られる痛みを知ることにより、人に優しくなれる……かどうかは一概に言えませんが(格闘家でも頭おかしい人います)、少なくとも痛みについて描写する表現力は上がるのではないかと思います。私が言っても説得力はないでしょうが……。




