マーク・ダカスコスだよ!
私はこれまで、このエッセイでリアルな格闘について語ってきました。また、リアルな格闘シーンについても色々と言及してきました。
しかし、リアルな描写のみが偉いのか……というと、もちろんそんな事はありません。とことんリアルにこだわると、面白みのない展開になるでしょうね。その辺りは個人の好みもあるでしょうから、何とも言えませんが。
とは言え、ドラマや映画などを観ると……格闘技経験者のアクションシーンにおける動きには、一味違うものがあるのも確かです。実際の話、昔ドラマで異常なまでに動きの悪い女優が無双しているアクションシーンを観ましたが……もはや笑うしかありませんでした。やはり格闘技経験者のような動きは、一朝一夕には身に付かないものですね。特にハリウッド映画に出演しているような俳優の動きは、本当に素晴らしいものがあります。
しかし、こういった格闘技経験者の俳優の中には……見事な技術を持ちながらも、日本では全く知られていない人もいるんですよ。そこで今回は、そんなマイナーな格闘家俳優の中から、マーク・ダカスコスを紹介させていただきます。この人、メジャーな映画にも出ているはずですが、日本では本当に知らない人が多いようですね。
ここでマーク・ダカスコスの来歴について簡単に説明しますと……ハワイ出身であり、四歳の頃から両親の指導で格闘技を始めました。そして十八歳の時には、カンフーのヨーロッパチャンピオンになっているそうです。このカンフーが一体どういうルールで行われたのかは不明ですが、少なくとも一流の格闘家……と呼べるキャリアの持ち主であることは間違いないでしょうね。
そんなマーくん(私は勝手にそう呼んでます)ですが……出演作の中でまず観ていただきのは、『オンリー・ザ・ストロング』でしょうか。特殊部隊にしてカポエイラ(ブラジルに伝わる足技を中心とした舞踊ですが、格闘技の要素もあるそうです)の達人である主人公が、不良少年ばかりが集まる学校にカポエイラの指導員として赴任し、街を牛耳る悪党とカポエイラの技で闘う……これだけ聞くと、ただのおバカ映画にしか思えないかもしれません。しかし、マーくんの見事な動き(特に足技)は一見の価値ありです。
さらに、ラスト近くでピンチに陥ったマーくんを助けるために集結する生徒たち……そしてラスボスとの闘いで苦戦するマーくんに対し、合唱(?)で応援する生徒たち等々、お約束ともいえる熱いシーンもしっかりと用意されています。ジャンルとしては、カポエイラ学園ドラマとでもいいましょうか。
しかし残念なことに、この映画はDVD化されておりません。個人的には好きな映画なのですが……悲しい話ですね。ひょっとしたら、動画なら観られるかもしれませんので、気になる方はチェックしてみてください。
この他にも、マーくんは様々な映画やドラマに出演しています。映画『クライング・フリーマン』(日本の劇画が原作です)『ブラック・ダイヤモンド』(ジェット・リーと共演しています)、ドラマ『クロウ――天国への階段』などの出演作がありますが……あえて、もう一本のオススメ作品を挙げるとするなら映画『ジェヴォーダンの獣』でしょうか。色んな意味で、評価の分かれる作品ではありますが……私は好きですね。
この作品は、十八世紀のフランスが舞台となっております。百人を超える被害者を出したとも言われている「ジェヴォーダンの野獣伝説」を基にした映画でして、ミステリーやアクション、ホラーといった様々な要素が詰め込まれた作品です。
この中でマーくんは、フランス貴族の友人であるアメリカの先住民を演じております。そのアクションは本当に見事ですね。巨大な獣と森の中で戦うシーンや、大勢の男たち相手に無双しかけたけど出来なかった(?)シーンなどは凄いです。
また、脇を固めているのが……妖艶な魅力満載の女優モニカ・ベルッチと、漢気俳優のヴァンサン・カッセルなのです。二人の怪しさたっぷりの演技など、見所もたっぷりあります。ちなみに、今作ではマーくんも脇役ですので……主役を演じているのは、名前をよく知らない人です。さらに言うと、ヒロインもよく分からない女優が演じています。私が知らないだけなのかも知れませんが……。
そんなマーくんですが、今年で五十二歳になります(二〇一六年三月の時点では)。最近では、全盛期の頃と比べると多少スピードが落ちたような気はします。また、動きのキレも若干ではありますが落ちたような気もします。
それでも……他の俳優には簡単に真似の出来ない、高い格闘技術の持ち主であることには変わりありません。皆さんもぜひ一度、このマーク・ダカスコスの出演している映画やドラマを観てください。




