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格闘技、始めませんか?  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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格闘家の常識

 以前、試合に出るために体重を落としていた時の話です。減量を開始して一週間後、体重は一キロ落ちていました。そして、私はたまたま知り合いの人と会って話をしたのですが、その時にダイエットの話題になりまして……。


私:「いやあ、今ちょっとダイエットしてましてね。今週は一キロ落としましたよ」

相手:「お前、何を言ってるんだよ。いいか、体重の一キロなんてのは誤差の範囲内なんだ。お前知らねえのか」

私:「……はあ、そうなんですか」


 この時の私は、苦笑するしかありませんでした。

 一応説明しますと、この人の言っていることは間違いではありません。普通の生活をしている人は、体重一キロの増減はよくあることです。昨日、飲み会で飲み過ぎて食べ過ぎた……あるいは、昨日は忙しくてパン一個しか食べられなかった。しかも、ほとんど体を動かさない……そんな生活をしていたら、体重の数値は確かに変わりやすいでしょう。

 しかし、私の場合は普段トレーニングをしている上に、一日五回の食事(筋肉の量を減らさないために食事の回数は減らしません)から、炭水化物を減らしていく……という形で体重を一週間に一キロずつ減らしていたのです。一般の人の言うところの誤差など、まず有り得ない状態だったのですが……。

 私がなぜ、こんな話をしたのかといいますと……世の中には、健康に関する情報が溢れているようです。しかし、一般の人と格闘家とは根本的に生活スタイルが違います。なので一般の人向けの健康情報は、格闘家には当てはまらないことが多いですね。そこで今回は、一般的には非常識かもしれないけど格闘家には常識だよ! な話を少しばかり語ります。


 例えば……寝る前に物を食べるのは体に良くない、という意見があります。断言は出来ませんが、これは正しい情報なのでしょう。

 しかし格闘家の中には、寝る前にプロテインドリンクを飲む人もいます。これは、寝る前にたんぱく質を取ることにより、疲労の回復と筋肉の増強を図るためなんですね。

 格闘家は普段の練習により、その肉体は疲労しています。疲労を回復するには栄養は欠かせません。またウエイトトレーニングなどをしていれば、筋肉はトレーニングにより傷つき、破壊された状態です。それを修復させるには……常人よりも多くのたんぱく質が必要になるわけですね。そのためにも、寝る前のプロテインドリンクの摂取が必要な訳です。そこに一般の人向けの健康情報は当てはめるのが、そもそも間違いな訳ですね。


 健康情報とはまた違いますが……ウエイトトレーニングに関しても、そのような部分があるように思います。例えば昔「欧米人は、日本人に比べると潜在的な筋力や筋肉の付く量がまるで違う。日本人では、欧米人に力で対抗しても絶対に勝てない。だから日本人はウエイトトレーニングなどしても無駄だ。技を磨き、技で対抗しなくてはならない」という意見を述べていた人がいました。これは、半分は正しく半分は間違いです。

 確かに、日本人は欧米人と比べると筋肉の量や筋力は劣っています。しかし、だからこそウエイトトレーニングなどを代表とする、筋力を強化するためのトレーニングをしなくてはなりません。

 格闘技において、力は絶対に必要なものです。力に差があり過ぎれば、磨き抜かれた技術を発揮することすら出来ません。同じくらいの体格でも、抵抗すら出来ず圧倒的な力でねじ伏せられてしまう……これはアマチュアの試合は、たまに見られる光景です。

 力の差があり過ぎると、技術の攻防の前に力のみで押しきられてしまうケースも少なくありません。こちらの技を効果的に使うためにも、最低限の力が必要なのです。

 ただ、勘違いされては困るのですが……これはあくまでも、力のみで西洋人をねじ伏せるためのものではありません。もう一度言いますが、技術を使うためには最低限の力が必要なのです。そのためにも、ウエイトトレーニングをやる訳ですね。


 また、冒頭に挙げたダイエットで言うと……プロの格闘家は、激しいトレーニングにより、一週間で七キロを落としたりします。一般人向けのダイエットなら、これは明らかにやり過ぎです。一般人が真似をしたら、確実に健康を害するでしょうね。

 しかしプロの格闘家にとって、これは当たり前のことなのです。

 例えば、ここに普段八十キロのA選手がいたとしましょう。この選手が、七十キロの契約体重でB選手と試合が決まったとしましょう。A選手は、短期間で一気に落としました。そして計量が終わると(プロの試合はほとんどが前日計量です)、食べて体重を戻します。つまりは、意図的にリバウンドさせたわけです。そうすると面白いもので、一日で三〜四キロは違ってきます。人によっては、一日で十キロ近く増えるケースもあるとか……。

 一方のB選手は、普段から七十キロの体重を維持していたとしましょう。そうなると試合当日、AとBの両選手には数キロの体重差があることになります。下手をすると、十キロ近い体重差が……これだけ体重が違うと、試合において体で押されてしまうこともあります。試合を有利に運ぶために、あえて当日にリバウンドさせるわけですね。

 もちろん、こんなやり方はダイエットの方法としては間違いです。一般人がこのように、きわめて短期間で体重を落とした場合……倒れてしまうケースもあります。決して真似をしてはいけません。ダイエットはあくまでも、体に負担をかけずに減らしていくのが理想ですので。


 一般人向けの健康情報は多くありますが……中には眉唾な情報もあります。また、格闘家には当てはまらないものもあります。というより……格闘家は試合に勝つためにトレーニングをしたり健康に気を使ったりしています。我々一般人とは、根本的に異なっていますので。

 一見、間違ったやり方をしているように思えても……そこには知識と経験に基づいた、綿密な計算がされている場合もあります。一般人向けの知識だけで正誤を判断することこそ間違いかと、私は思いますね。





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