人生、投げてはいけません
私はたまに、深夜(一時か二時頃ですね)になってから自宅に帰ることがあります。そして何気なくテレビを点けると、必ずどこかの局でアニメが放送されていますね。いつ頃から、夜中にアニメが放送されるようになったのかは知りませんが……少なくとも、私の若い時には夜中にアニメは放送されていなかったような気がします。
ひょっとしたら、その放送されていた作品の中には、なろうの小説が原作のアニメもあったのかもしれません……そのあたりの事情には疎いので、よくわかりませんが。
で、そういったアニメの戦闘シーンを見ていると……必ずあるのが、殴られて数メートル(時には数十メートル)ほど吹っ飛び、壁や地面に叩きつけられる……というものです。見ている者にあたえるインパクトは大きいですよね。
ちなみに、人ひとりを数メートル吹っ飛ばすのに必要な力がどの程度のものか私は知りませんが、恐らくは、交通事故に遭ったのと同じくらいの衝撃ではないかと思われます。まさに、猛スピードで走って来たトラックに跳ねられるのと同じ威力なわけですね。
その衝撃に耐えるには……主人公補正がないと無理です。普通の人間なら、全身の骨がバラバラになってしまうでしょうね。もっとも、舩坂弘(実在した不死身の兵士らしいです。詳しく知りたい方は調べてみてください)ならば耐えられるかもしれませんが。
ちなみに、リアルな闘いについて言及すると……地面に叩きつけられるのは、強烈な衝撃です。柔道の経験のある方はお分かりでしょうが、投げという技は、路上で決まれば一発で決着が付きます。
もしアスファルトの上ならば、投げはもちろんのこと……足払いなどで転ばされただけでも大ダメージです。その一発で片がつくことも珍しくありません。下手な打撃よりは、地面に叩きつける方が遥かに強力です。また、砂利道だったりすると……倒れた瞬間、あちこちに傷を負います。仮にミニスカートでナイスバディの美少女が砂利道に投げられたとしたら、その綺麗な足は見るも無残なことになります。ミニスカートを履いて、投げの得意なグラップラーと砂利道で闘うのは、リスクが大きいので止めた方がいいでしょう。
ところで、ハリウッドのアクションスターであるスティーヴン・セガールの戦闘シーンには、投げや足払いなどで無双するシーンがありますが、あれは本当に強力でしょうね。地面や壁に、相手の体を叩きつける。まさに環境を利用する格闘術です。地面や壁を、自分の武器として用いる……これは非常に理に敵った闘い方でしょうね。
しかし投げで無双するキャラ、というのはあまり聞いたことがありません。私が知らないだけかもしれませんが……打撃などと比べると、どうしても見た目の派手さに欠けてしまうからでしょうか。特になろうでは古武術の方がもてはやされているので、怪しげな技が脚光を浴びやすいのかもしれませんが……。
しかし、投げ技を甘く見てはいけません。相手のバランスを崩し、一瞬にして堅い地面の上に叩きつける……それは、まさに一撃必殺です。状況によっては、下手な打撃などより遥かに効果がありますね。ですから、アスファルトの上でのプロレスごっこなどは、絶対に止めた方がいいです。アスファルトで投げてはいけません。投げた方、投げられた方、その両方の人生を棒に振ることにもなりかねません。
ついでに言っておきますと、皆さんは柔道といえばスポーツ……というイメージで見られているかもしれません。事実、柔道はオリンピックの正式種目ですし、スポーツとしての世間の認知度も高いでしょう。
ただ、格闘技として評価する人は少ないようです。ボクシングや空手などの打撃系格闘技に比べると、スポーツというイメージが強いようですね。
しかし、柔道は紛れもない格闘技です。その投げや絞めといった技は、一撃必殺の威力を秘めています。また、強豪校の練習量は半端なものではありません。基礎体力からして、一般人とはまるで違います。
先日、グラップリング(組み技のみの格闘技)の大会に、大学の柔道部出身の人が出場していましたが……投げ技のみでポイントを稼ぎ、プロの総合格闘技の選手に勝利を収めたそうです。打撃ありのルールなら、また違った展開になっていたのでしょうが……全く無名の柔道部出身者がプロの選手相手に勝つ。それも柔道という競技の層の厚さを表しているのではないでしょうか。
これは蛇足ですが……世界では今、ブラジリアン柔術の大会が盛んに行われており、競技人口も徐々に増えているそうです。日本でも、ブラジリアン柔術の競技人口は増えているそうですね。
しかし、国際柔道連盟(IJF)は各国連盟に、二〇一五年以降、柔道以外の格闘技大会への選手の出場を禁止する通達を出したそうです。もっとも、その対象は世界ランキング内の柔道選手らしいので、アマチュアレベルの人間には関係ない話ですが……海外では、柔道の強豪選手がブラジリアン柔術の試合に出場するケースもあるだけに、残念な話ではあります。
そこにどういう理由があるのか、私のような人間には分かりませんが、組織間の溝や確執のようなものがあるのだとしたら……悲しいですね。




