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格闘技、始めませんか?  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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効果には個人差があります

 たまに夜中の通販番組などを観たりすると、必ずといっていいほど紹介されているのが、ダイエットのための商品です。で、その煽り文句はほとんどが「楽して痩せる!」ですね。今後も、ダイエットのための商品が尽きることはないのでしょう。

 そして、この手の番組に必ず出てくる言葉が「効果には個人差があります」でしょう。確かに、同じ商品を使っていても、個人によって違いがあるものと思います。合う、合わないもありますしね。ただ、こればかりは試してみないと分からない部分があります。金に余裕があり、どうしても楽して痩せたい人は……片っ端から試してみるとよいのではないでしょうか。お金に余裕がない人は、とにかく頑張りましょう。食事制限と運動こそ、最もお金のかからないダイエット方法ですね。


 格闘技にも、様々な面で個人差があります。面白いもので……全く同じメニューのトレーニングをしていても、人によってまるで違う結果が出たりします。

 例えば筋肉ですが、明らかに付きやすい人と付きにくい人がいますね。さらに、人によって発達しやすい部分、発達しにくい部分があります。「胸の筋肉が発達しやすいが、腕が発達しにくい」のようなケースですね。キャリアのあるボディービルダーは皆、自分の体の長所と短所をきちんと理解しています。どこの筋肉をどれだけ鍛えるか……緻密なメニューを組んでいます。脳筋という言葉がありますが、ただがむしゃらに鍛えるだけでは筋肉は付きません。自分の体の特性をきちんと理解した上で、それに合ったトレーニングメニューを組む必要があります。

 そして、トレーニング方法に関しても、いろいろ個人差があります。バーベルやダンベル、マシンを用いたトレーニングに否定的な人も少なくありません。まあ、その大半は技術信仰とでも言いましょうか……力を低レベルなものと見なしている人たちの意見です。

 その一方、格闘家の中にも自重トレーニング(腕立て伏せやスクワットなどの器具を使わないトレーニング)だけで強くなっている人もいます。これもまた、格闘技の不思議な部分ですね。


 さらに、寝技の練習をしていて面白いな、と思うのが……得意な技は人によって千差万別だということです。

 例えば、腕ひしぎ十字固めという技があります。関節技としてはポピュラーなものですが、私は全く使えません。一応、練習はして形だけは出来ますが……どうも、しっくりこないですね。他の技の方が、遥かに使い易いです。なので、今は腕ひしぎ十字固めを使わないスタイルでやっています。

 寝技の攻防は、本当に個人差がありますね。手足の長さ、力の強さ、体の柔軟さ、などなど……個人の特徴による闘い方のバリエーションの豊富さは、打撃の攻防よりも上なのではないでしょうか。また、寝技は本当に奥が深いです(打撃が奥が浅いと言っているわけではありませんので)。二手先、三手先を読む戦略的な部分も要求されますし、個人の創意工夫や柔軟な発想力を競技に活かすことが出来ます。技術の引き出しの多さが、そのまま強さに繋がるという点は素晴らしいと思いますね。

 ちなみに私の通うジムには、フィジカル面では最強かもしれない? と思うような青年がいます。体重は七十キロ無いですが筋力は強く、スピードもスタミナもあります。しかし、技術の引き出しという部分において、まるで駄目なんですよね。この青年、ついこの間アマチュアの試合(組み技のみです)に出場しましたが、私の予想を裏切って負けました。いくら筋力において優れていたとしても、技術がないと勝てない……逆に筋力がなくても、技術でカバーできる余地があるのが格闘技です。特に寝技は、技術の占める比重が大きいですね。とはいえ、体格差が二十キロや三十キロもあると、技術でカバーしきるのはさすがに難しいですが……。


 格闘家には、様々なタイプがいます。圧倒的な筋力で相手をねじ伏せるタイプや動き回って相手の隙を突くタイプ、逆にどっしり構えて相手の動きに対応していくタイプなどなど……どういうタイプになるかは、個人の差があります。練習を重ねていき、様々なやり方を試行錯誤し……その結果として、どのようなタイプになるかが決まります。 また、技にはいくら練習しても身に付かないもの、逆に自分でも驚くほど簡単に身に付けられるものとがあります。練習を重ねていくうちに、自分にぴったり合った技を見つける。これには独特の喜びがありますね。探し求めていた、理想の異性に出会えたような……それはちょっと大げさですが。

 とにかく、自分の内に眠っているものは、試してみないとわかりません。自分という人間の特性が何なのかを知る……これも一つの自分探しなのかもしれませんね。






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