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格闘技、始めませんか?  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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やらされるのではなく、やる

 いきなりですが、皆さんはマイケル・J・ホワイトという俳優をご存知でしょうか。まあ、日本でははっきり言って無名に近いですね。そこそこの映画好きな人でないと知らないでしょう。一応、アメコミ原作の映画『スポーン』では主演ですが。

 さて、そんなマイケル・J・ホワイトという人、実は知る人ぞ知る格闘家なのです。七歳から空手を始めて十二歳で黒帯となり、全米オープン選手権、北米オープン選手権など数々のタイトルを獲得しています。さらに様々な流派を極め、現在は松濤館空手、テコンドー、剛柔流空手、武術太極拳、タンスドー、極真空手の計七つの黒帯を持っているそうです……もはや黒帯コレクターですね。ちなみにタンスドーとは何なのか、私は知りませんが。

 このホワイト氏、黒帯コレクターだけあって実に見事な肉体をしており、蹴り技も華麗です。そんなホワイト氏がどのようなトレーニングをしているかといいますと……。


「一日に水を十一リットル飲むね。全部、蒸留水さ」


「トレーニングの仕方には気をつけている。間違ったダイエットをすると、脂肪が落ちても動けない体になるからね」


「食事の七十パーセントがたんぱく質だ。もちろん動物性たんぱく質さ。調味料をあまり使わないから、味はほとんどしない」


「だいたい一日四時間はトレーニングする。ウエイト・トレーニングもやるよ。ただし、メニューはよく考えている。同じ内容のトレーニングばかりやっていると、体が慣れてしまうからね。重いバーベルを低回数あげたり、軽いダンベルを高回数あげたり、変化をつけているよ」


 ちょっと聞いただけでも、その異様なまでのストイックさが伝わってきますね……これは、常人が真似しようとしても真似できるものではありません。

 ただ、ここまで極端なものでないにしろ……格闘家は大なり小なり、ストイックな生活を送っています。以前にも書きましたが、今はトレーニングは短くコンパクトに……が主流です。昔のスポ根マンガのように、ぶっ倒れるまで練習したりはしません。その代わり、それ以外の部分……つまり日常生活に気をつけています。蒸留水を一日に十一リットル飲んだり、たんぱく質が七十パーセントの味の薄い食事を摂る。これはやはり、本人のやる気が大切ですね。


 一流の選手は、本当にストイックです。ハードな練習をこなし、時間が来れば味のない食事を摂り、そして一定時間きちんと眠ります。あるボクシング世界チャンピオンは現役時代、友人の誘いをことごとく断り続けた(酒やタバコの煙といった害になる要素を避けるため)結果、友人がいなくなったと言っていました。もっとも、世界チャンピオンになった途端に、手のひらを返すように友人たちが以前のように近づいて来た、とも言っていましたが……。

 それはともかく、こうしたストイックな生活は、やらされて出来るものではない、と私は思っています。本人の中に、強い目的意識が必要でしょうね。

 試合に勝つために、様々なものを犠牲にする……一見すると、それは苦痛に耐え続ける、忍耐の日々であるかのように映ることでしょう。実際の話、そういった側面があるのも否定しません。

 しかし、それだけではないのも確かです。

 ハードなトレーニングをこなし、味よりも栄養を重視した食事を摂り、水や睡眠時間にも気をつける……これらは、我慢や忍耐だけで続けていけるものではありません。その根底にあるものは……結局のところ本人の「試合に勝ちたい」という目的意識です。

 プロ選手のほとんどは……その人生において、試合に勝つことを第一に考えます。試合に勝つ、その目標があるからこそ、ハードなトレーニングやストイックな生活が可能になるわけです。

 また、酒やタバコといった健康を害するような可能性の高いものは、高いレベルのトレーニングをする上で障害となる……少なくとも、その可能性が高い訳です。障害となるものは、自らの意思で選択して、避ける。これは当然のことですね。もっとも、酒やタバコもやるが強い、という選手もいたりしますが……。

 それはともかく、勝つために必要だからこそ、自ら進んでハードなトレーニングに取り組む。あるいは味のない食事を摂り続ける。そこには、本人の「自分はやる」という意思が必要です。そして挫けそうになった時には、自分で自分を鼓舞して奮い立たせる。ある程度、自らのコントロールが出来る人間でないと、まず続かないでしょうね。


 ここまで読んできて、お分かりになったかと思いますが、ハードなトレーニングをこなし、ストイックな生活を続ける源となっているのは……つまるところ、本人の高い目的意識のなせる業です。誰かに無理矢理やらされるのではなく、自らの意思でやる。勝つために必要だとわかっているからこそ、自ら進んで地獄を克服する……そこに意味があると思います。また、自らの意思でハードなトレーニングが出来ないようでは、初めからプロにはなれないでしょうね。そういった心の強さは、先天的な部分が大きいかもしれませんね。ただ、心の弱い人でも……強い目的意識を持つことが出来れば、変われるかもしれませんが。






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