一人より二人
前回に続き、今回も地味〜な話になります。
最近、格闘技エクササイズなるものが増えているようですね。ボクシング・エクササイズ、キックボクシング・エクササイズ、さらには護身術エクササイズなるものもあるそうです。何かの番組で観ましたが、お洒落なウェアに身を包んだ女性たちが、和気あいあいとした雰囲気で楽しく汗を流している姿が印象的でした。
もちろん、これらは格闘技というよりはエクササイズに近いものです。健康の維持や体力の増強が目的ですから、そこには強さなど関係ありません。
むしろ、格闘技というものに対する偏見のようなものを取っ払ってくれる、ありがたい存在であると私は思っています。格闘技への入り口として、興味があるのなら是非ともやっていただきたいですね。
さて、格闘技エクササイズでも、あるいは本格的な格闘技のジムや道場でも、必ず指導する立場の人間がいます。指導員、トレーナー、師範などなど、呼び方はいろいろです。強くなるためにはまず、こうした指導してくれる立場の人の存在が必須ですね。
昔、通信教育の空手や拳法などがありましたが、実際に自分の動きを見てもらい、きちんとしたアドバイスを得られるというのは重要です。それなくして、一人で体を動かしていると……間違った動きを覚えてしまう恐れがあります。間違った動きが身に付いてしまうと、それを正しい動きに修正するためには、それ相応の時間が必要でしょうね。しかし、指導員がいてくれれば、そのような事態は避けられます。
ただ、こうした通信教育も……純粋なエクササイズとして見た場合には間違いではありません。たとえ見よう見まねでも、一定時間パンチやキックを放つことによる運動量はかなりのものでしょう。体力の向上やダイエットという目的ならば、問題はないと思います。本格的な格闘技をやる上では、その経験がマイナスになるかもしれませんが……。
さらに練習を続けていくと、ミット打ちやスパーリングなどの対人練習も行なうようになります。組み技でも、二人一組でタックルの打ち込みや関節技の掛け合いなどの対人練習をしますが……今回は省きます。
まずミット打ちですが、これは非常に大事なトレーニングです。指導員の指示に従いパンチを放ち、そして動く。相手との適切な距離を保ちつつ、トレーナーの構えるミットにパンチを打ち込む。これは体験していただくとわかりますが、かなり疲れます。しかし、こうした対人練習を重ねていくことにより、人と闘うための感覚を養うことが出来ます。
さらに練習を続けていくと、スパーリングをやることとなるでしょう。このスパーリングには、軽く打ち合うマス・スパーリングと……ヘッドギアなどを着けてガチで打ち合うスパーリングの二種類があります。どちらも実戦形式の練習ですので、強くなるためには欠かせません。
マス・スパーリングの方は、パンチやキックを当たる寸前で止める、もしくは軽く当てる形式の打ち合いです。実際に動き、そして反撃をしてくる相手との練習は闘うために欠かせないものです。
こうした実戦的な練習をすると……某格闘技マンガのセリフではありませんが「闘いとは不都合なもの。闘いとは思い通りにならないもの」という事実を知ることが出来ます。サンドバッグや人形と違って、実際に動きまわり、自分に対し攻撃を仕掛けてきます。また、こちらの攻撃を防御したりもします。ある程度の経験を積んだ、同じくらいの体格の人間が相手となると……一人で練習していただけのレベルでは、まず通用しません。
さらに言うと、このスパーリングは……同じ相手とばかりやっているのは良くないですね。いろんなタイプとやった方が、断然強くなります。身長の高い相手や逆に低い相手。パンチの得意な相手。蹴りの得意な相手。ひたすら突進してくる相手。距離を保つ相手、などなど……様々なタイプと練習することにより、技術の引き出しが多くなります。対応する力も身に付きます。
これが、同じ相手とばかり練習していると……その相手の攻略のみに特化した技術になってしまい、結果として応用力のない技術が身に付いてしまいます。某世紀末覇王伝説に登場するような一子相伝のスタイルですと、やはりそのあたりがネックになるのではないかな、と思いますね。
たくさんの人間と練習すれば、学ぶものは多くなります。そちらの方が、確実に強くなれるでしょう。
ところで最近『銀魂』というアニメを観ていた時のことです。剣術道場で奥義の書かれた巻物が見つかった、という話が放映されていたのですが、その奥義は他のキャラでも比較的スムーズに覚えることができ、なおかつ奥義の対処法も簡単に編み出されてしまった……という展開でした。まあ、これはあくまでギャグアニメの話ですが、実際の話……一子相伝という閉ざされた環境の中で技術を磨いていた場合、このような事態が起きてもおかしくはないですね。井の中の蛙になってしまう恐れがあります。技術交流というのは、本当に大切ですね。これはどの分野でもいえることかもしれませんが……。




