数字の扱い
私は未だによくわからないのですが……たまに、自らのスリーサイズを聞かれもしないのに言う女性がいたりします。芸能人でもないのに、なぜそんなものを会って間もない男たちの前で吹聴するのか、モテない私にはさっぱりわかりません。
しかし、世の中にはさらにわからん人がいます。とあるトレーニングジムには、七十歳になる常連の人がいるそうですが……この人は初対面の若い女性に対し「いくつに見える?」などとキャバ嬢のようなことを聞くそうです。そして相手が「えーと、五十歳くらいですか……」と答えると(たぶん気を遣ってます)、この人は満面の笑みを浮かべ「七十だよ」と言うそうです。で相手はさらに気を使い「えー! 本当ですか!」などと大げさに言うと「七十歳には見えないでしょう」などと勝ち誇った表情で言い、さらに「俺はね、スリーサイズが若い頃と同じなんだよ!」と聞かれもしないのに語りだすとか……七十歳で、スリーサイズを欠かさず計っているのでしょうか。
最近では若い女性にやたらと声をかけ、己の若さをアピールしたがるフィットネス老人も増えているそうです。若い女性の方は注意してください。私はそんな老人には、絶対なりたくないですが……。
ちなみに格闘技には、スリーサイズなどよりも遥かに重要な数値があります。身長、体重、リーチです。身長、そしてリーチの重要性に関しては、以前にも書いた通りです。リーチが長いと、格闘技においてかなり有利ですね。ただ、人間にはベストウエイトというものもあります。リーチが長ければ有利になるからといって、百九十センチの人が六十キロ台まで体重を落としたりしたら……多くの場合、逆に不利になるでしょうね。筋肉まで落としてしまうわけですから……動きが悪くなり、スタミナも落ちると思います。もっとも、例外はあります。ごくまれに、百九十センチで六十キロ台の選手もいたりするのが怖いところですが……。
さて、創作のキャラの中には……明らかに身長と体重のバランスが滅茶苦茶な者がいたりします。格闘ゲーム『ストリートファイター2』のサガットは、身長が二メートル二十でありながら、体重は八十キロ未満だと聞きました。これは正直、何かのミスではないか……としか思えない数値ですね。減量苦のため、試合後に死んでしまった『あしたのジョー』の力石でさえ、ここまで痩せてはいないのではないでしょうか。
もし、これがミスプリントでないとすると……製作者の方の認識不足としか言い様がないですね。基本的に、プロレスラーやプロの格闘家などは、身長と体重を公開している方がほとんどです。そういったものを参考にすれば、こんな数値には絶対にならないはずなのですが……。
なろうにて、自身の作品に登場させるキャラの身長と体重をきっちり決めているユーザーさんもいると思います。私もたまに、きっちり決めておくことがあります。
はっきりとした身長や体重を決めておくことは、キャラの存在感という意味では大切かもしれません。また、キャラをイメージしやすくなるという利点もあるでしょう。しかし、欠点もあります。
言うまでもなく、数字は誤魔化しが利きません。以前『空想科学読本』という本で、某ウルトラな人や怪獣、果ては身長五十七メートルで体重五百五十トンの超電磁ロボの身長と体重のバランスの矛盾について、科学知識を用いて緻密に検証していました。
もちろん宇宙人や怪獣である以上(超電磁ロボは地球の科学ですが)、そこに我々の科学知識が当てはまらないものもあるかもしれません。なので、そこの矛盾を突くのはいいかな、という気はします。
しかし、人間の身長や体重となると話が違ってきます。例えば、先ほど例に出したサガットですが……読んでいる小説の中に身長二メートルを超えていながら、体重八十キロ未満のキャラが登場した場合、私は間違いなく、アンガールズの二人のような体型の男を連想します。サガットのような筋肉質の男は想像しないですね。
サガットの例は極端なものですが……たとえば小説を読んでいて、身長百七十センチで体重六十三キロの少年、というキャラが登場したとしましょう。私はこの数値から、少年の見た目はごく普通の体型であると判断しますね。少なくとも、服を着ている状態では目立つ体格ではないと思います。
そんな設定のキャラに対し「筋肉つき過ぎ」「レスラー体型」などという言葉を作品の中で他の者が言っているとしたら……これは明らかにおかしいですね。仮に、このキャラが鍛えているという設定だとしても、体つきは減量前のボクサーのような感じでしょうね。少なくとも、マッチョなレスラー体型であるとは思えません。
とにかく、身長や体重の具体的な数値が入ると……そのキャラはリアリティーが増します。しかし、作者の知識の無さや勉強不足を露呈することにもなりかねません。
プロレスラーやプロの格闘家はほとんどの場合、自身の身長や体重を公開しています。特に、鍛え抜かれた肉体の持ち主を登場させる場合、そういった人たちのプロフィールや写真を見るのは、大いに参考になると思います。是非、資料として用いて欲しいものですね。




