素直さは大事ですが……
暑いですね……最近の東京は猛暑としか言い様がないです。練習中は汗だくになりますね。
この連載の目的の一つは、格闘技人口を増やすというものです。しかし、この暑い時期に格闘技を始めるというのは……はっきり言ってオススメできません。「いつやるの!? 今でしょ!」という言葉が以前はやりました。しかし今(八月上旬)、格闘技をやってしまうと……よほど根性のある人でないと、続かないのではないかと私は思います。出来れば、九月から十月あたりの気温が落ち着き過ごしやすくなった頃に始めるのがよいのではないでしょうか。
そこで今回は、格闘技を始める際の準備そして心構えについて語ります……と書いてしまうと、何やら松○修造さんの言葉のようなものを連想される人もいるかもしれませんが、そんな暑苦しいものではありませんのでご安心を。
ちなみに私は、松○修造さんは嫌いではないです。しかし、この暑い時期に聞くのは少々キツいかな、という気はしますね……。
格闘技を習い始めると……初めのころは「こんなことばっかりやって何になるんだろう」と考えてしまうような動きがあるのではないでしょうか。シャドーや基本稽古あるいは型などの地味な練習だけを、来る日も来る日もやらされる……そんなジムや道場は今はないと思いますが、ひょっとしたら、まだあるかもしれませんね。まあ、これは格闘技に限らず、どの分野でもそういった段階があるのかもしれませんが……。
以前にも書きましたが、単純なパンチを打つという動作でも、その動作を身に付けるまでには地道な反復練習が必要です。細かい筋肉を鍛えて肉体の土台を造り、ちゃんとした動作を体に覚えこませる……この段階は、誰しもが一度は通る道です。なので、どんなにつまらなくても、我慢して続けていってください。いずれ、同じ動作をしていても疲れにくくなり、また違った感触を得られる(キレ、という感覚を実感できる)……そんな時が来るはずです。また反復練習を重ねてこそ、初めて対人で使えるものとなります。
しかし、難しいのがオカルト系の道場に入門してしまった場合ですね。ここでは何をやらされるかわかりません。何の役にも立たない、奇怪な動きの練習を延々とやらされる可能性があります。素直さはとても大事……ではありますが、オカルト系の道場に入門してしまうと、その素直さが災いすることになってしまいますね。
そこで大事なのは、入門前の見学です。特に、道場と名の付く場所には注意が必要ですね。どういった人間が指導しているのか、どのような練習をしているのか……きちんと見極める必要があります。この段階では、素直に相手の言うことを鵜呑みにする必要はありません。むしろ、おかしな点がないか探す……そんな心構えの方がいいかもしれませんね。
私に言えるのは、見学の段階でいきなり「我々の流派では、触れただけで相手の内臓を破壊し殺すことができます」などと言い出したら……そこはもう、行かない方がいいでしょうね。出来る出来ない以前の問題として、社会人でありながら軽々しく「殺す」といった類いの言葉を口にする……どうかしている、としか言い様がありません。そんな人間の指導する場所……私なら入門しないです。
ただし、いったんジムもしくは道場に入門したのなら……素直にトレーナーや師範の言うことを聞き、言われたことをやらなくてはなりません。時には「こんな練習やって何になるんだよ……」と思うこともあるかもしれません。しかし、そういった疑問を押し殺して、ひたすら練習に励む時期も必要です。
格闘技には、理屈では説明できない部分が多々あります。体を動かしている間に、今まで出来なかったことが出来るようになったりするわけですから……頭で考えた疑問が、体を動かすことで解決することもあります。一見すると地味な鍛練が、重要な意味を持っていたりするのです。
石の上にも三年、という言葉がありますが……我慢は必要です。初めのうちは、頭の中に湧き上がってくる様々な疑問を押し殺し、ひたむきに練習する素直さが必要です。
しかし、この素直さというヤツは諸刃の剣でして……騙されやすい、ということにも繋がりかねません。得体の知れないオカルト系の道場で「体格差に関係なく相手をぶっ飛ばせる」「触れただけで相手を倒せる」などと言われ、奇怪な動きの技の練習を毎日させられる……そうなると、素直さが仇となりますね。
ですから、事前の見学が重要です。見学の段階できちんと見極める……これをしておかないと、ワケわからん流派のおかしな道場で貴重な時間を空費することとなります。
そして見学を重ねて、道場を決めていったん入門したなら……あとは一心不乱に練習しましょう。素直さを発揮しなくてはならないのはここです。師範やトレーナー、あるいは先輩たちの言うことを素直に聞いて練習してください。多少おかしいと思う点があっても、それは頭の中にしまっておくのがよいでしょう。
蛇足かもしれませんが、最後に見学する際の注意を……ある格闘技の師範が、こんなことを仰っていました。
「最近、見学に来る人たちを見ていると……何も知らないのに分かったような顔で、あの流派はどうだとか、この流派の技はこうだとか……覗き趣味というか、そういう感じで見学に来る子が多いですね」
見学に行っておいて「あれの方が凄い」「これが最強」などと言っているのでしょうか……ネットや格闘技漫画と現実を混同しているとしか思えません。見学の際は、くれぐれも失礼のないようにしてください。




