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恋人に裏切られ番不信になった私の心を溶かして甘く抱きしめてくれたのは  作者: リーシャ


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24/24

24わかりきった決裂。関係ない者が口を出すな!そんなこと言ったらほら

 当たり前だと、頭が痛くなる。


「ふん」


 マリノはそっぽを向く。二人の間には、言葉以上の重い沈黙が流れていく。はじめは話し合いをしたいと思っていたのに、話し合い以前の問題が相手から放たれればこうなる。

 周囲の音は聞こえず、微かに存在を主張した。今にも何かが起こりそうな、張り詰めた緊張感が漂っている。


「二度と話しかけないで。近づかないで。私の家族にもね」


 冷たく、短く、感情を一切含んでいない。ディアドアの方を見ると、頷く。気持ちがシンクロしているようでなにより。ファルミリアはここまでだろうと、相手に話しかけた。


「すみませんが今日はここまでで」


「はぁ?関係ない者が口を出すな!」


 男は激昂した。


 ファルミリアを見て、手を出そうしたのでファルミリアは男の手をぶっ叩く。


「ぐっ!?」


 思いも寄らない腕力に男がうめく。その間、マリノはそれを見て蔑んだ声音で男を貫く。


「最低ですね。もっと見損ないました」


 青龍の男は怒りから焦りに変化する。


「どうしてだ?何か、私に何かあったのか?」


 必死に問いかけようとしたが、声は掠れ、上手く言葉にならないらしい。彼女は辛そうな表情で首を横に振る。


「暴力に走る時点でもう無理」


 その言葉は男にとって予想外だったみたいだ。


「貴方が怪我をさせようとした人が貴方と話してみるといいって言うから話し合いの場を持てたのに。恩人に恩を仇で返すなんて」


 相手からしたら理由にもならない、理由が分からない拒絶。つがいに会えた喜びから一転、突き落とされた絶望感に男はただ立ち尽くす。周囲の喧騒が遠のき、互いの間には重く残酷な静寂が漂っていた。


(ここまでかな)


「失礼します」


 ディアドアたちは男が騒ぎ出す前に店を出た。改めて集まると相手のつがいの男の酷さに喉を唸らせるという、前代未聞なことしかできない。


「なんなのだ?あの男は。番だからと好き勝手に扱えるものではないのだぞ?」


 番関連の部署の人が頭を抱える。


(そう言いたくなるのも当然だねぇ)


 ファルミリアですらこの人はありえないと思ったから。どうして彼は、あんな風に彼女に一方的に言えたのかと思う。そのせいで我々の心情は最悪だ。見届け人たちもうなっている。


 疲れた様子のマリノはゆっくりと顔を上げ、申し訳なさそうにしていた。


「ここまで付き合ってもらったのに、こんな結末になってしまいすみません」


 ディアドアは腕を組み直し、顎に手を当てて考え込んだ。


「こういうのは予想の範囲内だろう。全員。問題はお前の番が今後どんな反応をして、なにをしてくるかについて話し合った方が懸命だ」


 ツガイ関連の男性は鋭い視線を全体に向けた。


「トラブルは相応にして起こる。終わったからと、油断しないでほしい」


 言葉を切ると彼はわずかに目を伏せた。その表情には言葉にしないまでも厳しい決意がにじんでいる。何か考えているのかもしれない。何か起こると彼だけではなく全員がひしひしと感じ取っている。決裂だ、もうダメな空気だと。


「しばらくの間家に来てよ。安全性が確認できるまで」


 ファミリアは真面目に提案した。それはいいと周りが頷く。

 唯一、マリナだけが遠慮したが「あなたの親御さんに番に関して報告する未来より、無事だったと報告する方が気持ち的に一番軽傷で済む」と言えば彼女は頷いた。

 安堵。番関連で苦労したらしいから、余計に心の傷が開くことになる。それなら、まだマシな結末を親が知った方が断然いいに決まってた。


 説得に応じてくれたことだしと、マリノの家に行き共に荷物をまとめる。その間、気分を暗くしないためにファルミリアは会話に興じた。普段はここまで話さないけれど、カウンセリング的な意味で。うんうんと頷くと彼女は軽く笑って目を伏せて悲しそうな色を滲ませていた。

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