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学園デビューしたいのに、ツンデレ男が邪魔してくる  作者: いか人参


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いつまでも変わらない二人


レインは部屋を出るとすぐ、ドアの前に待機していた守衛に対して制止するように片手を挙げると、アイナの手を引いて無言のまま馬車へと向かう。


王宮内の廊下を案内人も付けずに制服姿で歩く場違いな二人であったが、レインの姿を目にした者達はすぐさま廊下の端に寄り頭を下げ道を開け渡した。

一方のレインは、端に寄る者達に見向きもせず、ただ前だけを見て歩き続けた。




「嫌な思いをさせたな。」


馬車に乗り込んだレインはようやく口を開いた。

彼は握りしめた両手を膝の上に置き、すぐ隣に座るアイナに向かって頭を下げてきた。


見たことのない殊勝な態度に、アイナは慌てて両手を振る。



「私の方こそ!ごめん、私のせいでお父様と喧嘩になっちゃったよね…」


「は」


ダイヤモンドの瞳を丸くさせ真顔で言葉を失くすレイン。


実の親があんな醜態を晒してアイナのことを殺しにかかってきたというのに、それを「親子喧嘩」で済ませる彼女に度肝を抜かれた。

そんな動じない姿が今のレインにとっては堪らなく心強かった。



一方、彼の心の内など知る由もないアイナは、また何か変なことを言ったかもしれないと慌てて座席に手を付き、レインの顔を覗き込んだ。


すると、パチリと焦点を合わせたダイヤモンドの瞳がアイナのことを見返してきた。そのまま吸い寄せられるようにアイナの唇にキスをする。



「なっ………………………」


突然のキスに、アイナは両手で唇を押さえ、レインから距離を取るように覗き込んでいた顔を勢いよく引っ込めた。



「…っ」


その勢いで背もたれに後頭部を殴打し、頭を抑えて顔を顰める。



「親子喧嘩、か。お前にはアレがそう見えたのか…」


アイナには何が琴線に触れたか全く分からなかったが、レインはどこか嬉しそうな表情を見せていた。

うっとりとした妖艶な彼の笑みに、アイナの鼓動は高鳴り顔に熱が集中する。



「ちょっ、ちょっと!いきなり何を言って…」


「どうした?顔が赤いが。」


狭い馬車の中、必死に壁際に寄ってなるべくレインから遠ざかろうとするアイナ。

だが、端に寄った分レインが詰め寄ってくるため、アイナは逆に追い込まれるだけであった。



「だ、だから近いってっ!!一度離れてっ」


「何お前、俺が子作りとか言ったから意識してしんの?」


「わ、悪い!?私はレインみたいに余裕がなくて、本気じゃないって分かっていても態度に出ちゃうんだから仕方ないでしょ!!馬鹿にするならすれば良いじゃないっ!レインの馬鹿っ!!」


レインの言葉が図星だったアイナは恥ずかしさに耐えきれず、早口で捲し立てた。


自分でも恥ずかしさを隠すための八つ当たりだと分かっているのに、普段揶揄われていることも相まって堰を切ったように責める言葉が止まらなくなってしまった。


頬を赤らめ今にも泣き出しそうな顔で見上げてくるアイナに、レインはフッと優しい笑みを溢した。



「すっげぇ、可愛い。」


口元の緩んだレインは優しくアイナの前髪を掻き上げ、彼女のおでこにキスをした。



「ぎゃああああああああっ!!!」


突然のレインの甘い言葉と甘い声と甘いキスに、アイナは耐えきれず腹の底から悲鳴を上げた。



「チッ」


思っていた反応とだいぶ異なる返しをしてきたアイナに、レインは全力の舌打ちで応える。



「人がせっかく褒めてやったというのにお前って奴は…覚悟出来てるんだろうな?」


「!!」


もう逃げ場のないアイナに更に詰め寄ってきたレイン。

鼻先がくっつきそうなほど顔を近づけてくる。呼吸をすれば彼に吐息が掛かってしまいそうで、アイナは必死に息を止めた。



「手加減してやろうと思ったが、お前は追い込まれるのが好きみたいだからな。とことん追い込んでやるよ。邸に戻ったら公爵との約束を果すか。」


「や、約束…?そ、それって、こど…」


恥ずかし過ぎて口に出すことも憚られたアイナは皆まで言えなかった。その言葉をレインが引き継ぐ。



「ああ。子を成すと宣言したからな。黙らせるためにも早い方がいい。」


どこか切羽詰まったような掠れ声で言ってきたレイン。

鼻先同士を付けたまま、彼は艶っぽい視線を向けてくる。



「俺は別にここでも構わないんだが?」


「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」


仄暗い瞳で今にも襲ってきそうな色気のある声で迫ってくるレインに、アイナはまたもや大絶叫した。



「冗談だ。馬鹿。」


魂を失いかけ呆然としているアイナに向かって、レインは短く吐き捨てた。

冗談だと分かった瞬間、彼女の瞳に怒りの炎が灯る。



「じょ、冗談って……そんな変なこと冗談でも言わないでっ!!レインの馬鹿っ!!」


「ああ。ちゃんとベッドまで運んでやるよ。」


「きゃああああああああああっ!!!」


レインの言葉でどこまでが冗談か分からなくなったアイナは、悲鳴を上げて頭を抱え、軽く錯乱状態に陥っていた。

よしよしと優しく宥めているレインの手にも気付かない。



「アイナの心が整うまでいくらでも待つよ。」


甘い声で囁いたレインの声も半狂乱状態のアイナには届いていなかった。


今日も今日とて、自分の手のひらの上で躍るアイナのことを至極愛おしそうな瞳で見つめるレインであった。



これにて本編完結となります!!

思いの外長くなってしまい…ここまで読んでくださった方本当にありがとうございます。


また番外編でお会い出来れば幸いです(´∀`)

本当にありがとうございました!

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