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学園デビューしたいのに、ツンデレ男が邪魔してくる  作者: いか人参


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レインによる波乱の幕開け


日の出と共に目覚めたレインは、アイナのことを起こさないよう細心の注意を払いながら寝台から降りた。

そして、物音を立てずに部屋を出ると一度自室へ戻り身支度を整える。

その後、昨日やりかけていた書類の束を手にアイナの寝室へと舞い戻った。



幸せそうな顔で眠る彼女のすぐそばに腰掛け、残っていた仕事を次々と捌いていく。

そろそろ朝の支度を始める時間だと思ったが、アイナが起きる気配は一向にない。仕方なくまた彼女の隣に入り込んだ。


ぴったりとアイナの背中に寄り添い、後ろから彼女の髪を優しく数度撫でる。



「アイナ」

「…」


甘い声音で名を呼んでみたが、呼ばれた当人は反応することなく呑気な顔で寝続けている。



「遅刻するぞ。」

「ん…」


普段通りのレインの声に今度は反応したアイナ。もぞもぞと動いてレインの方に寝返りを打ち、むにゃむにゃ言いながら彼の胸に頬擦りをしてきた。 



「なっ」


レインは一瞬飛び起きそうになったが、すぐに寝ぼけているだけだと理解して留まる。つい動揺してしまった己に深いため息を吐きながらアイナの肩を揺り動かす。



「起きろ。」

「ふぇ…リリア、もう少しだけ…」

「おいこら」

「………へ?」


リリアとは似ても似つかないドスのきいた声に、アイナはパチリと目を開けた。


声がした方に視線を向けると、艶のある白髪にダイヤモンドの瞳を持つ端正で美しい顔が目に入った。寝起きに目にするには強すぎる美の刺激に、うっと目を細める。

寝ぼけた頭でレインを見つめること数十秒、ようやく色々と思い出したアイナはがばっと飛び起きた。



「お、おおおおっ、おはようございますっ!!」


ベッドに座り、土下座する勢いで頭を下げる。

チラリと片目だけで見上げると、冷え切った瞳で見下ろしてくるレインと目が合った。



「この俺を使用人と間違えるとは良い度胸だな。覚えてろよ。」


「ひいやああああああああっ!!」


悲鳴を上げるアイナのことを無視して無言で寝台から引きずり下ろすと、レインは侍女を呼び早急に彼女に支度をさせた。





「あの…今朝は本当に申し訳ありませんでした…」


無事に間に合ったアイナとレインの二人は着替えを済ませ他の生徒達と共に開催の時を待っている。

80人近くが集まり糸が張り詰めたような緊張感に包まれる中、アイナはひとり別の緊張感に包まれていた。



「どうしたのアイナ?君が謝るようなことなんて何一つないよ。」


「うげっ……」


朝の一件以来、にこにこ顔を崩さないレイン。

報復してこないことが逆に恐ろしく、アイナは勝手に追い込まれていた。





「ここに、模擬演習の開催を宣言する。参加者は中央に集まるように。」


「「「「「わあああああああああっ」」」」」


闘技場を彷彿とさせる広い会場を取り囲むように設置された観覧席から、大音量の歓声が沸き起こった。



「は!?なにこの人の数!観客なの!??」


「お前、今頃気付いたのか…有力貴族や王宮関係者も観にくるからな。毎年結構な賑わいだ。」


「うわ…イメージしていたやつよりも数百倍凄そうなんだけど…ああもう今すぐ帰りたい…こんなところで白ローブなんて私だけだよ…もうっ…」


レインはボヤくアイナの手を引き、指示のあった通り会場の中央へと移動していく。


参加者が集まると、会場の端に控える教師達が魔法で大小形様々な土壁を作った。遮蔽物として使わせるためだ。開始の合図がされた後、参加者達は身を隠しながら相手を討ち取るという決死の攻防戦が始まるのだ。


制限時間は1時間。


自分のバッチを守り抜けば2pt、他の相手のバッチに自身の魔力を当てれば3pt、そしてそれは家格が上がるに連れ基準点3ptに加えて5ptずつ加点されていく。

よって、大物を狙いに行くか、狙いやすい相手を倒して点を集めに行くか、人によって戦術は大きく異なってくるのだ。




「では、1分後に模擬演習を開始とする。各々配置につくように。」


開始直後の混乱を避けるため、それぞれ身を隠してから競技が始まるのだ。

指示を受け、参加者達は一目散に狙っていた遮蔽物の元へと走り込んでいく。




「おい、脱げ。」

「はぁっ!!!!!??」


私達はどうしようかとレインに話しかけようとした瞬間、とんでもないことを言われたアイナは、目玉が飛び出そうなほど驚き、口をぱくぱくさせている。



「ローブを交換する。お前のそれは目立ち過ぎるからな。早くしろ。」


「あ…なんだそういうこと…それならそう言ってくれればいいものを…」


ぶつくさ言いながらも自分の脱いだローブを手渡しレインのものを受け取って羽織る。


その途端全身がレインの良い香りに包まれ、つい今朝のことを連想してしまったアイナ。赤くなった顔を隠すように横を向いてパタパタと手で顔をあおいだ。



「おい、こっち向け。」


「何かあっ……」


アイナが振り向いた瞬間、レインの両腕を身体に回され、片方の手でガッチリと後頭部を抑えられたまま深い口付けをされた。

アイナのことを堪能するかのように、ゆっくりと絡め取られていく。



「んっ」


これまでに感じたことのない未知の領域に、アイナは思わず声が漏れ出てしまった。

今されていることと漏れ出た自分の声が恥ずかし過ぎて彼の胸を押し返そうときたが、より一層腕の力が強くなる。


観衆の面前で繰り広げられる男女の振る舞いに、会場中から悲鳴が上がった。

その声に反応して遮蔽物から顔を出した参加者達からも同じように悲鳴が上がる。



きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!やめえええええてててててててえええええ!!!!!


アイナも声にならない声で大絶叫していた。


レインの所業により、まだ始まっていない会場が一気に騒がしくなっていた。



口を塞がれ、声にならない声で大絶叫するアイナのことを蹂躙したレインは、ようやく彼女の唇と身体の拘束を解いた。

そして、自身の薄い唇を一舐めるすると、ひどく機嫌の良い顔でアイナに微笑みかけた。



「これでもう他人と間違えることはないだろ。ああ、魔力もたっぷり入れといてやったから、有り難く思えよ。」


いやあああああああああああああっ!!!やっぱり根に持たれてたああああああああああっ!!!



与えられた魔力以上に、色々なものが持っていかれたアイナであった。




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