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学園デビューしたいのに、ツンデレ男が邪魔してくる  作者: いか人参


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ご褒美と仕置きは紙一重


それからしばらくが経ち、この日最後の授業で先日行われた小テストの答案用紙が返却された。

もうすぐ期末テストを迎えるため、クラス全体の勉強に対する温度感も高まっている。


一人一人名を呼ばれ、教壇に立つ先生の元へ結果を受け取りに行く。




「アルフォード君、今回も満点よ。すごいわ。」


「今回はアイナが一緒に勉強してくれたおかげです。彼女がいてくれたから頑張れました。」


過度な謙遜も鼻に付く自慢もせず、愛しい人のおかげだと朗らかに言うレインに、クラスメイト達はさすがだなという尊敬の眼差しを向けている。


一方、レインの言葉にひとり白目を剥きそうになっていたアイナは、彼から飛ばされた鋭い視線で慌てて表情を取り繕っていた。




「アイナさん」


自分の番になったアイナが先生の元へに向かうと、とても良い笑顔を向けられた。



「満点には一歩及ばずだけれど、学年でも上位に入る点数だわ。ふふふ、愛の力は絶大ね。」


「…ありがとうございます。」


真顔でお礼言ったアイナ。


あのいつかの昼休みに行われたレインの奇行により、彼はアイナのことを溺愛しているという話が学園全体に広まっていたのだ。

もちろんこれは生徒だけではなく、先生の間でも有名な話だ。



いや確かに、今回点数が爆上がりしたのは間違いなくレインのおかげなんだけど…


あれは愛とは真逆の力に違いない……だって、あんなことされたら嫌でも勉強に身が入るでしょうに…言葉通り、命が掛かっているんだから。



『これ明日までに暗記して来い。』

『は…これって、3年生で習う範囲だよね?今やらなくても…』

『褒美と仕置き、どっちがいい?』

『いや私の話も聞いてよ…って、なにその極端な選択肢は……じゃ、じゃあ、ご褒美の方で…』

『分かった。じゃあ、俺が言った通りのことを出来たら、またお前が望む学生らしい振る舞いをしてやるよ。』

『なっ!!!それって、お仕置きでしょう!また人前であんなことされたら今度こそ死ぬわっ。』

『俺の好きにされるのが嫌なら、死ぬ気でやれ。』

『分かったよ!やってやるよっ!!』


というやり取りを繰り返して焚き付けられているうちに、レインからの課題をせっせとこなして一層勉強のレベルを上げていったのだった。




「アイナ、よく頑張ったね。」


アイナが席に戻る途中、レインが感極まった声音で労ってきた。


周囲から見れば、婚約者同士の絆を感じる美しい瞬間だったのだが、アイナからすれば結局はレインの望むままに動いたということになり、癪に感じることしかなかった。

そのせいで、彼の言葉を素直に受け取ることが出来ない。




「ご褒美」


レインのことを無視して彼の席の横を素通りしようとしたのだが、不穏な単語が聞こえてきてその場に固まってしまった。



「何が良いか考えておいてね。君が望むものなら何でも用意するから。」


アイナに向かって美しく微笑みかけるレイン。

それは、婚約者のことを溺愛する振る舞いそのものであった。

噂通りの彼の姿に、先生までもがぽうっとした顔で見惚れている。



「ふふふ。楽しみだわ。」


精一杯の意地でそう返したものの、イオンから冷気が噴き出してきたため、アイナは逃げるように自席へと戻って行った。




放課後、アイナはレインに連れられ訓練室に来ていた。

彼から勉学の課題を与えられる傍ら、毎日のように実技の練習をしていたのだ。


今二人は、レベル4の部屋にいる。10段階で言えば下位の部屋だが、男爵家の身分でこの部屋を使う者はまずいない。

レインとの日々の特訓のおかげで、着実に魔力制御と魔力操作の技術を身につけていた。




「そう言えば、模擬演習ってどんなことをするの?まさか、魔法を使った撃ち合いとか…?」


基礎練習を終えた後、休憩中のアイナがレインに尋ねた。


毎日死に物狂いで魔法の練習に励んでいるものの、そういえば具体的な話は何ひとつ聞いていなかったなと肝心なことを思い出したのだった。



「ああ。大体そんな感じだ。」


「雑っ!!もっとあるでしょう!過去の内容とか評価の仕方とか細かいルールとか、ねぇ!」


必死になって食い下がるアイナに、レインはめんどくさそうな顔をした。

そして軽く息を吐くと、ドアに向かって唐突に声を放った。



「説明してやれ。」


「え、なにその盛大な独り言は………」


ポカンとするアイナの前に、アイタンがひょっこりと顔を出した。いつの間にか、ドアの影に潜んでいたらしい。

悪びれもせず、てへへと笑いながら頭を掻いている。



「さすがだね。魔力隠蔽は結構得意なはずなんだけど、いつから気付いてたの?」


「お前の魔力は癖が強いからすぐに分かる。」


「まぁでもそうだよね。ここにはレインの魔力だけが充満しているから、それ以外の魔力なら僅かに入り込んだだけでもすぐに分かっちゃうよね。」


「「・・・・・」」


アイナとレインの二人は気まずそうに視線を逸らした。

息のあった二人の動きを、アイタンはにこにこと楽しそうに眺めている。


アイナは魔力の扱いを練習するため、レインから魔力を分けてもらっていたのだ。

ここ最近は量が多くてもそれなりに扱えるようになっていたため、必然と供給される魔力の量も増やされる。


そして、手首からの魔力供給は時間がかかって面倒というレインの一存で口移しで魔力を受け取ることとなったアイナ。よって、彼女の特訓は、口付けに始まり口付けで休憩し口付けに終わる。


そんなことをしていたのだとアイタンに見透かされたように思ったため、二人は気まずい雰囲気を醸し出していたのだった。



「良いから早く説明しろ。」

「ねぇ、早く説明してくれる?」


二人から圧をかけられたアイタンは、くすくすと笑みをこぼしながら仕方なく模擬演習の説明を始めた。





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