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学園デビューしたいのに、ツンデレ男が邪魔してくる  作者: いか人参


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学生らしさを求めたことが間違いだった


「それにしても、本当にあのレイン様に選ばれたなんて驚いたわ。」


「本当だよ。皆の憧れの的なのにこれまで浮いた話ひとつなくて、いきなり婚約だもんね。それも格差婚!それは注目されるよね。」


今度は、エリナとキースの二人にランチに誘われレインのことで質問攻めにあっていた。



「本当に驚くよね。たまたまご縁があったのかな…なんて。ははは。」


皆が抱くレインの理想像を壊すわけにもいかず、詳しい経緯を話せないまま、またもや適当に流すアイナであった。




「そうよね。こういうのはご縁よね。私もキースに出会えたのは親のおかげだもの。」


「ね。僕もエリナに出会えて、こうして今そばにいてくれて感謝してる。」


テーブルを挟んだアイナの向かい側、隣り合って座る二人は互いにはにかんだ笑顔を向け合っている。

手の位置から察するに、どうやらテーブルの下で手を繋いでいるようだ。


思い遣った優しい顔で見つめ合う二人のことを、アイナはここに恋人同士の正解を見たような気がして眺めていた。



な、なんて尊い光景なの……………


学生の恋人同士ってエリナ達にみたいに甘酸っぱくて優しくてキュンキュンするものだとばかり思っていたんだけど……レインにはそのカケラも見当たらない……


隙あらば言葉で翻弄して揺さぶってくるし、色気を全開にしてキスを迫ってくるし、少しでも怯めば嬉々として追い込んでくるし……このままじゃ心臓がいくつあっても足りない。いつか死ぬ。


私の死因はレイン・アルフォードだったって言われるのはそう遠くない未来かも………ははは。




「アイナ?どうかしたかしら?」


互いに自分の世界に入ってしまっていた三人だったが、先に気づいたエリナが心配そうに声を掛けてくれた。

ここにレインがいないことを寂しく思ったとでも勘違いしたのか、彼女の手の位置はテーブルの上にあるティーカップに戻っていた。



「いや、なんか二人が羨ましいなって思っちゃって…」


「「えっ??」」


「なんかそういう、学生らしいカップルに憧れるなって思っちゃったんだよね。」


アイナの突拍子もない願望に、エリナ達は目を丸くして驚いている。

だが、彼女の発言に驚いているにしては少し大袈裟過ぎる態度のようにも見えた。




「え、私そんなに変なこと言って…」


「アイナ」


「いっ………………」


振り返ると、そこにはキラキラの笑顔のレインが立っていた。



「あれ、今日は用事があったんじゃ…」


「何言ってるの?君より大事なことなんて何ひとつないよ。」


レインは固まっているアイナの腕を取り優しく立ち上がらせると、エリナ達に軽く微笑んだ。



「悪いね。僕のアイナは返してもらうよ。」


「も、もちろんですわ!」


エリナもキースも両手を上げて完全服従の姿勢を取った。

そして、快く差し出されたアイナはレインによって連れられ行ってしまった。



「レイン様は本当にアイナのことを深く愛していらっしゃるのね。」


「僕もエリナのこと大好きだけど、あれはまた別次元な気がする。」


「苦労するわね。」「大変だね。」


カシュアと違って大人で冷静な二人は、アイナの行末を慮っていた。




一方、レインに手を引かれたアイナは教室まで戻ってきていた。



よく分からないままあっという間に自席まで誘導され、そしてなぜかアイナではなくレインが彼女の席に座っている。



「一体何を…」


何をするつもりか分からずただ隣に立つアイナに、レインはポンポンと笑顔で自身の太腿を叩いてみせた。

彼の真意を理解したアイナは、一瞬にして血の気が引いていく。



「おいで」

「!!」


今度は大きく両手を広げて蕩けるような笑みを向けてきたレイン。

昼休みとはいえ、数名のクラスメイトがいる教室で奇行に走るレインに、アイナは言いようのない恐怖に襲われた。



「いやちょっと…なっ!!」


アイナの抵抗虚しく、痺れを切らしたレインによって軽々と抱えられ膝の上に乗せられてしまった。

後ろから抱き抱えるようにして、アイナの身体に密着して腕を回してくる。



いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!


心の中で大絶叫したアイナ。



羞恥心で死にそうになっているアイナに、絶対に手を緩めないレイン。


後ろから抱きしめたまま、彼女の肩に顎を乗せてくる。

近くにクラスメイトがいると思うと顔を上げられず、かと言って俯くとレインの頬と自分の頬がくっつきそうで死にそうになる。


まさに八方塞がりのアイナに、レインは迷うことなくトドメを刺してきた。




「お前が欲しがったんだろ。」


抱きしめる腕に力を込めて、わざとアイナの耳元で低く囁いてくるレイン。



「な、なにを言って…」


「学生のカップルらしいことをしたいって。良かったな。」


「!!」


はあああああああっ!!?これのどこが学生らしいんだあああああああああっ!!!どんな学生生活を送ったらこんな思考になるんだっ!!!!レインのばっかああああああああっ!!



またもや悲鳴を上げるも、実際は顔を真っ赤にするだけで何も言えず、ただレインの膝の上で抱き締められているだけであった。


そして、少しずつ教室に戻ってきたクラスメイト達に次々と目撃され悲鳴を上げられ、アイナは心を使い果たしたのだった。




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