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学園デビューしたいのに、ツンデレ男が邪魔してくる  作者: いか人参


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19/98

期末試験の終了!



「はい、そこまで。後ろから答案用紙を回収してください。」


冬休みが間近に迫ったこの日の正午、期末試験の全日程が終了した。


試験は、算術や文学、歴史など一般的な学問に加え、魔法理論、魔法史、魔法実技など、魔法に関わるものも多数ある。


実技は二年生になってから本格的に学ぶため、一年生のテスト範囲ではない。




「終わったーーーー」


期末試験を終えた開放感から、アイナは大きく伸びをした。

後ろから回って来た答案用紙の束に、自信のある一枚を重ねた前に回す。


提出が完了した者から足早に教室を出て行った。皆、試験を終えたご褒美に出掛ける者が多いらしい。

アイナも、そのうちの一人だ。手早く荷物をカバンにしまい、カシュアの席へと向かう。




「カシュア、おつかれ!」

「アイナもお疲れ様。行こっか。」


二人はそのままカフェテリアへと向かった。


試験を終えたらカフェテリアでお疲れ様会をしようと前々から約束していたのだ。


通常は王都の街に繰り出すか、邸で晩餐会を開くか或いは劇場を貸切にするか、大々的にやるものなのだが、お金のない男爵家同士、慎ましやかに学園内で実施することを選んだ。





カフェテリアのメニューを見て悩むアイナとカシュア。

試験終わりということもあり、周囲にはほとんど人の姿がない。



二人ともいつも一番安い日替わりAセットを注文しているのだが、今日は普段食べないものを食べようと他のメニューに目を向ける。


結局、デザートまで付いているスペシャルセットと普段より少しだけリッチな日替わりBセットを頼んでシェアすることにした。


テーブルの上に並ぶいつもより豪華な食事に、二人の瞳がきらりと輝く。

さっそく取り皿に分け合いっこをして口に運んだ。



「アイナはいいよね。勉強出来るから。私なんて、どんなに勉強しても頭に入っていかなくて…」


「ふふふ、今までは手を抜いていたみたいだから、今回は結果が楽しみだな。」


「羨ましい……」


羨やむカシュアに、アイナは肉を一切れ分けてあげた。

それを嬉しそうに頬張る。二人はすっかり仲良くなっていた。




「アイナ、最近大丈夫…?」


「ん?なひぃが?」


深刻そうに聞いてくるカシュアに、口いっぱいに詰め込んでいるアイナは気の抜けた返事をした。



「何って、ひどい嫌がらせを受けてるでしょ?」


「嫌がらせ……」


教科書や靴を隠される典型的なものから、授業変更の連絡を教えてもらえない等、地味な嫌がらせを受けていたアイナ。


だが、本人はほとんど気にしていなかった。




「何かあったっけ…」


「…アイナのそういうところ好きよ。」


第三者から見て手ひどくやられていると言うのに、それを思い出せないアイナに、カシュアは苦笑している。




「ねぇ、カシュア。私クラスの人気者になりたいんだけど、どうしたら良いと思う?人気者…というか、せっかくの学生生活だし、チヤホヤされたいんだよね。」


「はいっ????」


現状からの脱却どころか、遥か先を見ているアイナに、カシュアは目を丸くさせた。



「嘘でしょ……私たちダークスだよ?学園で目立てるはずないよ。」


「だーくす??」


「あれ、知らない??私たちみたいな魔力の弱い子達のことの総称。蔑みの意味が込められているの。反対に、魔力が強い子達はライツって呼ばれてる。本当に、生まれで全てが決まるなんて…生きにくい世の中よね…」


「そんな呼び名があったんだ…知らなかった…」


アイナはおもむろに、耳に髪を掛けた。普段は隠している染めた髪の束が顔を出す。



「染めてもダメ…?」


「うん…ダメだと思う……」


カシュアは呆れて首を横に振った。



「あ、でもひとつだけあるよ。私たちが脚光を浴びれる方法。」


人差し指を立てると言葉を止め、もったいぶるカシュア。

アイナは固唾を飲んで話の続きを待つ。



「それはね…結婚よ。しかも飛び切り高貴なお方とのね。」


最適解を見つけたとばかりに、瞳を輝かせて満遍の笑みを見せるカシュア。




「それは絶対無理……………」


アイナの頭に真っ先に浮かんだ真っ白な彼の姿。そしてあの舌打ち。


慌てて首を横に振り、頭に浮かんだ姿を遠く彼方へと追い払った。




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